山本崇一郎『からかい上手の高木さん』1〜3
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略
今、ひそかなブームとなりつつあるコミック、それが山本崇一郎の『からかい上手の高木さん』だ。
そのストーリーは、中学二年生の高木さんがクラスメートで隣の席の西片を、ひたすらからかうというだけの物語である。
一見すると、森繁拓真の『となりの関くん』の男女を入れ替えただけのバージョンのように見える。しかし、関くんの興味は 机の上で展開するお遊びであって、彼の横井さんに対する興味は、あくまでその遊戯の観客としてのものだ。彼女に遊戯ではなく自分を認めてもらおうと頑張っているわけではないのだ。しかし、『からかい上手の高木さん』では、高木さんは様々なテクニックでカムフラージュしているものの、西片に対する好意を隠さない。そして、からかいの舞台は授業中だけでなく、登下校や休日中にまで及ぶ。『となりの関くん』とは異なり、『からかい上手の高木さん』は、れっきとしたラブコメなのである。
高木さんは、長い髪と大きな目がチャームポイントで、たぶんクラスでは一番かわいいレベルの女の子である。そこそこ勉強もできるそんな高木さんが、大してとりえもなさそうだが、純情でうぶな男の子である西片を、授業中も登下校中もからかい続ける。そして、反撃しようとあれこれ策を弄する西片を手のひらで転がすように翻弄し続け、西片の抵抗はつねに失敗に終わってしまう。この年代の女の子の成熟度に比べれば、同年代の男の子ははるかに奥手で子供である。だから、西片に勝ち目はないのだ。
このコミックがなぜひそかなブームになっているかと言えば、同じ缶のジュースを飲んで「間接キスだね」とつぶやくとか、「やっとこっち向いた」と机に伏せながら見つめるとか、「今、二人で一つの傘使ってるこの状況ってなんてなんて言うんだっけ。」とカマトトぶって尋ねるとか、奥手で純情な男の子が、どきどきするような台詞やシチュエーションが満載だからだ。誰も、これだけの頻度や密度で、好きな女の子にやりこめられるなんてことはまずない。だが、あっちの女の子、こっちの女の子にそんな台詞を言われ、からかわれると、やられているにもかかわらず、なぜか嬉しい。そんなときめいた瞬間が凝縮されているのが、『からかい上手の高木さん』である。
第2巻では、初期バージョンの高木さんも描かれているが、そこには小悪魔的な女の子のキャラクターはあっても、西片に対する愛情のようなものは感じられない。単なる早熟な悪女である。そこに、幼さや可憐さ、線の細さを加えた現行バージョンの高木さんのキャラは鉄板である。
『からかい上手の高木さん』の最大の謎は、試験で九十点台をとってしまう高木さんのような才色兼備の少女が、五十点台後半しかとれない平凡な少年の西片に好意を抱くかという点だ。勉強を補うほどにスポーツができるわけでも、長身のイケメンであるわけでも、音楽のような特技に秀でるとか、お笑い芸人のような卓越した話術やコミュニケーション能力を身につけているわけでもない。ただただいじりやすいというだけの男の子。それが一番の美少女に毎時間相手をしてもらえるなんて、現実にはともかく、この世代の男の子の頭では、本来あるはずのない事柄である。
スクールカーストで中程度の男の子が上位の女の子に相手をしてもらえる下剋上、あるはずのない事柄を易々と毎回実現してしまう、そんな現実の殻をかぶったファンタジーだから、『からかい上手の高木さん』に多くの読者、とりわけ中二病を卒業できないかつての男子は萌え続けるのである。
今、ひそかなブームとなりつつあるコミック、それが山本崇一郎の『からかい上手の高木さん』だ。
そのストーリーは、中学二年生の高木さんがクラスメートで隣の席の西片を、ひたすらからかうというだけの物語である。
一見すると、森繁拓真の『となりの関くん』の男女を入れ替えただけのバージョンのように見える。しかし、関くんの興味は 机の上で展開するお遊びであって、彼の横井さんに対する興味は、あくまでその遊戯の観客としてのものだ。彼女に遊戯ではなく自分を認めてもらおうと頑張っているわけではないのだ。しかし、『からかい上手の高木さん』では、高木さんは様々なテクニックでカムフラージュしているものの、西片に対する好意を隠さない。そして、からかいの舞台は授業中だけでなく、登下校や休日中にまで及ぶ。『となりの関くん』とは異なり、『からかい上手の高木さん』は、れっきとしたラブコメなのである。
高木さんは、長い髪と大きな目がチャームポイントで、たぶんクラスでは一番かわいいレベルの女の子である。そこそこ勉強もできるそんな高木さんが、大してとりえもなさそうだが、純情でうぶな男の子である西片を、授業中も登下校中もからかい続ける。そして、反撃しようとあれこれ策を弄する西片を手のひらで転がすように翻弄し続け、西片の抵抗はつねに失敗に終わってしまう。この年代の女の子の成熟度に比べれば、同年代の男の子ははるかに奥手で子供である。だから、西片に勝ち目はないのだ。
このコミックがなぜひそかなブームになっているかと言えば、同じ缶のジュースを飲んで「間接キスだね」とつぶやくとか、「やっとこっち向いた」と机に伏せながら見つめるとか、「今、二人で一つの傘使ってるこの状況ってなんてなんて言うんだっけ。」とカマトトぶって尋ねるとか、奥手で純情な男の子が、どきどきするような台詞やシチュエーションが満載だからだ。誰も、これだけの頻度や密度で、好きな女の子にやりこめられるなんてことはまずない。だが、あっちの女の子、こっちの女の子にそんな台詞を言われ、からかわれると、やられているにもかかわらず、なぜか嬉しい。そんなときめいた瞬間が凝縮されているのが、『からかい上手の高木さん』である。
第2巻では、初期バージョンの高木さんも描かれているが、そこには小悪魔的な女の子のキャラクターはあっても、西片に対する愛情のようなものは感じられない。単なる早熟な悪女である。そこに、幼さや可憐さ、線の細さを加えた現行バージョンの高木さんのキャラは鉄板である。
『からかい上手の高木さん』の最大の謎は、試験で九十点台をとってしまう高木さんのような才色兼備の少女が、五十点台後半しかとれない平凡な少年の西片に好意を抱くかという点だ。勉強を補うほどにスポーツができるわけでも、長身のイケメンであるわけでも、音楽のような特技に秀でるとか、お笑い芸人のような卓越した話術やコミュニケーション能力を身につけているわけでもない。ただただいじりやすいというだけの男の子。それが一番の美少女に毎時間相手をしてもらえるなんて、現実にはともかく、この世代の男の子の頭では、本来あるはずのない事柄である。
スクールカーストで中程度の男の子が上位の女の子に相手をしてもらえる下剋上、あるはずのない事柄を易々と毎回実現してしまう、そんな現実の殻をかぶったファンタジーだから、『からかい上手の高木さん』に多くの読者、とりわけ中二病を卒業できないかつての男子は萌え続けるのである。