つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
 
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
@kamiyamasahiko
MOBILE
qrcode
PROFILE
無料ブログ作成サービス JUGEM
 
岩明均『ヒストリエ』 1〜10

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

 

『ヒストリエ』は、『寄生獣』の岩明均による歴史漫画、アレキサンドロス大王の父フィリッポスの書記官となった実在の人物エウメネスの生涯を、残された史書などを資料としながら、そのおいたちから描く壮大なスケールの歴史絵巻である。

 

紀元前4世紀、カルディアの良家の子供として育てられたエウメネスは、幼いころより学問好きで、万巻の書に親しみ、大人をも圧倒する知識の持ち主の上、武術でも優れた能力を発揮する。実は、彼はギリシア人ではなく、スキタイ人の血をひいており、実の母は彼の目の前で殺されたという暗い過去を持っているのだった。

 

やがて彼の育ての父が何者かに殺されると、エウメネスのギリシア市民としての立場は失われ、奴隷として売られることになる。奴隷船で運ばれる途中、九死に一生を得、ビザンティオンに近いボアの村に身を寄せることになるが、そこでも村に災いが振りかかる。敵を何とか追い払うことができたのは、エウメネスのおかげだった。彼は、若くして、軍師としての優れた才も持ちあわせていたのだった。村が、敵対した町と和睦を結ぶとき、エウメネスの存在は邪魔になるので、彼は身を引き、愛する女性と別れ、再び旅に出る。

 

カルディアへ里帰りした際、マケドニア王、フィリッポスの知遇を得て、マケドニアに仕えるようになったエウメネスは、息子のアレキサンドロスとも親しくなる。アレキサンドロスも武芸に秀でた聡明な青年だったが、彼にはある秘密があった。彼の顔の左側には蛇の痣があるのだが、この痣のない彼そっくりの青年へファイスティオンがいるというのである。

 

やがて、マケドニアはビザンティオンとペリントスでアテネ軍と対峙するものの、アテネの将軍フォーキオンの作戦に、マケドニア軍は劣勢に立たされる。さらに、別の勢力とも衝突し、フィリポスは負傷し、そこで八面六臂の活躍を見せるエウメネス。

 

その功が認められ、彼に与えられた使命は、ギリシアに潜り込み、フォーキオンと接触せよというものだった。その狙いは?

 

いつしか、軍師としても頭角を現したエウメネスは、権力を上り詰めるものの、また失うものもあった。

 

エウメネスが、マケドニア人になってしまうことを恐れたフィリポスは、その縁談を邪魔し、エウメネスは、またしても恋人との悲しい別れを強いられるのだった。

 

『ヒストリエ』のエウメネスが体現するのは、生きた学問と武術などを身につけた古代世界の英雄像である。その学問は、現実から遊離することなく、目の前の問題を次々に解決し、窮地を乗り越えることを可能にするが、それでも身分制の世の中、取り立てられ出世しても、思うに任せないことも多い。その半ばは彼の出生の秘密に由来するものだ。悲劇の影を宿した美形の英雄であるがゆえに、エウメネスの活躍に、さながら古代世界を舞台に自分が動き回るかのような興奮を多くの読者も覚える。そして、それはかつてエウメネス自身が、胸躍らせたホメロスの『オデュッセイア』の世界に近いものにちがいない。

 

コメント
コメントする









 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://mkamiya.jugem.jp/trackback/743
 

(C) 2017 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.