つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
<< March 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
 
ARCHIVES
RECENT COMMENT
@kamiyamasahiko
MOBILE
qrcode
PROFILE
無料ブログ作成サービス JUGEM
 
マツキタツヤ、宇佐崎しろ『アクタージュact -age 』1〜5

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

 

 

原作マツキタツヤ、漫画宇佐崎しろ『アクタージュact -age 』は天才的な演技力を持った女優志望の女子高生の成長物語だ。

 

夜凪景は、女子高生、父親とは別居、母親とは死別、アルバイトを掛け持ちし、ルイとレイという二人の兄妹を育てながら、女優になる夢をあきらめていなかった。一人孤独を紛らすために、残った映画のビデオを繰り返し見ることで、いつのまにか天才的な演技のセンスを身につけていたのだった。

 

けれども、オーディションを受け、その場に居合わせた者の多くが、彼女の演技の迫真性に圧倒されても、合格者のリストに彼女の名前はなかった。かつて天才女優とうたわれながらも、同じような紙質ゆえに心を病み引退せざるをえなかった大手芸能プロ「スターズ」の社長星アリサが、自分と同じ匂いをかぎ取り、反対したからだった。、

 

あの子の芝居は危険よ

いずれ身を滅ぼすわ

 

だが、そんな景の才能に目をつけた男がいた。国内では無名でありながらも、ヨーロッパではメジャーな映画の賞を総なめにしている映画監督の黒山墨字だった。

 

芝居を教えてやる

お前は役者になるために生まれてきたんだ

 

彼の差し金で、CMに出演し、ネットの時代劇にもエキストラで出演する中で演技のいろはを身につけながら、星プロダクションが主催する映画『デスアイランド』のオーディションに再挑戦するチャンスを得る。

 

場面が求める感情に没頭しすぎるあまり、自らコントロールがきかなくなり、暴走しがちな夜凪景に未来はあるのだろうか。

 

若くしてトップ女優の地位をきわめた百城千世子、星プロのプロデューサーで鋭意が監督の手塚由紀治、演劇界の大物演出家巌裕次郎、その元で育てられた演劇界のトップスターの明神阿良也、星アリサの息子で、二世スターの殻からの脱皮に苦しむ星アキラなど、さまざまな才能や個性と衝突することで、豊かな潜在能力を持つ景の演技は、しだいに開花し、本物へと変わってゆく。
 

少年ジャンプらしく、壁にぶつかり、乗り越える度に能力がバージョンアップしたり、最初ははみ出し者として波風を立てながらも、いつしか周囲もその異彩ぶりに感化され、いがみ合った競争相手たちとも友情を結ぶという、王道の展開に胸踊る作品、それが『アクタージュ act-age』なのだ。
 

『三つ目がとおる』の和登千代子を思わせるセーラー服や、幼い兄妹との入浴シーンに始まり、百城千世子の名前(『どろろ』の百鬼丸+和登千代子)やヘアスタイルと横顔、手塚治虫の本名手塚治をまるまる埋め込んだ手塚由紀治の名前などには、(おそらくは原作者マツキタツヤの)手塚治虫ワールドへの深い愛とリスペクトが感じられる。

 

次々に試練は、ふりかかるものの、そのほとんどは、芸の世界、正常な競争社会ゆえの当然ぶつかる壁に限られ、少年誌にふさわしからぬどろどろとした陰謀やスキャンダルなどのノイズは、カットされるかスルーされているため、読者は安心して夜凪景の能力の開花と成功への道のりを楽しむことができるのだ。

 

夜凪景の役者としての成長の過程は、たぶんにスーパーサイヤ人的なファンタジーの部分もあるが、それを越えて俳優の心理や演技の本質に迫るものがある。

 

『アクタージュact -age 』は、芸能界を舞台とした『バクマン。』ともいうべき傑作コミックなのである。

コメント
コメントする









 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
 

(C) 2024 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.