つぶやきコミューン

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町田康『リフォームの爆発』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略



町田康『リフォームの爆発』(幻冬舎)を読んだ。

これは果たして小説なのだろうか、それともノンフィクションなのだろうか。確かなことは、この本はテレビの人気番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」にならい、自宅のリフォームをテーマとした本であるということ、そして町田という文学者が独自の論理を追求してリフォームにリフォームを重ねた自宅を、さらに思い切って大胆なリフォームを加えるまでの経緯をまとめた報告であるということである。頭の中の妄想と現実の描写が混然一体となっているので、まるで荒唐無稽なバカ話のように見える部分もある。だが、部屋のリフォームに関しては、その間取りとリフォームの方向性は終始一貫していて、図面がかけるほどである。否、図面でも描きながらでないと、この本の中身の正確な理解はほぼ不可能である。

それほど克明に描写され、かつそれが刻々変更されてゆくのである。

要するに、『リフォームの爆発』は、文字で表現された建築文学であり、間取りの変容ぶりを克明に追った私小説であるのだ。

リフォームとは何か、それは家の不具合の解消である。

だが、リフォームにより元の家の不具合が解消されたからと言って、そこでハッピーエンディングになるとは限らない。その先には「永久リフォーム論」の泥沼がある。
 
 但し、注意しなければならないのは、確かに不具合は解消されたが、その不具合が解消される過程で、或いは、不具合が解消された結果、別の不具合が見つかる。新たな不具合が生じる。といった現象がかなり頻繁に起こる。
 そこで、リフォームをしたけれども不具合は解消されなかった、と言う人が出てくる。だがそれはリフォームによって不具合が解消されたことにより生じた不具合である。
 で、またリフォームをする。また不具合が生じる。また、リフォームをする、ということを繰り返す。
p31

さてこの物語が始まる以前に、文学者町田の部屋はすでに様々なリフォームを経てきた。その来歴を著者は克明に語るが、その背景にあるのは同居人の存在である。同居人と言っても実は人でない。まず十匹の猫がおり、さらにそこに二匹の犬が加わる。つまりこのリフォームは、自分ひとりの幸せではなく、猫たちと犬たちの不具合の解消、幸せをも同時に実現するはずなのだ。

町田が冒頭で掲げたリフォームを通じて解消すべき不具合とは次のようなものである。
 
 人と寝食を共にしたい居場所がない二頭の大型犬の痛苦。
 人を怖がる猫六頭の住む茶室・物置小屋、連絡通路の傷みによる逃亡と倒壊の懸念。
 細長いダイニングキッチンで食事する苦しみと悲しみ。
 ダイニングキッチンの寒さ及び暗さによる絶望と虚無。
pp43-44

これらの不具合を解消するために、町田は病的とも言える特異な論理によって、家の姿を得体のしれないものへとどんどんと変えてゆくように見える。そして、ついに工事業者の手が入る。はたして、その成果は是か、非か。

『リフォームの爆発』は、「大改造!!劇的ビフォーアフター」では決して表現されることのないリフォーム後の悩みや新たな欲望の発生、そして工事中の業者のやりとりの中で生まれる様々な葛藤まで、つまり煩悩そのものを表現し尽くしたリフォーム文学の傑作である。
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