つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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大今良時『不滅のあなたへ 1』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

 

 

それは地球上の存在ではない。

それは宇宙からやってきた。

それは決まった形を持たない。

それは遭遇したものの形を模倣する。

傷ついたもののかたちを模倣するとき、それは死んでしまうが、じきに再生する。

それはあるものから別のものへとかたちを変える。

それは無生物から生物へとかたちを変え、動物から人間へと姿を変えることもできる。

けれども、いきなり人間のように行動はできない。

もともと別の生命であって、人間のたましいを持たないからだ。

それは記憶を持っていて、必要に応じ以前のかたちに戻ることもできる。

それは学習能力を持っていて、徐々にかたちを似せたものの能力を獲得することができる。

 

そんな風にして、何かに似せたそれは一体何なのか?

そんな風にして、人間そっくりになったそれは人間なのか、そうでないのか?

 

『聲の形』の大今良時の新作『不滅のあなたへ』はそんな得体のしれない存在を主人公としている。

 

それははじめ球だった。

ただの球ではない

ありとあらゆるものの姿を写しとり 変化することができる

私は”それ”をこの地に投げ入れ 観察することにした

 

こんな風にして『不滅のあなたへ』は始まる。この”私”は一体何なのか。神なのか、宇宙人なのか、それ以上の説明はない。

 

それはしばらく石の姿になってすごした

暖かくなると今度はコケを写しとった

やがてこの地に雪が降り始めた一匹のレッシオオカミが南方から現れ

力尽きるとーーーー

それはオオカミの姿となった

 

これが、ほとんど神話のような物語の始まりである。

 

それはジョアンと呼ばれる。かつて飼っていた少年のもとに帰るといつのまにか姿を似せたオオカミになりすまし続けることになる。

 

少年は、一人ぼっちだ。かつてこの場所に大勢の人がいたが、どこかへと旅立ってしまった。少年は、ジョアンと呼ばれるそれとともに彼らの跡をたどろうとする。しかし、その旅路の途中で、少年を悲劇が襲う。

 

はじめての仲間を失ったそれは、少年に姿を変え、それの冒険が始まる。

 

おおよそかつて見たことのない物語。不死の生命体の変身譚。はたしてそれは変身したものの世界に溶け込むことができるのか。

それとも、排除され、恐れられる敵となってしまうのか。

それは人とコミュニケーションが可能なのか。

そして、それに居場所は、安住の地は与えられるのか。

今後、いかなる冒険をそれは行い、そしてその結果としていかなる進化をとげることになるのか。

 

もしかすると、手塚治虫の『火の鳥』のような壮大なスケールの傑作となるのか。そんな期待をさえかきたててやまないのが、『聲の形』で行った問いを、さらに種を超えて、より根源的なかたちで問いかけようとする『不滅のあなたへ』なのである。

 

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