宮崎克×あだちつよし『怪奇まんが道』
原作宮崎克、漫画あだちつよしの『怪奇まんが道』(集英社)は、古賀新一、日野日出志、伊藤潤二、犬木加奈子四人の怪奇漫画家がどのようにして漫画家を志したのか、どのようにして成功したのか、そしてどのようにその後の壁を乗り越えたのか、それぞれの漫画人生をコミカライズしたものだ。
古賀新一の場合、小学校のころの唯一の楽しみは貸本で手塚治虫の漫画を読むことだった。そしていつしか漫画家になることが夢であり、中学三年のとき手塚治虫に手紙を書くが、せっかく届いた返事を叔父に破られてしまう。そして、16歳で家出し働いてお金をため上京、漫画家の道を歩むことになる。だが、貸本屋の原稿料は安かった。1966年に怪奇漫画がブームになると、漫画雑誌に掲載できるようになる。そして1975年に「エコエコアザラク」連載開始。だが、同時に私生活の中でさまざまな恐怖体験をするようになった。家に見知らぬ老人が座っている、恐ろしい夢を毎晩のように見る。限界を感じても、編集者は止めさせてくれない。そうして連載を続けるうちに、ついに、手塚治虫が目の前に現れた!
どの漫画家も先行する漫画家との出会いがきっかけになり、その存在を励みに頑張った姿が描かれる。赤塚不二夫に打ちのめされギャグ漫画をあきらめた日野日出志は、不二夫の娘赤塚りえ子からファンですと言われ感動し、伊藤潤二は楳図かずお、古賀新一、日野日出志のファンだった。そして、犬木加奈子の場合も、楳図かずおとの出会いから恐怖漫画の世界へとはまり始める。こうしてみると、日本のばらばらな場所から恐怖漫画家への道を始めた人々の人生の軌跡が、一続きの道になっているとわかるのである。
『怪奇まんが道』では、過去へと遡り、漫画家の生活と、作品を描写するうちに、いつのまにか本人のタッチで世界が描写され、内と外の境界がわからない世界にはまり込んでしまう。単なる模写でなく、ペンのタッチまで本人と見まがうばかりで、作画家の恐怖漫画への造詣や愛情があふれ、人生のドラマと各漫画家の絵柄の多様性を同時に楽しめる傑作となっているのである。