つぶやきコミューン

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かっぴー×nifuni 『左ききのエレン 1』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

かっぴ―・nifuni『左ききのレレン 1』(集英社)は、ウェブで公開され大反響となり、その後単行本化されたかっぴーの『左ききのエレン』のリメイク版である。

 

かっぴーの絵は、おせじにも上手いと言えるものではなかったが、それにもかかわらず共感を得るポテンシャルをそのキャラクターやストーリーは秘めていた。とは言え、題材は日常的なギャグではなく、クリエイティブな世界の物語であり、その中で絵の上手下手がテーマとなる場面も重要な役割を果たす。下手な絵で、天才とも言えるエレンの上手い絵と凡庸な才能しか持たない光一の絵を描き分けるのは、それ自体矛盾した試みとも言える。またストーリーはよいが、ネームレベルのこの絵だけはしっかりした作画で読みたいという作画こだわり派の声もあったろう。あるべき『左ききのエレン』とはどのようなものなのか?そこで作られたのがこのリメイク版である。

 

朝倉光一は26歳、今は広告代理店で、下っ端のデザイナーに甘んじている。締切の中、ギリギリのタスクを仕上げるが、せっかくやりとげた仕事のおいしい部分は上に持ってゆかれる。そんな毎日を過ごす光一が思い出すのは、高校時代に出会った絵の天才、山岸エレンだった。

 

オレがそうつについて確かに知ってることなんて

「横浜のバスキア」

彼女が左ききだったということくらいだった

 

美術部時代、エレンが起こしたある事件で衝撃を受けた光一は、美大へ進むも、アーティストにはなれず、広告代理店に潜り込む。エレンとの圧倒的な実力の差を突きつけられながらも、オレはオレが諦めるまで諦めないと心の叫びをあげたあの日のまま、大人になれないでいた。

 

才能の限界を突きつけられながらも、何かになりたい、自らのクリエイティブな可能性を捨てることができない人への共感こそが、『左ききのエレン』の圧倒的な人気の秘密である。

 

他方、エレンはといえば、早逝した不遇の父親の後姿を見続け、美術界に対して、怨念のようなものを抱き続け、天才画家として成功を収めながらも、決して報われた人生を送っているわけではなかった。

 

光一を上から見守り支えるアートディレクターの神谷雄介、要領よく立ち回るコピーライターのみっちゃんこと三橋由利奈、サラリーマンになりきれずクリエイティブ気取りの光一を苦々しく思う流川俊。業界の軋轢の中で、浮かび上がるそれぞれの思い。

 

はたして光一は、エレンはどこへ行きつくのか。

 

作画のniifuneは、日常的な場面は特にビジュアルにこだわることなく、普通に描き流しているように見えるが、光一とエレンの感情があらわになる重要シーンに関しては、鉛筆のタッチをむき出しにした描線で勝負をかけている。特に、クローズアップで描かれた鉛筆の描線は美しく、確かなデッザン力を感じさせる。しかしいつもそのレベルの絵を維持しているわけではない。

 

トータルに見た場合、はたしてかっぴーの原作と比べ、どちらが力を得るかはまだ未知数だが、ストーリー的には傑作の『左利きのエレン』が、多くの新たな読者やファンを得ることは確実であろう。

 

PS かっぴーの『左ききのエレン』はKindle版のみ、第一部10巻が完結している。全部そろえると6000円を越えるが、Kindle Unlimitedですべて読めるので、申し込んで1ヶ月の間に全巻読み、解約すれば出費を抑えることができる。 

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