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落合陽一『これからの世界をつくる仲間たちへ』 2 ー魔法使いになる方法
文中敬称略



落合陽一『魔法の世紀』第一章では、21世紀の魔法使いが暗黙知を有する専門家、クリエイティブクラスであることが述べられた。再魔術化の時代における魔法の裏には、科学革命の以前の魔法とは異なり、必ずそれを回している人がいることから始まる。
続く第二章のテーマは、いかにしてこの21世紀の魔法使いになるか、である。
 

  近代以前の「魔術」は、それが「なぜそうなるのか」を誰も知りませんでした。ですから、「火を使うと食べ物が腐らない」というアイディアで特許を取った人はいないし、そのノウハウを使うのに対価もかかりませんでした。誰かが発明したのではなく、同時多発的にみんながそれに気づいてやり始めただけです。
  それに対して、現代の「魔術」は誰かが必ずその中身を知っています。「誰も理由がわからないのにうまくいく」ということは、一部の現象論的に記述された工学や、一部の人工知能アルゴリズムなどの例外を除いて滅多にありません。魔術の裏側には必ず「魔術師」や「魔法使い」がいる。それこそが、暗黙知を持つクリエイティブ・クラスなのです。
p98


たとえ暗黙知に支えられた何かの専門分野がある場合でも、自分が選んだテーマが時代によって必要かどうか判断するためには、自ら問い考える力が必要である。

そのスタート地点において行うべき一連の問いとは次のようなものである。
 

・それによって誰が幸せになるのか。
・なぜいま、その問題なのか。なぜ先人たちはそれができなかったのか。
・過去の何を受け継いでそのアイディアに到達したのか。
・どこに行けばそれができるのか。
・実現のためのスキルはほかの人が到達しにくいものか。

pp108-109


『これからの世界をつくる仲間たちへ』は、一種の反=自己啓発書である。しかし、多くの自称「反=自己啓発書」がその善意の試みにもかかわらず挫折してしまうのは、親切すぎていったん空にした器を、別の何かによって満たそうとしてしまうことによってである。何らかの実行可能な解答、上演可能なシナリオを与えることは、読者の思考停止を招き、再び同じ罠に陥ってしまう。

したがって、その解答が満たされることのない空白である問いにまでしか導くことができないのである。

21世紀の魔法使いは、デジタルネイティブにとどまってはいけない。というのもデジタルネイティブは、コンピュータのもたらすプラットフォームと一体化することしか意味しないからだ。そのプラットフォームから自らを差別化する方法を考えなければならない。

自分の頭で考える思考体力こそが、コンピュータが形成するプラットホームから差別化し、形式知を暗黙知に変えるための必須の条件である。思考体力は解釈の力である。そして既知の存在と新たなものを関係づけることができるいわば文脈形成力である。
 

 従って大事なのは、検索で知った答えを自分なりに解釈して、そこに書かれていない深いストーリーを語ることができるかどうか。自分の生きてきた人生とその答えはどうやって接続されていくのか。それを考えることで思考が深まり、形式知が暗黙知になっていくのです。pp137-138


その基本になるのが言語化の能力である。言語化の能力は語学の力ではない。ロジカルな文章を作り、表現することのできる能力である。外国語ーたとえば英語の場合でも、達者な英文を書く必要も、話す必要もない。Google翻訳がスムーズに翻訳できるようなロジカルな日本語の文章をつくることができさえすればよいのだ。

魔法使いになるためには、何よりも他の魔法の背後に人がいて回していることを理解していなければならない。魔法の背後に人がいることを知らないと、物事を世の中のせい、システムのせいにしてしまう。だが、世界には必ずそれを回す人がいる。

したがって必要な能力はコミュニケーションの能力でもある。誰かにゴマをするためではなく、世界の問題を解決するための能力、魔法の背後にいる人へと影響を与えることのできる能力としてのコミュニケーション能力である。
 

(…)大切なのはご機嫌を取ることではなく、相手が決断しやすいような材料をロジカルに提供することです。
そのためには、フィギュアスケートの選手のように、相手の問題意識や物事の考え方を理解することも必要でしょう。それを理解すれば、どんな材料をどのようなロジックで説明すべきか見えてきます。つまり相手をプログラムするようにロジックを組むこと。これが、「コミュニケーション能力」にほかなりません。世界は人間が回しているからこそ、対人コミュニケーションがうまくできなければ世界は変えられないのです。
p157


ここまでの論旨を要約すると、21世紀の魔法使いであるクリエイティブクラスになるのに必要なのは、オンリーワンの暗黙知を持った専門分野であるが、その前提となるのが思考体力であり、そのバックボーンとなるのはロジカルな言語能力である。そして、ロジカルな言語能力はまた、他の魔法使いに影響を与えるために、コミュニケーションの能力として行使されねばならない。以上がこれからの世界つくる若者が、魔法使いになるために身につけるべき諸能力のセットなのだ。

「21世紀の魔法使い」
=クリエイティブクラス
=暗黙知を持った専門家
➡思考体力
➡ロジカルな言語能力
➡コミュニケーション能力


という恐ろしく単純なチャートで表すことができる。しかし、この図式を百万回唱えたところでそれらが身につくわけではないことが何よりも重要である。『これからの世界をつくる仲間たちへ』は、十代の若者、とりわけ中学生・高校生に読ませたいベスト1の本であると思う。それが、若者向けの書物としてお勧めなのは、結論をうのみにし、実行することを促すのではなく、自らの頭で考えることによってしかそれより先に進めないように書かれているからなのだ。本書の中に無数に散りばめられた例や説明も、現実世界へ飛び立つためのカタパルトにすぎない。

ようこそ、21世紀へ。

関連ページ:
落合陽一『これからの世界をつくる仲間たちへ』
落合陽一『魔法の世紀』
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