JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略
第1巻、第2巻と、厳しい地獄のような練習風景こそあれど、その他の面ではおおらかで、ほのぼのとした笑いと人情あふれる学園生活を謳歌しているかに見えた増田俊也原作、一丸漫画の『七帝柔道記』だが、この3巻ではがらり雰囲気が一変し、ピリピリとした緊張感が第3巻全体を覆い尽くす。というのも猛暑の中京都で七帝戦が開かれ、そのメンバーとして1年目の増田も出場することとなったからだ。
相手は同じ学年とは限らない。3年目、4年目の選手とあたることだって普通である。そして、七帝戦は何よりも15人のメンバーがそれぞれの責任を果たさなければならない総力戦なのだ。立ち技で一本をとりにゆく抜き役は相手に引き分けに持ち込ませないことが必須だが、増田たち分け役のメンバーはただ力上の選手を相手にしても、カメの姿勢で守り抜くことが要求される。はるかにキャリア上の相手に増田のカメは通用するのか。
ほんの数年前まで、七帝戦二連覇をしたこともある北大柔道部だが、このところ最下位に甘んじていたし、他校からも「北大は眼中にない」とのあなどりの声が聞こえてきた。ここは何としても一勝したい北大柔道部だが、なんと4年目の岡田が練習中にけがをし左腕を痛めてしまう。抜き役が期待された岡田に本来の動きが期待できないとなると、途端に北大柔道部は厳しい状況に置かれる。その前に立ちはだかるのは、阪大、そして名古屋大学だった。
戦いを通して、一人一人の個性が、そして成長がくっきりと浮かび上がる。七帝戦メンバーに選ばれた増田は、そして竜澤、沢田はいかに戦い抜くのか。
悲願の最下位脱出を、増田たちは北大柔道部は果たすことができるのか。重苦しい試合が続く中、読者は一喜一憂心を揺さぶられ続ける。この七帝戦が終れば四年目の部員は引退を余儀なくされる。彼らにとっては泣いても笑っても最後の試合、涙なしには読み通すことができない第3巻である。
関連ページ:
増田俊也・一丸『七帝柔道記 2 』
増田俊也・一丸『七帝柔道記 1』