つぶやきコミューン

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ヨシダナギ『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略 

 

 

子供のころ、アフリカ人に憧れ、いつかアフリカ人になりたいと思った女性がいた。親からそれは無理なことだと言われてもその夢をあきらめきれずアフリカ全土を旅し、単に観光客扱いされ、記念写真の数枚を撮って帰るのではなく、相手と同じ裸の姿となりながら、部族に溶け込み、写真を撮り続ける。『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)は、そんな女性カメラマンヨシダナギのアフリカ滞在記である。

 

驚くのは、せいぜい一つか二つの国をピンポイントで訪問しているのではという事前のイメージを覆し、普通訪れないような実に多くの国を彼女が訪れていることだ。章ごとに登場する地図上の訪問先の国が、アフリカ大陸の周りをぐるぐると回っている。2009年にアフリカ東部のエチオピアを訪れたのを皮切りに、2010年にはアフリカ西部のマリ、ブルキナファソ、2011年にはアフリカ東部のジプチ、エチオピア、スーダン、ウガンダ、西部のガーナ、2012年には中部のカメルーン、チャド、2013年には南部のナミビア、2014年には東南部のタンザニアという風に、文明化された地中海沿いの国や南アフリカ以外のアフリカを全方位的に訪問しているのだ。

 

長年の夢に備えて、語学的・地理的・歴史的勉強を積んだわけではない。片言の英語もあやしいレベルで、当然フランス語やアラビア語は話せない。性格も引きこもり気味で外出することはめったになく、日本にいるころも、飛行機に乗ったりするのも大騒動であった。結局のところ、頼りになるのは必ずしも言語的とは限らない、コミュニケーション能力なのである。

 

男勝りの性格で鳴らし、何が来ようと度胸が据わっているというわけでもない。どちらかというとヨシダナギは泣き虫で、本書の至るところで泣きまくる。だが、それが以外な武器となる。というのもアフリカの人はみな、自分が悪者になるのが嫌いだからだ。

 

あるのは、無防備に心を開き、ときに感情を露わにしながら、身も心もさらけ出す魂のふれあいだけである。

 

そうすると、あちこちの村で、子どもが後についてまわり、手をつなぎ、みんな友達になってしまう。スーダンのおばあちゃんはあなたは私の娘なのだからいつでもここへ帰ってきてと言った。こんなにも簡単に人と人の心が通じ合えるものなのか。

 

ついには、タンザニアの空港でヨシダコールまで起こるのである。

 

様々な想像を超えるさまざまなおそろしい出来事、おぞましい出来事が本書の中には現れる。エアコンからはイグアナが飛び出し、ハイエナ十匹に取り囲まれる恐怖のパフォーマンスを体験したり、カエルがお尻に向かいジャンプするトイレもあれば、うず高く積もった泥土の沼を得体のしれない生き物がうごめくトイレもある。

 

オシッコを浴びた便器の土が、

グワーンと静かに波打ち始めた。

p175 原文は手書き文字による強調

 

砂利まみれのクスクスをご馳走されたこともあれば、アフリカンペッパーをまるごと食わされたこともある。カメルーンで食べたパスタはひからびたチャパティのような姿をしていた。だが、ラクダの生肉は絶品だったが、やはりその晩下痢に襲われる。

 

アフリカの人も、文明化された外側に近い部分では、下心を持ったガイド、お金をくすねるガイド、賄賂を出さない限り通そうとしない入国審査官など、嫌な部分も少なくないけれど、いったんその中心部に裸の心で飛び込んでみると、奇跡のような世界が広がる。タジポトいう貧しい少年は、周囲の子供がみなお金をねだったヨシダが自分も貧しいと言ったことで、他の仲間たちに腹を立てた。

 

少年は私の手をギュッと握った後、

「貧乏なら、僕ん家でごはん食べよう!

僕ん家も貧乏だけど、インジェラならあるから、

それでもよければお腹いっぱいになるまで

食べていって! 遠慮はいらないから」

と言ってくれたのだ。p132

 

そして、カメルーンでは、原住民のコマ族に溶け込むために、ヨシダは向こうの女性が脱がなくてよいというパンツまでも脱ぎ去ってしまう。やはり、裸になるのも単なるコミュニケーションの手段ではない。それ自体が目的だったのかもしれない。

 

「私はパンツを脱ぎたいのに、

彼女たちがパンツを脱がせてくれなーい!!」

p202

 

アフリカを訪れた人の滞在記は少なくないけれど、国の紹介から初めてその国の自然や歴史遺産、都市などの見どころを順に紹介するというステレオタイプで始まるものが多い。しかし、この本は見事にそのステレオタイプから外れて、アフリカの人々の持つ自然で力強い素朴な魅力を届けることに終始する。そして、それらの本とは逆に、ほとんどの人が自ら再現しようとしてもできないユニークな内容を備えている。

 

しかし、この本を通して、最大の驚きは、アフリカを訪れるたびに強くなる著者ヨシダナギの成長の過程である。そう、『ドラゴボールℤ』の孫悟空同様に、彼女もアフリカでのかけがえのない経験を積むたびに、スーパーアフリカ人となり、スーパーアフリカ人2、スーパーアフリカ人3…と進化し続けているからである。

 

これこそがアフリカの力、『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』はまちがいなくアフリカを好きになれる本である。

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