つぶやきコミューン

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ヤマザキマリ×とり・みき『プリニウス 后

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

 

 

古代ローマの世界を想像するとき、どうしても私たちは現代の知識で補正しがちである。あるいは今日の常識と抵触しないもののみで、作品を作ったりしがちである。しかし、それでは歴史の本当の面白さはわからない。歴史の本当の面白さとは、今日の常識から考えればデタラメなことをかつて人々は大真面目に信じていたということである。そして、残念ながら、私たちもまたいつの日か、近い将来、そのような歴史の視線にさらされる運命にあり、この21世紀初頭という時代になんらの特権的な地位はないのである。

 

ヤマザキマリ×とり・みき『プリニウス后の冒頭は、プリニウスたちが磁石の雄と雌を論じるところから始まる。

 

ー雌?

ーうむ…通常は赤みがかっているのが雌で青いのが雄じゃ…

ーへーっ…生きている上に雄と雌もある石なのか…

―ただし雌の磁石は雄に比べると力は早く弱くなる

 

さらにエチオピア人は、毎日蛇ばかり食っており、キイキイと奇妙な音を発して意志を通じ合うといった説を、出会った爺さんはしたり顔で語るのである。

 

さらに、プレミュアエ族に至っては、「頭がなく口と目は胸についておる」とウルトラマンに登場するジャミラそっくりの姿が描かれる。『プリニウス后のカバーに描かれているのも、プレミュアエ族の群像で、なんとその数二十体に及ぶ。ことさら、作者たちが遊ぶまでもなく、当時の人々が信じるもの、彼らが語るものをそのまま絵にすると、史実に基づいた伝記も、ファンタジーの世界に変わってしまうのである。

 

さらに港では、ウミウサギ(アメフラシ)についての講釈が、プリニウスによって行われる。

 

それは猛毒のウミウサギだ!!

そこから離れろっ 

こいつはちょっと触っただけで体がおかしくなるぞ!!

 

ウミウサギに触れようとしたところをプリニウスによってつまみあげられて間一髪難を逃れたガイア。だが、地元のじいさんをそれを易々と素手でつかんで籠へと放り込む。その後に何が起こったかは神のみぞ知るである。

 

さて、『プリニウス后に描かれるのは、多くの読者は作者から言われて初めて気がつくのだが、たった二日間の出来事である。

 

その間に、プリニウス一行は地震の被害から復興が進むポンペイを離れ、ネアポリスより船に乗り、島から島へとめぐりゆくことになる。いずれも火山の兆しをとどめる島々…まず立ち寄ったのは、アエオリア(イオリア諸島)のストラボネ(ストロンボリ)である。

 

そして、その旅程において、助さん、角さんを従えた水戸黄門の一行にも似たプリニウス一行は、猫のガイアに、ロバとカラスを加え、ブレーメンの音楽隊の様相を呈してくる。

 

さらに、リアルなタッチで描かれるオッサンとオバサンばかりが突出したプリニウスにおいて、幼いキャラクターが、昔のヤマザキマリの漫画タッチで描かれ、花を添えることになる。

 

 私はまだここであの炎を見ていたい!

 

火山の火を見ると、急に人格が変わるプリニウス。その変貌ぶりは、スタンレー・キューブリックの『博士の異常な愛情』か、はたまたフランシス・コッポラ『地獄の黙示録』におけるマーロン・ブランを彷彿させる。要するに、完全にいかれているのだ。多分、プリニウス自身は、火山に近づきすぎて死に至ろうと本望であろう。だが、周囲の人々、幼い命やブレーメンの音楽隊まで巻き添えを喰うのではと気が気でない。

 

そんな風に、いよいよ佳境にさしかかる『プリニウス后だが、その間にも、ネロの寵愛を独り占めすることに成功したポッパイエの狂乱ぶりもさらにエスカレートするのであった。

 

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