つぶやきコミューン

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梅原大吾『勝ち続ける意志力 世界一プロゲーマーの「仕事術」』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

  Kindle版

 

梅原大吾は2004年に17歳でゲームの世界で頂点を極めた男だ。いったんゲームの世界に別れを告げ、再びゲームの世界にカムバックし、再度世界一になるまで∸『勝ち続ける意志力 世界一のプロゲーマーの「仕事術」』(小学館101新書)には、その間の人生の試行錯誤や葛藤もすべて収められている。単に勝つだけなら、一つの勝ちパターンに身につける、相手の弱点を突くなどのやり方も有効かもしれない。しかし、長期にわたって勝ち続けるとなるとそのやり方では勝ち抜くことはできないと梅原大吾は言う。

 

 とりわけ重要なのは、本書に書かれていることは、ただ勝つだけでなく、「勝ち続ける」ことに主眼を置いているという点である。なぜ、「勝つ方法」ではなく「勝ち続ける」方法なのか?両者は似て非なるもので、時として相反するほどに大きな隔たりを見せる。「勝つ」という言葉は、「結果を出す」と言い換えることでよりイメージしやすくなるかもしれない。「結果を出す」ことと「結果を出し続ける」ことは根本的に性質が異なる。

 

結論から言えば、「勝つことに執着している人間は勝ち続けることができない」ということになるが、これはどういう意味だろうか。

 

まず「勝ちパターン」、自分のスタイルにこだわることに執着しては勝ち続けることができない。

 

 ほとんどの人は、実力がつけばつくほど自分なりのスタイルというものを確立してしまう。

 例えば、攻めるのが好きな人はKOで勝ちたがるとか、守るのが好きな人はとことん引いてタイムオーバーになってでも勝とうとするとか、自分の得意な技ばかりを使う人が多い。するとその形に縛られてプレイの幅が狭まり、結局は壁にぶつかってしまう。

 

周囲から褒められ、その勝ちパターンに縛られる場合も同じだ。スタイルなきスタイルこそが最強であるべく、固定的なスタイルは極力捨てるーそれこそが梅原大吾が肝に銘じたことなのだ。

 

勝ち続けるためには、勝ってもおごらず、負けても卑屈にならない、絶妙なバランスの心の状態が求められる。

 

センスや運、一夜漬けの勝利ほどはかないものはない。必要なのは試行錯誤の絶対量だ。

 

 自分が勝てたのは知識、技術の正確さ、経験、練習量といった当たり前の積み重ねがあったからで、得体の知れない自分という存在が相手を圧倒して手にした勝利などでは決してないということ。

 

相手の弱点をつくことも、その相手にしか通じない戦法だ。

 

 本来的な強さとは、相手の動きが読めてもそこを突かず、己の実力で勝つことでこそ磨かれていくものだ。読めるからといって、それで勝てるからといって『人読み』に頼り、技術や知識を底上げすることを怠ると、別の強い相手との対戦で必ず苦戦を強いられることになる。

 相手が変われば、裸の自分がいることに気づくはずだ。

 

自己啓発書の中には、梅原大吾が退けている勝ちパターンを推奨しているような本も少なくないが、梅原大吾がそのゲーム人生の中でたどりついたのは、それよりも一段上の、より普遍的な「勝ち続ける」方法なのである。

 

本書の中には、なぜ幼くしてゲームの世界に飛び込み、それに人生を賭けるようになったのか、さらにいったんゲームの世界を離れ、麻雀で天下をとろうとしたのか、さらには手ごたえを感じながらも、その世界を極めることなく、介護の世界に飛び込んだのか、等身大の人間の苦悩と試行錯誤が隠しだてすることなく語られる。格闘ゲームの世界は、同じゲームであっても将棋や将棋のようにエスタブリッシュメントで、頂点さえ極めれば生活の安定も保証される世界ではない。いわば道なき道を歩いてきた苦悩が本書全体には綴られている。

 

それでも、梅原大吾はゲーマーであることを止めず、ゲームの世界に帰って来た。

 

その時、ゲームしか経験していなかった時代よりも、確実にステージアップした自分を梅原大吾は感じる。

 

ちょうどNBAのスーパースターだったマイケル・ジョーダンにおけるプロ野球転向がそうであるように、人生には回り道のように見える出来事も、無駄ではないのだと彼は信じるのである。

 

 ゲームをやめた。麻雀もやめた。人生で初めての挫折も味わった。それでも、なんとか見つけた介護の仕事をしながら、新たな気持ちでゲームを再開したとき、生まれて初めてゲームに感謝する気持ちが芽生えた。

 心から好きなのに、堂々と打ち込むことのできなかったゲーム。

 いまの友達と巡り会わせてくれたゲーム。

 僕を世界チャンピオンの高みに導いてくれたゲーム。

 そして、諦めざるを得なかったゲーム。

 結局、僕に何かを与えてくれるのか、奪っていくのか。その正体すら分からなかった曖昧な存在が、初めて僕に微笑んでくれたような気がした。

 

ゲームの勝負の数は何十万回、その中でつかみ取った教訓は、そのままビジネスでも通用するものだろう。というのも、ビジネスの世界同様、一つのゲームが流行る時間は限られており、ゲーマーが生き延びるためには新しいルールを持ったゲームを受け入れ、習得し、技術に磨きをかけるしかない。

 

 ゲームの世界はある程度の周期で新しいタイトル、つまり新作が出る。ルール変更や新制度の導入、グラフィックの向上や仕様の簡略化あるいは煩雑化のため、競技の本質が変わることも少なくない。だから持ち前の技術が、あるゲームでは通用するが別のゲームではまったく通用しない、ということは日常茶飯事だ。

 

一過性の勝利ではなく、継続的な勝利のためには、ヴィジョンを持った継続的な努力が必要だ。それこそが天才と呼ばれる人間の正体であり、それを才能のせいにしない人間だけが、この「天才」を手に入れることができるのである。

 

PS 1月26日まで【30%OFF】小デジ!2016年売上ランキング ベスト300(1/26まで)で、小学館のKindle版電子書籍の一部タイトルが30%オフとなり、本書も含まれています。ベスト300には、さらに2冊梅原大吾関連の本が含まれています。

 

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