つぶやきコミューン

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NHK「ブラタモリ」制作班『ブラタモリ 1 長崎・金沢・鎌倉』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

栗本慎一郎の経済人類学的都市論「光の都市、闇の都市」や、中沢新一の「アースダイバー」など、都市の形成のミステリーを歴史的に解明する試みは、私たちの心をひきつけてやまないが、それを誰もがわかる平易なレベルに落としこみながら、しかも新鮮な発見があるのがNHKのテレビ番組の「ブラタモリ」。NHK「ブラタモリ」制作班監修『ブラタモリ 1 長崎・金沢・鎌倉』(角川書店)はその待望の書籍化第1弾である。

 

「ブラタモリ」は、誰もがなじみのある観光地や歴史的都市をタモリとスタッフが訪ね、現地を歩き回る中で、その都市や場所がつくられた手がかりとなる地形や遺跡から推理を行い、さらに現地の碩学・専門家のサポートによって本格的に謎を掘り下げ、解き明かすというかたちで進行する。そして、土地の謎を解き明かす探偵役こそが日本坂道協会副会長で、土地の高低差には人並外れた感覚を備えたタモリというわけである。

 

事前に地名こそ明かされるものの、タモリにも訪れる場所の詳細は伝えられることがなく、一種のブラインドテスト感覚。ぶっつけ本番で悪天候も厭わず撮影決行というのが、ブラタモリの撮影スタイルである。だから様々なハプニングがあり、予定通りに進まないこともある。

 

 予習しようにも、スタッフは何も教えてくれないんですよ。「長崎に行きます」とか、それだけで。ひどいときなんか車のカーテンも全部閉めて、絶対外を見せないようにして。徹底的な秘密主義ですね。用意も何もできたもんじゃない。でも、確かにそのぶん驚きがあって面白いです。知らないことばっかりでね。そのうえ、マニアックな専門家が次々に現れて、漠然とした疑問がどんどん解けていくんですから。これは本当に、ある意味ミステリーを読んでいるような感じですよね。p5

 

「ブラタモリ」は、NHKとタモリのネームバリュー、複数のスタッフと専門家の力を活用することで、個人の住宅から、地下や建物の奥に隠された施設や米軍基地に至るまで、通常取材不可能なところまで足を運び、それを映像におさめ、放映できるのが強みである。この一巻におさめられた三つの都市に関しても、長崎の道路下に埋もれた暗渠と橋を訪ねたり、江戸時代に作られた金沢市地下の用水に通じる横穴へと入り込んだり、極楽寺検車区で江ノ電最古の車両”タンコロ”に乗りこみ、走行させたりするのである。

 

一つの都市に関する放映時間は、一回もしくは二回で45分から90分であるが、事前の調査から要する歳月は三ヶ月程度、それによる発見は、専門家やマニアも注目の的である。

 

かくして浮かび上がるのは、本来海に突き出た半島の周囲が埋め立てられ、しだいに山肌にあった段々畑に住居が建てられてできた坂の街長崎であり、大藩であるがゆえに徳川家よりの圧迫に備え、作られた惣構、火事に備え犀川から城まで長大な用水をひいてつくられた街金沢、ちょうど鶴が丘八幡宮の一の鳥居がある砂丘の頂あたりから発展し、そこからさらに山裾のいくつもの谷を切り拓いて武家屋敷や寺が築かれできた街鎌倉といった都市の肖像である。実際には、さらに紆余曲折した街の複合的な歴史が紹介されるわけだが、中には今でもその遺物が手に入れることができるような場所もある。

 

鎌倉の材木座海岸に落ちていて拾うことができるのは「かわらけ」という鎌倉時代の土器の破片や、江戸時代の陶磁器の破片。和賀江嶋築港跡では、鎌倉時代に港を築くために用いられた無数の丸石がごろごろと放置されている。

 

ブラタモリは過去と現在を、単なる知識レベルではなく、その場所を歩いたり、触れたりする身体感覚によって結ぼうとする試みなのだ。

 

「ブラタモリ」は見逃した回を見たり、あるいは詳細を確認するためにDVD化が望まれる番組の一つだが、現地を訪れるときにはこのような本の形の方がハンディで活用しやすいだろう。ただ、タモリによるのではなく、スタッフが選定した場所に関しては、かなりの当たり外れがあると思う。自然の地形の変化は、人間の手によってできた変化ほどは、ブラタモリ的に面白くないし、何世代、何百年もの時間が経過した古都に比べれた歴史の浅い街もネタが少なくて、構成に無理がある。その点、この第一巻におさめられた三つの街は、観光地としてのメジャー度も、都市形成にかけられた歳月と段階の多さといい申し分のない選定であると言えよう。

 

PS 実際の書影はこんな感じ。カバーと同じ紙質の大きめの帯の上にカラー写真がある。

ブラタモリ1

関連ページ:

タモリ『新訂版 タモリのTOKYO坂道美学入門』

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