つぶやきコミューン

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堀江貴文『多動力』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

今は、インターネットの時代、全産業のタテの壁が溶けた時代だ。誰もとまでは言わないまでも、少なくとも半分くらいの人は多くの活動を並行して進め、それぞれを収入に結びつけたいと考える。しかし、メインの仕事以外のものを採算ベースに載せるのは難しいとか、長続きしないとかの理由でもとのワンパターンな生活に戻ってしまう人が多い。どのようにして、多方面の活動を軌道にのせ継続してゆくことができるのか。

 

そんな多くの人の関心のど真ん中にフォーカスしたのが、堀江貴文『他動力』(幻冬舎)だ。多くの読者は、タイトルを見ただけで、読む前から、何が書いてあるか大体の見当がついている。そして、著者もそれを否定しない。それでも発売早々10万部が売れていることは、それが読者のニーズに応えるものであるからだろう。

 

  これだけ大量のアウトプットをしていれば、どうしたって言うことは似通ってくる。堀江貴文という人間が変質するわけではないから、Aという質問を複数の記者からされれば、同じBという答えを少しずつアレンジしながら返すほかない。

  そんな過去の僕の言葉を焼き直してできた本がベストセラーになって、僕は確信した。別に、時間をかけてインタビューする必要すらないのだと。p41 (ページ表記は単行本のものです)

 

『多動力』の全体の主張を要約したりすることはあまり意味のないことだ。読者の一人ひとり吸収したいところは違っているからだ。

 

『多動力』の中心となる三つのポイントをまず整理しよう。

 

『多動力』の三つのポイント

 

1.80点ノマド

 

人が何かをやろうとして実行できないのは、準備を考え、そこに時間と労力を注ぎ込みながら、最後までやりきらず放棄するというパターンに陥るためである。やろうと思ったら、準備なしに何かを始めること。そこにとことんはまってみること。でも、100点満点をめざさないこと、完璧主義に陥らないこと。なぜ80点でよいのか。それは80点まで到達するのは割と簡単であるが、次にそれを100点にまで持ってゆこうとするとケタ違いに時間がかかってしまうからだ。だから、物事の本質やジャンルのフレームをつかめば、次のジャンルの80点を目指した方が賢明ということになる。

 

   どんな分野でも、80点までは簡単にたどりつけても、100点満点を達成するまでには膨大なコストと時間がかかる。80点まではウサギの速さで駆け抜けても、そこから100点に到達するには亀の歩みになってしまう。(…)

   ある程度ハマれば、大半の知識は得られる。そこから長い年月をかけて100点を取ることに執着せず、次のジャンルへ飛んだほうが、また新たな発見がある。p66

 

多動力というと、同時平行に何本もと進めるイメージがあるが、これは失敗の元である。他の分野に手を出すのは、その分野に飽きてからでいい。

 

 初めからいくつものことに手を出すのではなく、まずは「何か”一つのこと”にサルのようにハマる」ことだ。(…)

 何か一つのことに極端なまでに夢中になれば、そこで培った好奇心と集中力が他のジャンルでも同じように生かされる。

p59

 

すでに紹介した西野亮廣の『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』にも出てきた話だが、100人に一人の分野が三つ集まれば、つまり三つの肩書を持つ存在になれば、100×100×100で100万人に一人のレアな存在になれるのだ。

 

2.引き算で考えること

 

マルチな活動を行うというと、すぐに考えるのがやるべきことのリストアップである。本書でも、リスト作成を勧める。但し、目的は正反対だ。リストアップするのは、それに赤線を引き、生活の中から削除するためである。

 

□1日24時間をこと細かに書きだしてみよう。

□起床、シャワー、朝ご飯、歯磨き、着替え、ゴミ出し、通勤、メールチェック、会議、昼食、電車移動、打ち合わせ……。

□その中でワクワクしないことを赤で潰そう。p77

 

第一に引き算の対象になるのはワクワクしないことである。ワクワクすることで生活を埋め尽くすことが大事だ。生活そのものからワクワクしないことを外すようにする、それが可能でない場合には他人に依頼する(アウトソーシング)これが大きな原則だ。

 

ワクワクしないことの次に引き算するのは、ワクワクしない人である。人生は有限だ。ワクワクするような人だけで、人生をいっぱいにすればいいのだ。

 

□会うことがワクワクしない人はいるだろうか?

□その人とは次に会うので最後にしよう(勇気があれば、アポをキャンセルしてしまってもいい)。

□付き合わない人を決めることがあなたの生き方を決める。

p94

 

次に削除するのは、ワクワクしない仕事である。

 

□「受けない仕事リスト」を作ろう。

□来た仕事でピンと来ないもの、続けているけどやめたい仕事そ「受けない仕事」リストに入れよう。

p101

 

システムはそれが排除するものによって決定されるが、選択の基準は人も仕事もそれがワクワクするかどうかということだ。

 

さらに、削除すべきなのは、電話である。同期通信の電話ほど時間泥棒な存在はない。勝手に生活の中に割り込み、仕事のリズムを乱す。メールや、LINE、メッセンジャーなどの非同期通信で十分だ。それをけしからんと言う職場ならどうすればいいか。

 

「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)は直接電話しろ。だいいち無礼だ」と叱りつける上司や仕事相手とは、付き合うのをやめるか、何度言われても、しぶとくメールやLINEでホウレンソウをすればいい。p81

 

それでもわからないような職場は、変わってしまえばいい。99%の会議も無駄で要らない。そうした引き算の徹底が本書を貫いている。

 

そして、最後に引き算すべきなのは、ストレスである。そのためには、睡眠時間を十分取り、言いたいことを言い、食べたいものを食べ、やりたいことをやる生活が一番だ。

 

いや、もう一つ要らないものがあると堀江貴文は言う。

 

それは羞恥心である。それが何かをできない、やらない理由をつくりあげる最大の原因の一つなのである。

 

あなたが多動になるための最大のハードルは「他人にどう見られるだろう?」という感情だ。

はっきり言おう。誰もあなたには興味がない。好きなように生きて、思いっきり恥をかこう。

p187

 

3.子供になること

 

誰もが子供のころは、多動力を持っている。しかし、学校社会の中ではそれはいけないこととされ、対象を目移りすることはタブーとなる。社会の洗脳を解けば、その時代の若い力を取り戻すことができるはずである。

 

 実は、かつては誰もが「多動力」をもっていた。

 そう、あなたが3歳児だったころ、「多動力」は確実にあなたの中にたっぷりと備わっていたのだ。

 ご飯を食べていても、興味がころころ移っては、ジュースをこぼしたり、お皿を割ったり、親を困らせていたはずだ。好奇心が抑えられず怪我ばかりしていたはずだ。

 しかし、多くの人は、子どもから大人になっていく中で、「多動力」がみるみるうちに涸れていく。

 「やりたいこと」ではなく「やらなくてはいけないこと」をするように矯正され、バランスの取れた大人になる。pp201-202

 

しかし、成功した起業家やクリエイターは三歳児程度の旺盛な好奇心を持ち続けている人たちなのだ。

 

あるいは、そこまで戻らなくても、中学や高校の学園祭のころを考えてみればよい。勉強や部活動の傍ら、模擬店をやったり、イベントを主催したりしていたのではなかったか。

 

  10代のころを思い起こしてもらいたい。誰だって中学生、高校生時代に学園祭をやっていたではないか。学園祭なんて思いつきの産物そのものだし、プロが一人も介入しなくともそれなりに成功している。

 人がたくさん行き交う中庭にステージをこしらえ、バンド演奏やクイズ大会など出し物を企画し、周辺に模擬店を出す。学園祭の焼きそばやカキ氷は素人が作っているから、お店で出しているものにはとうてい及ばない。でもみんな喜んでオカネを出して買ってくれる。

 かつては思いつきとノリだけで大きなイベントを成功させてきたにもかかわらず、大人になった途端に頭が固くなり、くだらない責任感が芽生え、フェスの一つも企画できなくなる。pp52-53

 

「多動力」は新たに獲得しなければいけない何かではない。3歳のころ、中学生や高校生のころできたことを思い出し、同じノリの世界に入り込めばよいだけなのだ。

 

以上に加えて、三つの鍵となるコンセプトを押さえておくと、さらに多動力を生かすことができるだろう。

 

三つのキーコンセプト

 

第一のコンセプトは「原液」だ。わかりやすく言いかえると原液とは、魅力的なオリジナルコンテンツのこと。カルピスのように、「原液」を作り出すことができる人は、周囲にそれを薄めて商売する人が自然に集まってくる。

 

 (…)どうがんばっても一日は24時間しかない。

 その限られた時間は、自分にしか思いつかないアイデアを出すことや、自分にしかできない発言をすることに集中するべきだ。

 関わっているプロジェクトの数が少ない人は大体、カルピスの原液を作れていない。他の誰かの作った原液を薄める仕事しかしてないのだ。pp113-114

 

第二のコンセプトは、「教養」だ。ビジネスライクなホリエモンが教養なんていうと、なんだか似合わないという人もいるかもしれないが、それはカタログ的な教養主義のイメージで考えるからだ。疑問に思ったことをとことん掘り下げることが、本物の教養を身につける一番の近道だ。

 

教養とは、表面的な知識やノウハウとは違い、時代が変化しても変わらない本質的なことを言う。p117

 

「原液」が作れるのも、システムの本質と歴史の変遷を追った深い教養があればこそなのである。

 

第三のコンセプトは、「質問力」だ。いろいろな問題をごっちゃにせず、正しく整理して適切な質問ができることが、多動力を身につける上でも最大の鍵となる。なんでもわからないことは、その場ですぐに聞けばよいが、有効な答えが得られるのは正しい質問がされた場合に限られる。

 

まともな「質問」ができない人が多すぎる。

「いい質問」をするためには、自分の中で論点や疑問点をきちんと整理しないといけない。

「質問力」はビジネスパーソンとして必須の能力だ。p129

 

堀江貴文の読者の多くは、50冊100冊と著書を読んでいる。その中に含まれるのは、望ましい方向に自分を変えるためのプログラムであり、コマンドである。残念ながら、人間はPCのように、一度脳に入れただけでは100%コマンドを実行することができない。人間は、超マルチタスクを、ランダムなアクセスによってその一部のみ選択的に処理するリダンダンシー(冗長性)の高いコンピューターみたいなものだからだ。生存に必要不可欠なホメオスタシス(恒常性)の維持機能が最優先されるため、プログラムの一部しか実行されない。そのため、繰り返し同じコマンドを打ち込んだり、似たようなプログラムを再三実行する必要がある。『多動力』は、この目的に向けて最適化された本であり、いわば読む自己変革プログラムである。

 

Kndle版

 

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