つぶやきコミューン

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須黒達巳『世にも美しい瞳 ハエトリグモ』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

 

 

私たちが家の中で遭遇する身近な隣人ハエトリグモ―あまりに小さく、色も地味なので、ほとんど気にもとめないこの生物が実は美しい瞳の持ち主で、多様な色彩と形態を持った何百種もからなることはほとんどの知られていない。その多様な種類と未知の生態を美しいカラー写真で紹介したのが、須黒達巳『世にも美しい瞳 ハエトリグモ』(ナツメ社)である。

 

ハエトリグモを正面から見ると、前に二つ大きな主眼(前中眼)があり、その脇に小さな前側眼がある。この四つの目がさながら人間の顔のように見えるのである。主眼が大きな鼻で、前側眼が目であるかのように見ることもできれば、主眼が目で前側眼を耳のように見ることも出来る。目はさらに後中眼と後側眼が二つずつ頭胸部の側面にありまるで戦車についたセンサーのようであり、ハエトリグモには合わせて8つの目がある。主眼の下は賢者のひげのようにもじゃもじゃしていてそこに同じようにもじゃもじゃした触肢がある。この触肢の色や形も実に多様なのだ。

 

通常家庭で見かけるハエトリグモは、最もグローバルな種であるアダンソンハエトリと、関東以北の木造家屋でよく見かけるミスジハエトリ(いずれも体長6mm前後)と西日本でメジャーなチャスジハエトリの三種だが、日本全体では100種以上、世界では500種以上が知られている。その中には頭部に横一文字のストライプのあるマミジロハエトリや、頭胸部の淵にメタリックブルーの鮮やかなラインの入るアオオビハエトリ、肢は8本なのにアリそっくりなアリグモ、体長3mmながらオレンジ色の鮮やかな脚を持つカタオカハエトリなど、海外種では腹部に派手な赤、青、黄、緑の四原色の模様のあるピーコックスパイダーなど、十人十色の形とカラーリングで、しかもその顔がキャラクターのようにかわいく、目を楽しませてくれる。さながら、ガンダムのザクの図鑑を見るかのようである。

 

ハエトリグモは、他のクモとは異なり、巣をつくらず素早く移動し、抜群の視力とジャンプ力を誇る。捕食力や闘争本能も強いので、江戸時代にはハエなど他の虫をつかまえさせて遊ぶ「座敷鷹」という遊びも流行した。現代でも神奈川県や千葉県ではネコハエトリ同士を戦わせる「ホンチ相撲」があるし、海外でもFinghting Spiderと呼ばれるマスラオハエトリを戦わせる遊びがある。

 

著者は、学生時代からハエトリグモの研究をしていたもののその魅力にとりつかれ、大学院卒業後「フリーター」として生物調査や研究関係のアルバイトで資金を貯めては、日本全国のハエトリグモを採集・撮影することに賭けてきたいわば筋金入りの「ハエトリグモ」トリビトであり、マスラオハエトリも著者の命名である。

 

動きの速いハエトリグモは撮影も難しいが、その撮影方法も連写のできる一眼レフ使用で、90mm〜100mmのマクロレンズ、絞りはf8、シャッター速度は1/250秒など、細かいテクニックも伝授され、親切な構成になっている。

 

ハエトリグモは小さく、正面からの顔を見る機会も少ないが、この本に接することで、それまでスルーしたり、忌避したりしていたハエトリグモの未知の魅力に取りつかれる読者もいるかもしれない。ハエトリグモは身近な自然の驚異を教えてくれる「センス・オブ・ワンダー」の伝道師なのかもしれない。

 

 

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