つぶやきコミューン

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堀江貴文・落合陽一『10年後の仕事図鑑』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略                               ver.1.1

 

 

インターネット、AI、仮想通貨、ベーシックインカムといった世界の新しい変化のなか、職業や生き方を語った『10年後の仕事図鑑』(SBクリエイティブ)は、ホリエモンこと堀江貴文と「現代の魔法使い」落合陽一の対談を再構成した本だ。

 

基本的には、話の流れはそのままだが、会話の雰囲気や脱線部分はカットし、それぞれの断章が独立して読めるように純化しながら、編集者がリライトしている。対談はあくまで相互に触発し合いテーマやトピックの広がりを得るための手段であり、実際の会話は文字数にすればこの数倍あるものだろう。だから通常の対談本にある中身の薄さは、感じられない。書き下ろしの本にまさるとも劣らないほど密度が濃いのである。

 

本書の主張は、堀江であれば『多動力』、落合であれば『超AI時代の生存戦略』『日本再興戦略』の延長上にあるが、それをさらに一歩も二歩も前に進めたものだ。重要なのは、抜群の論理的思考と情報力を持った二人が同じトピックについて語ることで、まだ来ていない未来の社会の姿や、その変化が立体的に立ち上がることである。一人ではカバーできない視野の広がり、解像度の高さに加え、両者の視点の位相差によって、読者の思考にも自由や遊びが生まれる。そこから無数の仕事や生き方のヒントが生まれてくるのである。

 

だから、読者は二人が語ること以上に、この本のさまざまなページを読んだ瞬間に生まれてくるひらめき、発想に敏感であってほしい。たぶんそのひらめきは一期一会で、二度目に読んだときには同じものが得られないか、テンションが下がってしまうものなのだ。忘れないうちに、紙でもスマホでもメモをとる。本の内容自体は逃げはしないし、電子版であればいつでもスマホやタブレットに入れておけばいつでもどこでも見返すことができるのだから。

 

実は、『10年後の仕事図鑑』は、十年の先の生き残る仕事、失われる仕事を細かく分析した本ではないのである。

 

マイケル・A・オズボーンの『雇用の未来ーーコンピュータによって仕事は失われるか』では、702の職業がコンピュータでどう自動化されるか分析しているが、そのような細かい具体的な予測に大した意味はないと堀江も落合も言う。なぜなら予想を超えた速度で社会は変わってしまうからだ。

 

 一つひとつの職業が「数年後、何%の確率でなくなるか」を、懇切丁寧に説明しているが、正直に言って、こんなものはまったくもって意味がないと思っているし、今の職業に当てはめることがナンセンス。(堀江、p125)

 

重要なのは、今すでに起こっていることの本質をしっかりととらえることだ。

 

AIによって失われる職業がある一方で、生まれる職業もある。人間が、機械によって完全に淘汰されるのではなく、人間と機械がそれぞれのメリットをすり合わせる形で、共生するハイブリッドな社会、落合陽一の言葉を借りれば「まだら」な社会へとこれから移行してゆくし、すでにその変化は始まっている。その例として、落合陽一はくら寿司を挙げている。

 

 くら寿司は、従来人がやっていたサービスの半分を機械がオートメーションで行ない、人間は機械と機械の間に入る調整役となっている。(落合、p50)

 

経営者、検事や弁護士、クリエイティブな仕事など、ひとが常識的に、この分野はあぶないと考える分野でさえも、安全地帯は存在しない。

 

大切なのは、AIによって代替不可能な人間、あるいはAIによって代替するにはコストのかかりすぎる、高い付加価値を持った人間になることだ。どの分野であろうと、そのような人間のニーズは必ず存在する。

 

 簡単にいえば、「解決するのが面倒な問題」を解く職能を考慮して、職業にすればいいのだ。あらゆる仕事がコストで考えられる時代において、「給料の高い仕事」というのは、それだけで解決すべき課題になる。

 つまり、逆をいえば、現在、その仕事をしている人に払う給料より、その仕事ができるAIんを作るコストのほうが大きければ、その仕事は人がすべきことになる。AIに代えたところで大したメリットのない職業は、なかなか最適化されないのである。(落合、p 117 )

 

職人の世界、観光業、ドローンなど、この先さらにニーズが高まる業界も存在するし、、自動運転で時間が余った分、生まれる「パッセンジャーエコノミー」のように、新しいマーケットも生まれる。

 

そのような時代に、どう生きるかといえば、組織にしがみつくのではなく、労働者がそのまま経営者となるか、あるいは幻冬舎の編集者箕輪厚介のように、会社を付加価値を高めるための拠点としながら、会社を超える複線的な活動を行うことなど、さまざまなバリエーションが考えられる。

 

  彼は、編集者として生きていく上で、「幻冬舎の社員であること」に大きな意味があることを理解している。幻冬舎のインフラをフル活用し、いつでも自分の作りたい本を出版できる環境を使いながら、自分の名をブランド化しているのだ。(堀江、p41)

 

教育改革実践家の藤原和博の言うように、オンリーワンの価値を得るには、三つの好きな世界を深めることである。100人に一人程度の価値であれば、100の三乗で100万人に一人の人材になれる。それは、仕事というよりも、遊びや趣味の延長上に存在する。

 

  嫌々働いていたところで、必死になって働いている人に負けてしまうことは目に見えている。それなら、勝ち負けなんて考えず、好きなことに没頭しよう。没頭しているうちに、君は唯一無二の存在になっている。(堀江、p123)

 未来が不安な若者には、「仕事になる趣味を3つ持て」と伝えたい。(落合、p232)

 

同じテーマを、堀江貴文は、そして落合陽一は、別の言葉で語りながら、『新世紀エヴァンゲリオン』の「瞬間心重ねて」のユニゾン攻撃のように、新しい時代の攻略ポイントをえぐるのだ。

 

『10年後の職業図鑑』では、単なるライフスタイルや、職業のマーケットの変化だけでなく、お金のありかたなど価値観の変化も語られる。

 

お金は信用を数値化したものにすぎない。お金を貯めるよりも重要なのは信用の蓄積だ。そして、この時代にはクラウドファンディングなど信用や価値の創出によって、必要なお金を調達する手段は無数に存在するようになっているのだ。

 

さらに、社会は一層キャッシュレスで済ますことができる時代へと移行しつつあり、すでにコンビニのレジを機械化してしまった中国に比べると、日本はすでに周回遅れの状態に置かれつつあるのだ。

 

つねに重要なのは、これまで社会ー学校や職場ーで教え込まれた古い価値観による洗脳から脱することだ。

 

就職活動に疲れ果てて多くの学生がメンヘラになるのは、脳や行動の不毛な習慣を刷り込まれているからである。

 

  日本の就活の手続きで履歴書を書かせる文化も、はっきりいって選考する社員および作成する応募者のどちらにとっても不便であるし、何一つ本質的ではない。根性と写経の世界である。

  就活は「他人と違うことがリスクである」なんて幻想を平気で強いてくる。信じなくていいものを信じ込まされる。周囲に染まるその瞬間が、思考停止して同じ方向を泳ぐことしかできない鰯の群れの一員になる瞬間に他ならない。(落合、pp65-66)

 

堀江貴文との共著が夢だったという落合陽一のテンションは、自ら認めるように、この本では他のどの著書よりも高い。行間にそのキレッキレのテンションに、その熱量に読者は自然に煽られる。もう時間はないのだ。

 

 社会の速度が増すほど、機械のほうがポジションを取るのが早くなる。だからこそ、今ポジションを確保しておかないと、一生ポジションが確保できなくなってしまう。問題は、生き残るか生き残れないかではない。ポジションを取るのか、溶けていくかだ。(…) 

スピード感を持ち、ここ2〜3年で動きはじめなくてはもう手遅れかもしれない。気になったことはどんどんやってみる。やりたいことがなければ、まずは今晩の夕飯を決める。笑いごとではなく、まず最低限そこからはじめてみることだ。(落合、p243)

 

最終章の「ピュアな情熱に導かれた”自分の人生”を生きよ」で二人の檄はピークに達する。

 

  かつては、何かにチャレンジするためには、様々なハードルがあった。家柄や学歴、財産、才能、人脈、経験、資格、教養ーー。今や、そんなものは何一つ持っていなくていい。勇気を持って、自信を持って、一歩踏み出せ。(堀江、p248)

 

『10年後の職業図鑑』は、就職活動を控えた大学生や社会人だけでなく、中学生や高校生、できれば小学校生にも読んでもらいたい本だ。今は、インターネットで、高度な技術や知識を習得したり、遊びの延長上でお金を稼ぎ、生業につなげたりすることも可能な時代だ。十分な収入を得ながら高校や大学へ通うなら、ベンチャーの立ち上げや、ビジネスパートナーのハンティング、研究室の活用など、全く別の意味を持ったものに変わるし、そんな回り道の必要さえないかもしれない。時代の変化はそこまで来ている。

 

  以前、平均年齢15歳の子どもたち20人弱に、簡単に作成したIoTデバイスを用いた電子工作や機械学習、ソフトウェア制作を教えるワークショップを開いたことがある。5年前であれば24歳の学生が修士論文でやるような内容なのだが、たった合計24時間で、誰一人脱落することなくハードウェアやソフトウェアを作れるようになった。つまり当時24歳の人にとっては9年分の時間があっという間にコモディテイ化してしまったというわけだ。(落合、p231)

 

親やその親とは違った速度で、彼らが人生のコースを歩きだすのを邪魔する理由はない。大人の思考パターンからぬけ出せる彼らこそは、この国の、そして世界の希望なのだから。成人になるのを待たずして、この本の読者から何十何百ものニュータイプの成功者が生み出されることだろう。

 

『10年後の職業図鑑』は、現時点において、あなたを、そしてあなたのまわりの21世紀の少年少女を、シンギュラリティに向けて最適化し、最大限進化させてくれる本である。

 

  Kindle版

 

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