つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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甲斐谷忍『無敵の人 1』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本   文中敬称略



勝敗の行方は最初の配碑で半ば決まり、運に左右されることが多いため、およそコンスタントに勝つことが不可能であると考えられているゲーム、麻雀において、常勝の人間がはたして可能か。この問いに正面から答えるのが、『LIAR GAME(ライアーゲーム)』『ウィナーズサークルへようこそ』など熾烈なゲームにおける知能戦で読者の頭脳にハードな負荷をかけ続け熱烈なファンを生み出してきた、甲斐谷忍『無敵の人』だ。

あらすじ
主人公となる無敵の人、Mはまだ十代の少年である。300万ユーザーを誇るオンライン麻雀ゲームの雀仙に現れたMは次々に強敵をなぎ倒し、あっという間にその頂点に君臨してしまう。そこでイカサマではないかと運営元の株式会社ブイラインが、Mをとらえた者に300万円の報奨金を出すと広告するところより物語は始まる。

その話に飛びついたのが、アルバイトとしてブイラインで働いている園川順平だった。家が貧しく生活費と妹の学費のためにアルバイトをかけ持ちしている順平は、仕事の中でMの正体を気づいてしまったのである。何とかMに取り入って友人となろうとする順平。だが、Mの行う麻雀にはどこにもイカサマの痕跡がなかった。本当に、Mは無敵の人だったのだ!だが、ブイラインの社長は順平の言葉に耳を傾けようとしない。それどころか、汚い手を使ってMを潰しにかかる。


順平は、一人、Mを信じる味方となろうとするのだった。

園川順平のキャラクターは普通の善良だが気の弱い少年だが、Mのキャラクターはとても個性的である。ビジュアルは、ハリネズミのようにとがったヘアスタイル、髪にかかるゴーグル、目の下の隈、丸い首のボタンのない服など、『NARUTO』の主人公うずまきナルトを連想させる(ただし、ナルトの場合はゴーグルではなく、バンダナだ)。しかし、感情の起伏が豊かなナルトとは対照的に、Mは感情を失っており、笑顔も全く見せない。まるでコンピューターのように正確な驚異的な記憶に基づき、相手の手を分析してしまうMは、サヴァン症候群のように設定されている。麻雀を続ける中で、失ってしまった感情を取り戻すことができるのかというのが、この物語の大きなテーマであり、めざすべきゴールとなっている。

しかし、毎回の物語の流れ自体は麻雀版タイガーマスクであると思う。虎の穴よろしく、汚い反則を織り交ぜながら邪魔者を消そうとする組織が次々に繰り出すルール無用の相手に、フェアプレイで勝ち抜く。そのためには、相手の悪だくみを上回る超人的な頭脳の回転が必要である。『無敵の人』は、麻雀を知っていると突っ込みながら楽しむことができるが、知らなくてもMの圧倒的な力を、理解者にして解説者の園川順平の視点をそっくり借り信じることで、同じように楽しむことができるスリリングで痛快な知能戦ドラマなのである。

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