つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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安野モヨコ『監督不行届』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

 

 

『シン・ゴジラ』の大ヒットによって、『新世紀エヴァンゲリオン』に続き最も注目を集める映画監督となった庵野秀明、その家庭人としての生態を、妻であり漫画家である安野モヨコの視点から描いたギャグマンガが『監督不行届』である。この作品は、2004年に発表されたものだが、一昨年にテレビアニメ化され、再度注目を集める人気作品となった。

 

カントク君こと庵野秀明と結婚することとなったロンパースこと安野モヨコ。彼女が目にする夫の姿は、完全なるオタクそのものであった。ふだんでもウルトラマンのポーズを繰り返し、アニソンを口ずさむ。ヒーロー物や特撮物、アニメのDVDBOXやLDを次から次に集め、フィギュアを棚の上に飾り、食玩を床の上にまき散らす。その生態は、どう見ても大人ではなく、大きな子どもである。結婚式のウェディングドレスのコスプレに合わせるのも、仮面ライダーのスーツという徹底ぶり。何とか、人並みの人間にしたいと望むロンパースだが、悲しいかな、漫画家ゆえについアニソンにも反応し、いつのまにかそのペースにひきずりこまれてしまう。カントク君の望みは、「のこり一生かけておたく教育をほどこし死ぬ頃には立派なおたくの嫁にする」ことなのだ。


時に、ロンパースは上から目線でカントクくんの幼児性を笑いものにしようとするが、つい隙を見せると逆にオタクになったことを指摘され、笑いものにされ落ち込んでしまう。しかし、それでも忠告が実を結び、結果となって現れることもある。第伍話では一気に体重が73キロ(身長180センチ)まで減量し、仮面ライダーのスーツが着れるようになったとカントクくんも喜び、そして、一軒屋を買おうというロンパースの声に、当初は面倒くさいと言っていたものの、お家が広くなったらアレができるよと乗せられて、鎌倉の古民家を買い求めてしまうのである(第拾七話)。さらに最終話では、ロンパースがおそるおそる猫を飼い始めると、この子はウチの子ですっ!!と目をうるうるさせながら、庵野・マイティ・ジャックと名づけ溺愛してしまう。そうして、猫のために、次から次へと金に糸目をつけず買い物をしてしまうのである。

 

作品中のカントク君は、新世紀エヴァンゲリオンの碇ゲンドウを、不潔でだらしなく、メタボ体形に崩したようなキャラだが、猫口が特にキュートで愛されるキャラにまとめあげている。その生態は、島本和彦の『アオイホノオ』の庵野とも、隙の有無こそまるで異なるものの、完全に一致している。対するロンパースの方は、体形服装とも幼児化したキャラクターに自分を落とし込むことで、夫婦物で処理に困るエロの要素を毒抜きし、万人向けのほのぼのとしたユーモアと、オタクワールドの百科全書的な世界へと集中させることに成功している。

 

『監督不行届』は全21話からなるが、各話のタイトルは『新世紀エヴァンゲリオン』同様の黒バック白抜きフォントで統一され、その世界の陸続きをアピールさせ、さらに巻末には、庵野秀明へのインタビュー「庵野監督カントクくんを語る」と、全百数十項目にのぼる「用語解説(オタク編)」が収録され、「ダブルアンノ」オタクワールドのデータベースとして重宝する。まともに目を通すと読み通すのに本編よりも時間がかかりそうな充実ぶりである。

 

『監督不行届』は、『シン・ゴジラ』を契機に再度庵野ワールドにどっぷりと浸ろうと考える人には最高のマニュアルであるだろうし、オタク同士のカップルにとっては転ばぬ先の水先案内的な本、そしてオタクを冷ややかな目で見る一般読者にとっても、笑って泣ける最高のラブコメなのである。

 

PS 本書は、紙の本だと取り寄せるのに時間がかかる上、結構値段が張るが、Kindleだとリーズナブルな価格設定、この感想もKindle版によるものである。

アニメDVD(原作コミック付)

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