つぶやきコミューン

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大童澄瞳『映像研には手を出すな! 4』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

[第四巻のアウトラインに関するネタバレを含みます。ご注意ください]

 

湯浅政明監督でテレビアニメ化が決定した大童澄瞳『映像研には手を出すな!』の第4巻。

 

この巻では、あるアニメーションの発想から、製作の過程、そして作られるアニメの内容まで、まるごと描かれることになる。

 

ページをめくった人は誰でも、他のどのコミックとも違うエネルギーがどのページからも立ちのぼるのを、感じることだろう。
 

映像研とは何か?

 

わかりやすくたとえて言えば、女子高生に転生したスタジオジブリの三人の物語である。

 

設定命のクリエイティブエース浅草みどりが宮崎駿、ヒューマンな演技にこだわるリリーフエースの水崎つばめは高畑勲、自分では一切絵を描かない金森さやかがプロデューサー鈴木敏夫だ。

 

そうでなければ、頑なまでに第四のレギュラーメンバーの登場を拒否する理由が見当たらない。

 

第3巻で登場した音響部の百目鬼氏でさえも、あくまで業務提携でSE(音響効果)をアウトソーシングしている外部スタッフにすぎない。

 

とはいえ、アニメーターである浅草氏、水崎氏と、絵のことは自分に聞くなとのたまうプロデューサー役の金森氏では、関心が異なる。

 

冬休みを利用して、好奇心のままに行動するアニメーター二人は、水崎氏の親戚の農家に、旅行に出かける。が、金森氏は同行しない。

 

ーなんで遊びに付き合わにゃならんのです。友達でもあるまいし。

 

三人の関係は、アニメーション制作のための仲間であって、個人的な付き合いのある友人ではない。これはすでに2巻の最後でも確認されたことだ。

 

水崎氏は、たぬきの宝物の伝説ゆかりの場所をめぐることを浅草氏に提案し、浅草氏もこれに同意する。これが4巻のスタートだ。

 

けれども、二人の行く先々で出没する金森氏とおぼしき人影。

 

金森氏は金森氏で、自らの行動原理にしたがって行動している。それは、一にも二にもお金、よく言えば資金調達だ。

 

金森氏もお宝を狙って現れたのだろうか。

 

すべての道はアニメに通ず。

 

別々の行動原理であっても、最後は一つの線に収斂するのが、映像研の活動なのだ。

 

宝探しを続ける浅草氏は、やがて隠された暗号を解き、重大な発見をする。だが、それを自ら封印してしまうのである。

 

開発で生存を脅かされたたぬきのために、できることは何か、一人考え続けたあげくの選択だった。

 

その代わり、この宝さがしをヒントに、合流した金森氏同席の場で、新たなアニメーションの計画を発表する。

 

 ー埋蔵金を諦めるほどの価値があんたに作れますか。

ー興味ない。

ー……何考えているんです。

ー新作『たぬきのエルドラド』。

 

壮大な設定で大風呂敷を広げたものの、やがて浅草氏は煮詰まってしまう。

 

戦争物ゆえ、話が辛気臭くなるのを止めることができないのだ。

 

その窮地に立ちあがったのが、水崎氏だった。

 

ーようは「どう描くか」でしょう。

 滑稽なたぬき合戦の話に変えても浅草氏の主張は描けるんじゃないすか。

 そのほうが早いですよ多分。

ーなんかワシを騙そうとしてないか?

ーこの一件!私に任せてくださらんか!

 

かくして、たぬきの話は、浅草氏から水崎氏へと受け継がれることになる。

 

かつて宮崎駿はこう言った。オレが豚を撮ったんだから、高畑さんはたぬきだ。

 

『たぬきのエルドラド』の世界は、三者の入り乱れる世界である。

 

まず、宇宙船の事故で地上に降り立つことになった主人公。

 

たぬきと共存しながら原始的な生活を送る村の人びと。

 

高度な文明を持つメトロの人びと。

 

自然と文明、そこにまぎれこむ外部の人間の三者関係なら『もののけ姫』の世界だが、『たぬきのエルドラド』は構図がアップデートされている。自然を破壊しようとしているのは、村の人びとで、かつての反省から自然を守ろうとしているのは、メトロの人びとであるというのだ。

 

村とメトロの屈折したせめぎ合いの中、主人公は翻弄され続ける。だが、最後は第三の道を選ぶことになるのだった。

 

浅草氏と、水崎氏がアニメの製作に集中している間、金森氏は外の雑用を片づけなければならない。

 

一歩部室を踏み出すと、外には外部の社会の論理が支配する。乗ったばかりの車は廃車にされ、ダンジョン的な生徒会の古い建物も、改革のあおりを受けて、取り壊されてしまう。

 

映像研には、さらなる拠点が必要だった。そこで目をつけたのがなじみの本屋だった。ここを足場に展開する次なる活動の青写真がすでに金森氏の頭にはできあがっていたのである。

 

ーここには映像研の常設ミニシアターが作れる。

 我々の拠点は部室。ファンの拠点は将来ここになる。

 

さすが、敏腕プロデューサーである。

 

浅草みどり、水崎つばめ、金森さやかの三者は、それぞれの役割を棲み分けながら最強の集団映像研をつくり、最強の世界を創造し続けるだろう。

 

それはすでに某放送局を動かし、億の単位の金を動かし始めている。エルドラドもすぐそこだ。

 

三人が、誰かの転生であるかどうかも、単なるこじつけなので、今となっては、どうでもよいことである。

 

 Kindle版

 

関連ページ:

大童澄瞳『映像研には手を出すな!3』

大童澄瞳『映像研には手を出すな!』1,2

 

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