つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(KADOKAWA)は、自らも長年「うつ」で苦しんできた漫画家田中圭一が、十数人の「うつ」(や「双極性障害」)に苦しんできた人々に取材して、「うつ」に苦しむ人の手助けになればと描きあげた、著者渾身のコミックエッセイです。

 

この十数人の中には、ミュージシャンの大槻ケンジも、AV監督の代々木忠もいますし、フランス哲学の研究家で多くのエッセイを発表している内田樹も、『私をスキーにつれてって』『僕らはみんな生きている』の脚本家一色伸幸もいます。みな漫画のキャラクターとなって、貴重な経験に基づいた証言を行ってくれます。そういう著名人までが「うつ」に悩まされていることで、「うつ」にまではなったことがない読者も、「うつ」は決して珍しい病気ではなく、表には出なくても、多くの人が抱えている病気であることがわかるのです。

 

また、心理学などの漫画でも有名な精神科医のゆうきゆうも、医者の立場からのアドバイスを提供しています。

 

「うつ」は風邪のように多少無理してでも会社に出られるような、軽い病気ではありません。

「ガン」のように、正しい治療をタイムリーに行わなければ、自ら命を絶ってしまうような危険な病なのです。

 

うつはほうっておくと死に至る病です。

 

こうして何十人もの「うつ」を経験した人々の証言を集めてみると共通点があることがわかります。「うつ」を発症する人は、総じて生真面目で責任感の強い人が多いようです。

 

多くの場合、何かの仕事を引き受けて、一生懸命やって成果をあげることに成功します。

 

しかし、やがてそれがうまくゆかない場合も来ます。自分には不向きな仕事だとわかる場合もあります。それでも、寝食を忘れて一層仕事に打ち込むような人が特に危ないのです。

 

プロジェクトがうまくゆかなくなったり、ミスが多くなったりすると周囲の声も厳しくなり、時には被害妄想や、自己嫌悪におちいる場合もあります。そして、いつしかすべては自分が悪いんだ、自分は求められていないんだといった完全な自信喪失の中、あるとき身体が拒絶反応を起こし動けなくなってしまうのです。

 

「うつ」は空回りする心と、それについてゆけない身体とのバランスが崩れから生じる場合が多いのです。

 

「うつ」を治すには、薬物による治療、仕事を休むこと、別の職場に移ること、趣味に没頭するなど、色々な方法があります。

 

けれどもそれによっていったん治ったかに見えても油断はできません。うつは突然に、仕事がスムーズに行っている時でさえも、再発することもあるのです。これを著者は、「突然リターン」と呼んでいます。大体は、責任感が強いあまりにオーバーワークしてしまう場合が多いようです。

 

また、月によって、「うつ」になりやすい月もあるようです。作者の場合には、3月、5月、11月。気温の変動が大きく、急に温度や気圧が下がる季節に多いようです。

 

『うつヌケ』は、あくまで一患者の立場から、同じ病気に苦しむ人のためにできることはないかとネット上で呼びかけて、編集者を見つけ、出来上がった本です。ですから、うつについての絶対の真理を提示することもありません。治療したり、再発を乗り越える方法もひとそれぞれです。

 

しかし、それらを通して、自分一人で「うつ」を抱えている人に対して、さまざまな先輩の声を参考や励ましにしながら、大きな希望を与えてくれる本なのです。現在でも、完全に治すことは困難な「うつ」ですが、それなりの対処の方法、付き合い方があるのだし、それさえ身につけることができれば、いたずらに恐れる必要もないのですから。

 

 そうこいつらは「幽霊」じゃなくて「妖怪」だ

 好ましい存在ではないけれど

 つきあい方がわかればけっして怖くない

 

『うつヌケ 』は、長からず短からずの20篇の親しみやすいケーススタディ漫画によって、ことさら深刻になることなしに、気軽に「うつ」についての知識を深め、「うつ」との付き合い方を学ぶことのできる良書なのです。

 

関連ページ:

田中圭一『田中圭一のペンと箸 〜漫画家の好物〜』
田中圭一『Gのサムライ』

田中圭一『神罰1.1』

出口治明・半藤一利『世界史としての日本史』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

出口治明・半藤一利『世界史としての日本史』(小学館新書)は世界史の圧倒的教養を誇るライフネット生命会長・出口治明と『日本のいちばん長い日』などで知られる日本近現代史を掘り下げる作家、半藤一利の対談である。

 

ここで提示されているのは、「日本は特別な国という思い込みを捨てろ」「なぜ戦争の歴史から目を背けるのか」「アメリカを通してしか世界を見ないのは危険だ」といったものの見方である。その中で指摘されている誤りは、日本の国の中から見える風景や価値観のみから、日本史をとらえてしまうことによる。

 

逆に、より大きなマクロの視野を持って、世界史の流れの中で、日本史で記述される出来事を改めてとらえようとすると、それまで見えなかった出来事の相関関係が見えてきて、歴史の真相が浮かび上がってくるのである。

 

そもそも自分の国を特別だと思う考え自体が、実は東アジアの国に共通した考え方で、日本独自のものではなく、そのルーツは中国の中華思想から来ていると出口治明は言う。

 

出口 自国は特別である、特殊であるという意識は、実は東アジアの各国に特徴的な現象で、その底流にあるのが「中華思想」だと僕は思っています。

 

歴史をたどるなら、西安に都があった西周の時代の交易のあり方(「威信財交易)にあると言う。周が滅びた後、西周の王様からもらった青銅器を地方の王侯は失業した周の金文職人の手を借りて読もうとする。すると、そこには周の国の美化された歴史が書かれてあり、それに地方の王侯は圧倒されたところから中華思想は生まれたらしい。

 

 現実に文王や武王の治世がそれほど素晴らしかったわけではないのですが、漢字の魔力によって、地方の王侯たちは「周という国は特別だ、周の人は貴種だ。それにひきかえオレたちは」と勝手に思い込んでしまって生まれたのが中華思想だったんです。中華とは周の都の周辺を指す言葉です。これと同じ現象が東アジアでも起きます。周と地方の王侯との関係が、中国の皇帝と日本をはじめとした周辺国の君主との関係にまで広がり、漢字のおかげで、中国は偉いということになってしまったのです。

 

日本という国が成立したのは、6、7世紀のころ。それ以後、中国に後れまいと『日本書紀』など史書を編纂し、さらに服装や家具まで合わせようとする。一種の鹿鳴館政策である。「天皇」という称号が使われるようになったのも、その時期のことである。逆に唐が滅びると、一気にそれまでの唐かぶれの慣習がすたれ、一気に国風文化が開花する。

 

 それから200年ほど経つと唐は滅びてしまうので、日本はやれやれもう、唐は怖くなくなったと思い、「こんな暑苦しい国で、乗馬服なんか着てられない、もっとゆったりした着物を着よう」「机と椅子よりも、畳に寝っころがって、涼みたい」となって、国風文化といわれる、ゆったりした文化が生まれてくるのです。

 

このように、中華思想という話題から、日本の国風文化の成立事情まで、一つの流れとして説明されると、高校の日本史の時間に聞いただけでは釈然としなかった事情も納得される。

 

歴史は、バラバラのピースではなく、隣り合ったピースが相互にからみ合った、ジグソーパズルのようなものである。その周辺のピースを決めることなしに、小さなピースの中の模様だけにらんでみても、真実はわからないのだ。

 

同様に、

・モンゴル軍にとって元寇は、ならず者を国内で悪ささせないための失業対策であった。

・薩長よりも徳川幕府の考え方の方が先進的だった。

・リットン調査団の報告書は、日本にとっては権益を認める有利なものでそれを呑んでいたらその後の流れは変わっていた。

といった歴史の真相が一つずつチェックされてゆく。

 

誤った歴史の見方として、自虐史観と自尊史観の双方を出口治明は挙げる。日本が全て悪かったとする自虐史観と、日本はすべて正しいとする自尊史観は、実は表裏一体であり、いずれも正しい歴史認識とは言えない。

 

出口 戦後の日本特殊論は、「日本はここがおかしい」「世界に遅れている」などと、はやりの言葉を使えば、自虐的に語るものが多かったのですが、今は逆で、「日本の技術はこんなにすごい」とか、「日本の歴史は素晴らしい」とか、自尊の方向に向かうものが多くなりました。

 これを自虐史観との対比で、自尊史観と呼ぶとすれば、自尊史観は自虐史観の裏返しにすぎないと思います。

 

自尊史観と自虐史観が同根であるのは、そのベースに劣等感があるという点が共通している。具体的には、大戦では軍事大国で負け、戦後は経済大国でまた負けたという二回の敗北が影を落としているのである。いずれも、客観的なデータを裏付けに持たない点も共通している。

 

出口(…)どんな国でも、長所はたくさんあり、短所もたくさんあるので、片方の短所を引き合いに出して、もう片方の長所を褒めるのは簡単なことで、どこの国でもできるんです。だけど、そういった話のほとんどは、必ずしも数字やファクトに裏付けられていなくて、単に「私はそう思う」と言っているにすぎないと思います。

 

本書の中で両氏が提案しているのは、善悪の価値判断から離れ、歴史を、原因と結果の因果関係の中で評価する、リアリズムによってとらえ直すことである。

 

本書でも「世界に真の勇気はただ一つしかない。世界をあるがままに見ることである。そしてそれを愛することである」というロマン・ロランの言葉が引用される。

 

本書の末尾では、世界史を考える上での必読書がそれぞれ数冊あげらているが、興味深いことにその中心となっているのがスターリンとヒットラーである。

 

半藤 第二次世界大戦を理解するうえで一番大事な人間は、ヒトラーとスターリンです。この二人を理解しないと、第二次大戦は見えてこない。

 

日本では、日中戦争は日本と中国だけ、ノモンハン事件は日本とソ連だけで語ったりしがちだが、その背後で暗躍し、世界史の流れを決めていたのがこの二人だったと言うのである。

 

リアルな歴史認識を持つことは、身びいきな感情や劣等感を刺激されるためになかなか難しい部分もある。しかし、経済であれ、戦争であれ、誤った事実認識の至る先は失敗と敗北しかない。そのために必要なのが、記述が日本国内にとどまらない世界史全体の流れを理解することであり、歴史書を読むことの最大の意義なのである。

 

関連ページ:

出口治明『人生を面白くする本物の教養』
出口治明『ビジネスに効く最強の「読書」』
出口治明『仕事に効く教養としての「世界史」』

書評 | 23:17 | comments(0) | - | - |
堀江貴文『面白い生き方をしたかったので仕方なくマンガを1000冊読んで考えた』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称一部略 ver.1.2

 

 

堀江貴文の新刊は、例によって超長いタイトルである。正確には、『面白い生き方をしたかったので仕方なくマンガを1000冊読んで考えた そしたら人生観変わった』(KADOKAWA)。

 

ここで紹介してある数多くの漫画は、主として情報収集の観点が選ばれたビジネスに役立つ漫画だ。だから『ONE PIECE』や『NARUTO』のような王道バトル物も、格闘技や(『グラゼニ』を除く)スポーツ漫画も、少女漫画の主流であるラブコメ(東村アキコを除く)もほとんど出てこない。情報収集ツールの漫画と言っても、単に活字の本を漫画化したようなものだけではなく、活字化されていないようなもの、これから世のトレンドとなりそうなものをいち早くキャッチし、卓越したリサーチ力で肉付けしながら、作品として仕上げたような漫画こそ、この本の中で取り上げられている漫画なのだ。そのキーワードを「想像的知識」と堀江氏は呼んでいる。

 

 今、「想像的知識」の時代が到来している。

 私の造語だが、言いかえると、今はまだ存在していない想像上の知識が次々に仕事を生み出し、未来をつくってゆく時代だということだ。今はまだ遊びの中にある想像的知識の中から新しく仕事を生み出していく人が、これからの時代で活躍してゆくのだろうと感じることが最近明らかに増えた。p1

 

たとえば、30年前にはまだ遊びの域を出なかったPCとインターネットに関する産業は、私たちの生活を完全に変え、今やソフト、ハード、プラットホームの各面で21世紀を支配する産業を生み出す結果となっている。

 

優れた漫画家には、まだ混沌として形にならない未来を予見するビジョンがある。彼らは想像的知識を先取りし、編集することができるのだ。本書で取り上げられているのは、いわば「ビジョナリー・コミックス」ということになるだろう。

 

その例として、堀江氏は小山宙哉の『宇宙兄弟』を挙げている。

 

 作中で描かれる「宇宙飛行士候補者選抜試験」は、JAXAが実際に行っているものと同様であり、正確に描写されている。しかしこれらはJAXAの職員が手取り足取り小山さんに教えたものではない。

 小山さんは宇宙飛行士について書かれた本を片っ端から読み漁り、「自分がJAXAの職員だったらどうやって試験するだろう?」と考え抜いたそうだ。小山さんは宇宙飛行士にとって重要な能力を見極めるために、想像の中でJAXA職員になりきったのだ。そうして自分で選抜試験を考え、描いたところ、実際の宇宙飛行士候補者選抜試験に肉迫するリアリティを持った試験問題になったのだという。pp4-5

 

資料を集めながら想像力をめぐらせるという点では小説家やノンフィクション作家も同じではないかと思いがちだが、言語と絵とを複合させた表現形式の漫画には文字だけの作家の文章にはないリアリティが宿る。それを、長年編集者として多くの名作を送り出し、現在作家エージェントの「コルク」代表をつとめる佐渡島庸平は、漫画作品の価値を支えているのは、漫画家の意思決定の多さと要約している。つまり小説の映画化を考えた場合、監督や演出家、時代考証、美術と何人も、時には何十人もかかって分業でやる作業を、漫画家は一人でやらねばならないのだ。

 

 画というのはわりと「さらっと描けるものだ」と思われてたりするんですけど、作家は自分で理解できていないものは描けないんです。「なんとなく」で画は描けない。たとえばキャラクターが着る服装がそうです。仮に舞台設定が1970年代だったとしても、なんとなく「1970年代っぽい」だけでは画にならない。キャラクターの性格によって身につける服装が変わらなければ世界観が構築できないからです。リアルなキャラクターというのは、頭の先から靴の先まで、全ての細部にわたる気配りが生み出すんです。これらひとりの意思決定の集積が、マンガ作品独特の話の濃さ、描写の濃さを生み出しているのだと思います。p190

 

漫画家が1ページに宿らせる情報量をそのまま小説に置き換えようとするとその何倍ものページが必要だが、それだけの描写をページにあてると今度は展開のスピード感が損なわれてしまう。しかし、漫画はスピード感をそこなうなしに可能であり、読者の読解力による情報伝達度の差もきわめて少ない。

 

本書は、このように優れた情報伝達ツールとしての漫画を、テーマで仕分けるかたちで構成されている。

 

CHAPTER1 「仕事はセンス」と教えてくれるマンガ では河合単『ラーメン発見伝』や森高夕次『グラゼニ』など、業界の擬似体験を通じて、わかりにくいセンスの世界へと道案内してくれる作品群。

CHAPTER2 想像力は観察力だ。では『宇宙兄弟』の伊藤せりかに重ねた堀江氏の涙から、三田紀房『インベスターZ』、松田奈緒子『重版出来!(じゅうはんしゅったい)』、真鍋昌平『闇金ウシジマくん』のディープな取材力まで、業界の知られざる裏側まで明らかにする漫画への熱い思い入れを吐露する。

CHAPTER3 人は情報を食べて生きている では、まもなく終了する雁屋哲、花咲アキラ『美味しんぼ』にこめた万感の思いから、阿部潤『忘却のサチコ』までグルメ漫画、酒利き漫画の数々を紹介する。

CHAPTER4 鉄文という生き方 意外な鉄道好き、鉄道の旅好きのため「鉄文」とさえ言われる堀江氏が、池田邦彦『カレチ』や菊池直恵『鉄子の旅』、森田信吾『駅前の歩き方』など好きな鉄道漫画のこだわり披歴する。

CHAPTER5 栄光なき天才たちが社会を動かす。ここで紹介されるのは伊藤智義作・森田信吾画の『栄光なき天才たち』という作品一本。『儲けたいなら科学なんじゃないの?』の共著者らしい科学についてのディープな蘊蓄も披歴される。

CHAPTER6 著者で読むマンガ ここで紹介されるとっておきの作家は、思わず納得の久住昌之+谷口ジロー、東村アキコ、そして『ぼくは麻理のなか』の押見修造。

CHAPTER7 “読書家”に負けない知識がつく、実用マンガでは、細野不二彦『電波の城』、浦沢直樹『MASTERキートン』といった古典的作品から最新のルポルタージュ漫画中村淳彦原作、桜壱バーゲン画の『漫画ルポ 中年童貞』まで、業界のリアルに肉薄する漫画の慧眼性に注目する。

CHAPTER8 いろんな「if」で扱われるのは、久保ミツロウ『アゲイン!!』や村上もとか『JIN ∸仁ー』、三田紀房『アルキメデスの大戦』など、タイムスリップものを中心とした一種の思考実験としての漫画だ。

CHAPTER9 忘れられないトラウマ・マンガでは、山上たつひこ原作いがらしみきお画のダークな作品『羊の木』や、手塚治虫の未完作『グリンゴ』、日野日出志『毒虫小僧』など、心にトラウマが残ったり、ひっかかったり、うなされたりする漫画の数々である。堀江氏は、意外にこわがりで、ホラーが苦手なのだ。

 

  しかしついつい熱中してしまって後悔するジャンルがホラー系だ。『うしろの百太郎』なんて読んでしまった日には家に帰って夜一人で寝られない事態になってしまうこともしばしばだ。表紙を見ただけでも怖いので、見ないようにしていたりとか、連載している雑誌の該当ページを読み飛ばすのも目次を見て慎重に……といった具合だ。p180

 

さらにCROSS TALK 堀江貴文×佐渡島庸平と題して、先に引用した対談で本書を総括しながら、ネット社会における漫画のあり方や科学技術が日進月歩の時代におけるSF漫画の難しさなどを展望する。

 

最後の堀江貴文「マンガ」リストも、本書にとりあげたもの以外の作品も収録しさらなる漫画の世界へと読者を案内してくれるだろう。

 

いい漫画、面白い漫画は、自分で読み漁りながら広げてゆくにこしたことはないが、個人の好みのバイアスに縛られすぎると、食わず嫌いの優れた作品も、その視野の外に増えてしまう。その点、本書はいわゆる「鉄板」的な作品から、様々な職業のディープな世界を取り上げたリアリティあふれる漫画や、読者が敬遠しがちなエグイ漫画まで、幅広い作品を取り上げていて、ページをめくるたびに新しい発見がある。幅広い漫画を消化できる強い胃袋を持つと思われる堀江氏でさえ、あまりに下手な絵の漫画家や、キャラクターのデフォルメがきつい漫画家は苦手で、長年スルーしてきた漫画があることが本文中でも語られる。

 

ふつうに漫画が好きな人が読んでもとても楽しいが、ディープな漫画ファンはこの本を飛び石にしてさまざまな名作にたどりつき、もっともっと楽しめるにちがいない奥の深い漫画案内、それが『面白い生き方をしたかったので仕方なくマンガを1000冊読んで考えた そしたら人生変わった』なのである。

 

関連ページ:

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