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堀江貴文『健康の結論』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本   文中敬称略

 

 

自殺、ガン、脳梗塞、心筋梗塞、毎年大勢の人が、若くして、命を落とす。メディアを賑わせる有名人の死は、氷山の一角にすぎない。その中には、実は避けることが可能であった死も少なくない。もっと早期に発見していれば、医師に相談していれば、定期的に健康診断を受けていれば、AEDが近くにあれば、防げた無数の死がある。

 

堀江貴文『健康の結論』(KADOKAWA)は、そうした防げる死を防ぐための、オールラウンドなガイドと言える一冊だ。

 

もちろん、いかに情報通であろうと、堀江貴文は医学の分野の専門家ではない。だから、各章ごとに各分野の専門医師のサポートを受けながら書かれており、聞きかじりの話を思い込みで発展させ、トンデモな情報が紛れ込むリスクもない。

 

防げる死の中で、最初に取り上げるのは自殺だ。日本での自殺者の数は、世界的にも高いレベルで、特に若者の自殺は深刻だ。

 

死にたいと訴える人は、実は辛さが和らげば実は生きたい人である。

 

 特に注目すべきなのは、15〜39歳の死因では「自殺」が事故やがんなどを上回り、15〜34歳の自殺率は事故による死亡率の2.6倍に上ることだ。先進7か国で「自殺」が「事故死」を上回るのは日本だけである。p56

 

どのような理由で人は自殺に至るのか、そのトリガーとなるものは何か、自殺する人の特徴はなどを明らかにしながら、そのリスクを減らす方法を考えてゆく。そこで突き当たるのは、自殺する人は、「辛いときに人の助けを求めない」という傾向だ。

 

周辺のサポートが何よりも大事だが、それでも一人で抱え込むのは禁物。共倒れの可能性もあり、必ず専門家の意見を仰ぐのがよい。

 

□死にたいと言われたら、ワンオペではなく、チームで支えよう。p74

 

続く第3章で扱うのは、心筋梗塞や脳震盪などの「心臓突然死」である。心臓突然死は、早期の適切な措置があれば、蘇生できる可能性がきわめて高いとされている。

 

119番通報で救急車を呼んで救命措置を行っても、9、2%の人間しか助からないが、心臓マッサージを行えば16.1%に、AEDを使えばなんと54.0%の人を救うことができるのだ。

 

どれだけ社会にAEDとその使い方を浸透させるかで、心臓突然死の数は目に見えて減らすことができるということである。

 

しかし、AEDは一台30万円とまだ高価である。大容量のバッテリが値段を引き上げているが、ほんの数回使える簡易的な仕様にすればもっと値段を引き下げることができれば、もっと多くの人が助かるだろう。クラウドファンディングで安価なモデルの量産をめざすなら、解決はすぐ目の前にある。

 

そして、次の第四章は、昨年一年間で37万8千人が亡くなったガンがテーマだ。すべてのガンに対策が可能なわけではないが、胃がんの多くはピロリ菌が原因であり、肝細胞がんの多くは肝炎ウイルスの感染による。また、比較的治癒しやすい大腸がんはポリプの発見によって、早期発見・治癒につながる。

 

  大阪国際がんセンターの調査によると、ポリープを2個以上持つ人は、持っていない人に比べて7倍も大腸がんになりやすく、摘除しても他の場所に再発するリスクが多いそうだ。

  たとえポリープが見つかったとしても、実際にがん化するには数年かかる。そのため最低でも2年に1度、できれば毎日、便潜血検査を受けておけば手遅れになるようなことはまずないと言ってもいい。p108

 

さらに第5章では「脳卒中」(「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の総称)をいかに減らすかがテーマ。脳卒中の場合には、早期の適切な措置が必須で、そのためにも初期症状を見逃さないことが重要となる。この分野では、生活習慣の改善がダイレクトにリスク軽減につながる。

 

第6章は、日本が特に対策が遅れている子宮頸がんなどの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)を扱うほか、望まない妊娠を予防する「アフターピル(緊急避妊薬)」も紹介する。

 

第7章は、単に入れ歯になるだけでなく、脳卒中や心疾患にもつながる歯周病の予防がテーマ。いったんかかってしまうと、歯磨きや、歯科医の治療でも完全な除菌は困難と言われる。脳卒中や心疾患だけでなく、糖尿病や肺炎、早流産にもつながりかねず、そのリスクはいくら強調しすぎてもしすぎることはない。

 

第8章の「ホリエモンの予防医療サロン」では、1日3〜4時間の短い睡眠時間で日本でも最も働きすぎと言われる落合陽一の健康診断を例に、働き盛りの人間の健康管理を考える企画だ。危ないんじゃないという堀江のツッコミに、落合は健診データや医者の談話を盾に切り返すやりとりが面白い。

 

堀江 大丈夫? このままいくと死ぬよ?

落合 そう、だから、ちゃんと定期健診は受けてるんですよ(笑)。

p206

 

このようにして、日本人の主要な死因につながることで、防げる死を格段に減らすことを目的にしているのが『健康の結論』である。個別にがんだけ、歯だけ、心臓疾患だけを扱った本は多いが、自殺まで含めて、専門医のアドバイスを一冊にまとめた本は類がないし、各章ごとのまとめもチャート式の受験参考書のようにわかりやすく、ときどき見返すのにもちょうどよい。HPVなど社会的な議論の詰めが残っているものもあるが、大半の結論はあまりに正しすぎて異議を唱えることが困難だろう。本書が多くの読者を獲得し、その提案の一つ一つが社会的に浸透することは、間違いなく、未来豊かな若者や、働き盛りの人の死を、減らすことに直結することだろう。

 

関連ページ(堀江貴文の近刊レビュー):

堀江貴文『堀江貴文の本はなぜすべてがベストセラーになるのか?』

堀江貴文『多動力』

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