つぶやきコミューン

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青木真也『空気を読んではいけない』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

Kindle版は9月29日までの期間限定で50%オフのセール中。

 

『空気を読んではいけない』(幻冬舎)は、格闘家青木真也の格闘技哲学の集大成となる一冊である。

 

その哲学は、恐ろしくシンプルで無駄がなく、タイトル通りの一貫したロジックで貫かれている。

 

驚くのは、「PRIDE」「DREAM」を渡り歩き、最近では桜庭和志をTKOで下すなど日本の格闘技界のトップファイターとして君臨する青木が、自分を凡人と位置づけ、それを基準に、格闘技哲学を形成している点である。

 

凡人は、人と同じことをやっていたのでは、強い相手に勝つことはできない。どうすればいいかと言えば、相手の知らないような技を身につけ、磨きをかければ、実力が上の相手にも勝つことができる。だからどんどん新しい技を身につけるようにした。いわばニッチを狙った成功哲学である。

 

 みんなと同じやり方で練習をこなしても、伸びしろなんかたかが知れている。誰もやっていない技を、人知れず突き詰めるからこそ、予想できない進化をするのだ。

 

しかし、日本的な組織では、たとえ試合で上位に立つことができようと、そのままポジションを占めることができるわけではない。組織の一員として認められるためには、みなと同じことをしなくてはいけない。

 

そんなわけで、青木は柔道部から除名された。

 

空気を読んではいけない―――言うのは簡単だが、学校であれ、会社であれ、ほとんどの組織ではそれを徹底すると孤立する。孤立しても構わない。友達も要らない。タニマチも要らない。

 

 友達という存在がなければ、人間関係の悩みを抱えることも少なくなる。友達なんて持たずに、自分の思ったように生きる。そうすることで、やるべきことに集中できる。

 

しかし他にやりたいものがない以上、格闘技のプロとして食ってゆかなければならない。とかく美談にされがちなアルバイトをしながら、格闘技をやるといった生き方を青木真也は認めない。

 

 僕からすればアルバイトを続けている選手たちは、プロ格闘家ではないと思っている。厳しい言い方をすればば、フリーターが格闘家の顔を持っているだけ。

 

プロとして生計を立てられること。そのために、大事なのは交渉を人任せにしないことだ。なぜならそこで自分の価値が決定されるから。アメリカの「UFC」に進出した日本選手たちも、不本意な条件をのんで戦い続けた結果、思うような結果を残すことができず、ボロボロになったのだ。ビジネスマンのように、セルフマネジメントをしっかり行うことが格闘家にも求められるのだ。

 

二度も団体が潰れることで、それまでトップに君臨しても、高額なギャラも、交渉の結果得た月給も、次の月からは払われなくなるという苦渋を経験した。

 

強くなること、いい試合をすること、オンリーワンの付加価値を持つこと。

 

格闘家として生き延びるためには、何をすべきか。朝から晩まで考えに考え、試行錯誤を続けた結果がここにまとめられている。

 

すべての結果を自分のせいと考えること。人任せにしないこと。試合が判定に持ち込まれることも、審判に判断をゆだねることである。だからできることなら文句のつかないような勝ち方をしたい。

 

格闘技にすべてを賭ける生き方を自分は選んだ。だから、部屋も徹底的に断捨離し、関係ないものは何でも捨てる。友人もいらない。車も要らない。女も要らない。頭角を現す前に、他のものを同時に得ようとする生き方を青木真也は否定する。

 

試合で大事なのは、殺すという気迫と同時に、殺されるという恐怖を同時に持ち続けることであると青木は言う。

 

勝つならば負ける覚悟。刺すならば刺される覚悟。折るならばおられる覚悟。

総合格闘技の試合でも、両極の覚悟を持たない選手は相手として怖くない。

殺す気迫とともに、殺される恐怖を持て。

 

前者だけではダメなのだ。テンションをやたらとハイに持って行ってよい試合ができるだろうか。

 

冷静な相手の前には早晩隙を露呈し、そこを突かれて、玉砕するのがオチだ。格闘技とは、結局のところ相手のミスを引き出すための戦いなのだから。

 

だから、平均台の上の体操選手のような用心深さこそ必要である。試合前に恐怖を感じないような鈍感な選手は決して強くなることができないのである。

 

『空気を読んではいけない』は、一種孤高の哲学であり、万人向けとはゆかない狭き門の哲学かもしれない。しかし、組織になじみ、染まることができない人にとっては大いなる福音書である。こと格闘家やスポーツ選手に限らず、フリーランス、個人事業主として生きようとする人は、背中を押したり、軌道修正したりするための多くのヒントを得ることができるにちがいない。そして会社や学校などの組織で、周囲とは一線を引いた生き方をあえて貫こうとするときに、何をしなければならないかも教えてくれるのである。

 

 フリーランスは保障もなく不安定な立場とよく言われるが、実は不況に一番強いと思っている。組織にぶら下がることなく、安定を捨ててこそ、本物の強さが得られる。

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