つぶやきコミューン

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成毛眞『情報の「捨て方」 知的生産・私の方法』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略  ver.1.1

 

 

文字になっていない情報をいかに得るか

 

現代社会を生き抜くには情報を集めることが不可欠だが、膨大な情報をやみくもに集めても望む結果には結びつかない。重要な情報を得ようとするなら、そうでない情報を捨てる必要がある。そうした情報の取捨選択の基本を教えてくれるのが成毛眞『情報の「捨て方」 知的生産・私の方法』(角川新書)である。

 

まず著者は「情報」を、インテリジェンスインフォメーション、そしてデータの三種類に分ける。この区別こそ、他の本には書かれていない重要部分の一つだ。インテリジェンスとは、一般には公にされていないようなインサイダーの情報であり、全体の7%程度の人しか知らない情報のことである。これに対し、インフォメーションはあまねく社会に遍在し、誰でも入手可能な情報を言う。差をつけるのは、インフォメーションではなくインテリジェンスをいかに手に入れるかである。

 

 人の口から発せられる情報は、電波にでも乗らない限り、届く範囲が限られています。だからインテリジェンスたりえます。

 しかし、可視化された情報はコピーが容易で拡散しやすいという特徴があります。紙に書かれたらその情報の価値は激減する。こうなると、もはやその情報はインテリジェンスではなくなるのです。p23

 

データはというと、たとえば誰がいつ入社し、いつ移動したとかいった情報のことで、インフォメーションのように、時間経過とともに価値が低減することはなく、データとしての価値を保ち続ける。

 

結局のところ、他と差をつけられるような情報、インテリジェンスを手に入れるには、人に会うしかないのである。

 

 情報はどこにでも転がっています。街もネットもテレビも雑誌も、いたるところ情報だらけです。

 しかし、ここでいう情報の中には、前の章で触れた「偏差値65以上の情報」ではあっても、ビジネスで他を圧倒するような、言うなれば「偏差値75」の情報ではありません。

 では、偏差値75の情報はどこから手に入れられるかというと、人からです。その人が持っている秘密を教えてもらうことでしか、とんでもないお宝情報は得られません。p66-67

 

仲良くなるといい情報が得られる。いい情報を得ようとすれば、飲み会でも何でも機会を利用して、多くの人と仲良くすることしかない。けれども、そこで業界研究などといやしい真似はせずに、ひたすら面白い話をし、面白い話を聞くというのが著者のスタイルである。そうすることではたしてその話題がヒットするかどうかの検証もできるのだ。

 

どのような情報を捨てるべきか、一つの基準はアウトプットしたくない情報は最初から入れないことである。

 

 こういった情報を仕入れ、さらに深堀りすることは時間の無駄でしかありません。自分で「出さない」(出す予定のない)情報は、最初から「入れない」のです。pp75-76

 

時間と情報

 

言語化されていない情報の一つに場所がある。場所に出かけることで、情報を得ることができるが、どのような場所に出かけるべきか。場所に変化が生じるとき、その場所の情報としての価値は高まる。しかし、重要なのは、多くの人がアフターを追いかけがちだが、アフターの前のビフォアを押さえること重要であると著者はいう。変化が生じた後のアフターはかなりの期間その状態でとどまり続け、誰もが知るようになり情報価が低い。しかし、ビフォアもはや戻ることはないし、多くの人が日々忘れてしまうものだから価値がある。著者がアメリカとの国交正常化前のキューバを訪れたのもそのためである。

 

 もし国交が正常化したら、キューバはその独自性を失い、カリブ海のありふれた国になるでしょう。

 私がこのタイミングキューバを旅行先に選んだのは、ありふれた国になる前のキューバを見ておきたかったから。ありふれていないキューバを見ておくことで、その後のキューバとの差を実感したかったからです。ビフォア・アフターのビフォアを見ておくために行ったと言ってもいいでしょう。p46

 

本書の多くの部分で、単体の情報ではなく、時間軸への位置づけによって情報の価値は決まることが繰り返し述べられている。時間とともに生じる変化をとらえることができるのは、何も遠く離れた国だけではない。ふだん私たちが歩いている街でも、小さな変化に気づくことがある。いや、気づかなければならない。それを著者は「パトロール」と呼んでいる。

 

 街が代わり映えしないのは、見ている側の問題でしょう。どうせ変化などないだろうと、観察する目を持たずに歩いているから、ささやかな街の変化に気付けないのです。要するに、アンテナがさび付いているのです。p88

 

同じ飲食店に定期的に足を運ぶことで、変化に気づく。そこからその店の今後もも占うことさえ可能である。

 

 行くと、前回との違いに気がつきます。それは、新しいメニューであったり、照明や音楽で会ったり、インテリアであったりします。その変化がゆるやかな店は。たいてい、長続きします。劇的な変化を繰り返す店は、すぐになくなってしまうことが多いようです。p89

 

ニュースを見る場合でも、はたしてそうした出来事が珍しいのか、ふだん普通に起こっていることなのかを調べる必要があるだろう。

 

ノイズが生むコンテキストという情報

 

著者が実践している情報収集の柱の一つは、「ネタ帳」である一枚のPCファイルにキーワードのみ記録してゆく方法である。後になって見返したとき、その単語で検索をかければ、その情報を展開することができるからである。このキーワードは、後から整理を加えたりはしない。時間軸上にあるものを整理し直すことで失われる行間の情報があるからだ。これは、本書の122pで紹介している野口悠紀雄の『「超」整理法』の応用ということもできるだろう。

 

 このファイルには、「メンデル」など、たった一言のメモもあります。他人が見たらなんのことかわからないと思いますが……私もわかりません。でも、これで大丈夫。「メンデル」というキーワードをネットで検索すると「あ、そうだった。これこれ」と思い出せるからです。「ネタ帳 .docx」はネット検索のためのキーワード集でもあるのです。

 なので、テーマごとにファイルを分割することはしません。経済ネタも科学ネタも歌舞伎ネタもすべて同じ「ネタ帳 .docx」に書き込みます。並べ直しなどの整理はしません。整理してしまうと、そこに書いた文字以上の情報が失われるからです。p108

 

情報は、その周囲のコンテキストが豊かであればあるほど、記憶しやすくなる。

 

『情報の「捨て方」』は、いわばS/N(シグナル/ノイズ)比を高める方法についての本なのだが、その柱となっているメモの取り方が、いわばノイズを活用する方法であるのは興味深い。真っ白いメモ用紙は、相互に区別がつかない。しかし、カラフルな広告の紙の上に赤いマジックでメモを書けば、それだけ印象に残り、思い出しやすくなる。これが成毛流「太赤マジック+裏紙ノート」メモ法だ。

 

 じつは私は、忘れてはならないことをメモする必要が生じたら、わざわざ文字やイラスト、写真が印刷された紙を使います。具体的には、雑誌の裏表紙や何かが印刷されたコピー用紙です。そこに、忘れてはならないことの要点のみを記します。p105

 

さらにそこに「☆」や「◎」のような記号を加えておくと後でメモした場所を思い出す手がかりになるという。

 

  メモをした場所を忘れるということは、メモした内容を忘れるということです。そうなったとき私は、メモした内容そのものではなく、どんな紙に書いたかを思い出すことに努めます。どんな写真があったか。どんなイラストがあったか、そして自分でどんな記号を書いたか。

  そうやって、「白い車の写真があったな」とか、「星を2つ並べて書いたな」などと、本当に思い出したいことの周辺をビジュアルとして思い出すことで、連想ゲームのように「あっ、そうだ。山田さんに17時までに連絡だ!」と思い出すのです。白い紙に文字だけでメモしていては、絶対にできない思い出し方です。p106

 

『情報の「捨て方」』には多くの方法やチップスが書かれているが、その中でも柱になっているのは、以上の三点である。ここで横断的に抽出した方法を実践するだけで、情報収集の質を格段にアップさせることができるはずである。さらに本格的に実践したい人は、直接本書にあたられたい。

 

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