つぶやきコミューン

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新海誠・佐伯ミズ『ほしのこえ』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

 

 

新海誠原作、佐伯ミズ漫画の『ほしのこえ The voices of a distant star』は、新海誠のアニメーション映画『ほしのこえ』のコミカライズである。ストーリーのあらましは変わらないが、原作のアニメーション自体が25分の短編だったこともあり、人物の周囲に回り込んでアニメーションで省略された部分まで補い、よりわかりやすいストーリーになっている。

 

2046年高校進学を前に、人類が火星で遭遇した地球外生命体タルシアンの調査隊に加わった長峰ミカコ。地球に取り残され、高校進学を果たした友人の寺尾ノボルは、彼女とメールで連絡を取り合っていた。しかし、ミカコの加わったリテシア艦隊が地球から遠く離れた惑星へと向かうにつれ、メールが到着する時間はしだいに長くなるのだった。

 

ミカコの周囲では、時に激しいタルシアンとの戦闘が行われるが、一方ノボルは授業を受け、部活動で剣道部に加わり、普通の高校生活を送り続ける。そんなとき、ノボルの前に現れた一人の女生徒、真枝若菜。どこまでノボルとミカコは、ピュアな恋心を貫くことができるのだろうか。

 

宇宙時代においては、亜光速飛行を行えば、相対性理論によって、地球上の時間と宇宙での時間にずれが生じる。けれども、新海誠は、それを淡々とした日常の延長として描きだそうとする。地球外生命体、ワープ航法。日常と非日常が当たり前のように交錯する宇宙時代においては、過酷な運命が恋人たちを見舞うが、それを甘受しながら生きていく彼らの感性の中に、この物語の切なさがある。

 

ねえ ノボルくん……

私たちは……

宇宙と地上に引き裂かれた恋人たちみたいだね

 

学校生活を続けるティーンエージャーを見舞う正体不明の敵、戦う少女という設定は『新世紀エヴァンゲリオン』そのものなのだが、他方男子の方が通常の高校生活を地球で続けるという単身赴任ドラマに、新海誠のひねりがある。佐伯ミズの描くキャラクターも、長峰ミカコは、スリムにした綾波レイのようなヘアスタイルや制服の持ち主である。あたかもノボルとの絆を確認するかのように、宇宙の彼方でもミカコは制服を着続けているのだ。

 

佐伯ミズの繊細なタッチのキャラクターは、新海誠の淡々としたストーリー展開とほどよくマッチしているが、家族物や恋愛物が十八番の佐伯に、SF設定で宇宙でのバトルを描くのは荷が重かったようで、末尾の四コマ漫画でもそのことをネタに自虐的なギャグを飛ばしている。アニメがすでに存在している以上、それをなぞってメカの形は描くことができるのだが、いかんせん宇宙でのバトルシーンに関しては、動きが乏しく、ドラマチックな演出も今一つだ。しかし、逆にそれが淡々とした新海誠の世界を強調し、単なるエヴァの亜流に終わらない魅力を本作に与えているようにも見える。

 

あまりにも短いアニメーションに飽き足らない『ほしのこえ』のファンにはこのコミック版がお勧めである。おそらく、ミカコやノボルのキャラクターも漫画版の方が美しく、多くの人の好感度は高いにちがいないだろうから。

 

PS こちらは大場惑によるノベライズ、ディテールに関しては一番詳しく原作の絶好の解説本にもなっている。

 

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