つぶやきコミューン

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猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』1〜4

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』は、ファッション界を舞台に、モデル志望の少女とデザイナー志望の少年という二つの視点から描くパラレルストーリーだ。

 

藤戸千雪は高校三年生、モデル事務所ミルネージュ社長藤戸研二を父を持ちながら、158センチと身長に恵まれず、事務所もクビにされながらもパリコレのモデルになる夢をあきらめることができなかった。

 

そして、千雪のクラスメート都村育人は、服を作るのが好きで、一人被服室にこもり大量の服を作りながらも、三人の妹のために、就職を考えようとしていた。

 

けれども、育人がつくった服を着た千雪の姿がSNSで紹介されると、大きな反響を呼び、二人の運命が動き出すこととなる。

 

育人の服を着た千雪は、彼女がこの道を進むことを拒み続けていた先輩モデルのに、パリコレクションで歩く千雪のイリュージョンを垣間見せ、千雪の父親も育人の才能を認めたものの、高校生であることでデザイナーとしての採用に難色を示す。

 

その結果、育人は若手ファッションブランドの柳田一の元に預けられるが、技術的な未熟さを理由に、早々にクビを言い渡される。

 

そのまま帰ってしまえば、ファッションデザイナーとしての未来は閉ざされてしまうだろう。

 

まさにデザイナーとして生きる育人の覚悟が問われる瞬間だった。

 

他方も千雪もまた、なんとか父の事務所に採用されたものの、その身長を理由に業界での冷遇は続く。はたして、二人がデザイナーとして、モデルとして輝く日は来るのだろうか。

 

これは わたし 藤戸千雪がトップモデルに至るまでの物語

 

そして

 

都村育人がトップデザイナーに至るまでの物語

 

(『ランウェイで笑って 1』)

 

通常、モデルの視点、デザイナーの視点、どちらか一方に傾きやすいこの世界を、『ランウェイで笑って』は、男女二つの視点から複眼的に描くことで、男性が読んでも女性が読んでもスムーズに世界に入ることができるサクセスストーリーにまとめている。

 

王道もののスポ根もの同様、主人公たちは分不相応な夢から始めながらも、具体的な課題を一つ一つクリアし、目前の目標を達成してゆくため、しだいに読者をファッションの世界に引き込む魅力を持っている。

 

それを支えるのは、モデルの体形や姿勢によって変化するさまざまなファッションを、その制作過程を一枚の布にまで遡りながら、リアルにかつ美しく描ききる画力である。絵によって、読者が魅了できないとしたら、ストーリーそのものが説得力を失ってしまうだろう。

 

さらに、ドラマチックな山場での決め台詞も効果的だ。

 

「なりたい」って思える僕がいる

「着てほしい」って思う人たちがいる

 

 何度考えてもやっぱり僕の原点は

「服を作ることが好き」なんです

 

 “着た人が笑顔になる”

 そんな服を作れるデザイナーになりたい

 

『ランウェイで笑って 3』

 

自ら稼げるようになれば、解決してしまう都村家の貧乏は、千雪の身長不足よりも低いハードルであるためなのか。3、4巻と次々に出現するライバルや先達、活躍の舞台と、都村育人の未来はしだいに見えてきた気がするが、藤戸千雪の方はまだ切り札となるカードを手に入れていない。二つのストーリーをどうバランスをとりながら進行させてゆくのか、5巻以降作者の手腕が問われる『ランナウェイで笑って』である。

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