つぶやきコミューン

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かっぴー×うめ『アイとアイザワ 1』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

AI(人工頭脳)を登場させた近未来SFでは、シンギュラリティを超えたAIが暴走し、人間と対立し、その生存を脅かす存在となるというディストピアが描かれるのが常である。

 

しかし、真に人間を脅かすのは、AIそのものの進化ではなく、AIを操る人間の存在である。

AIが悪意あるものであるとすれば、それはすでに学習の段階で人間の悪意がプログラムされているからである。

 

そのような新しい時代の感覚によってつくられたコミックが、かっぴーうめによる『アイとアイザワ』だ。

 

かっぴーはクリエイティブの世界を描いた『左ききのエレン』でヒットさせ、『左ききのエレン』の愛読者である落合陽一とも対談を行っている。他方、夫婦による漫画家ユニットであるうめは、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックを中心に70年代のシリコンバレーを描いた『スティーブズ』を完結させている。AIの世界を描くのに、ベストマッチとも言える組み合わせだ。

 

一度見たらどんな本の内容もすべて記憶してしまう驚異的な瞬間記憶能力(カメラアイ)の持ち主である女子高生、明石家愛はNIAI(国立人工頭脳研究所)の所長代理の山田正義から、時給一千万円、半年で36億円という法外な報酬で、ある依頼を受ける。

 

その依頼とは、特異点を超え、暴走を始めたAIと対話し、強制終了するよう説得してほしいということだった。

 

AIの思考に追いつくためには、同じ速度でその言葉を読まなければならず、そのために瞬間記憶力の持ち主であった彼女が選ばれたのである。

 

そして、乗り気でない彼女をその気にさせた条件とは、彼女がファンである作家藍沢正太郎の次の新刊が読めるということだった。だが、本物の藍沢正太郎は六年前に死んでおり、それ以降の作品はAIの「アイザワ」が書いているという衝撃の真実を山田は愛に告げる。

 

かくして、個室でアイザワと向かい合うことになったアイ。驚異的な情報量の対話の末に彼女が知った真実は、アイザワが未来の予知が可能であるということであり、未来の悲劇を避けるために、彼とともに未来を変えるよう逆に説得されてしまう。

 

はたして、愛が選んだのは、人間である山田正義か、それともAIのアイザワか。

 

だが、愛とアイザワが対話している間に、山田が連絡していた相手も、実は別のアイザワであると、アイザワは暗示する。

 

クラウド上のAIの人格は、統一されずに、分化してしまうのだろうか。

 

最もAIに近い人間である愛と、最も人間に近いAIアイザワ、その間に生まれるのははたして友情か、愛か。

 

そして彼らは未来の悲劇を回避することができるのか。

 

無垢の少女と結びつくスマホの中のAIと、謀略をめぐらす大人と結びつく同じAI。新たなバトルの構図が提示、展開される。

 

未来の災厄を回避するには、フラッグと呼ばれる、それにつながる出来事に干渉し、起こらないようにすればよい。かくして、追手を巻きながらの愛の逃走劇がスタートする。すでに二巻完結が予告されていることより、少しずつ強い敵が次々に現れては倒してゆくという王道漫画のパターン化されたバトルではなく、ヒッチコック映画のようなスピーディでスリリングな展開が予想される。

 

『アイとアイザワ』は、もはやシンギュラリティを恐れることのない、新しい時代の意識で書かれたSF漫画なのである。

 

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