つぶやきコミューン

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斎藤孝『語彙力こそが教養である』
 JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略



芸能人やスポーツ選手のインタビューを見たとき、この人は「頭がよさそう」、「思慮深い」とか「子どもっぽい」とかといった印象はどこから来るのだろうか。

人の印象を決定づける最大の要素こそ、語彙力であり、そこにこそ本人の身につけた教養が自然とにじみ出る。そんな語彙力の正体や身につけ方を詳しく述べたのが、斎藤孝『語彙力こそが教養である』(角川新書)である。

日本語を表現するのに必要なのは、一万語と他の言語よりもずっと多い。それだけ語彙力で差がつきやすい言語なのである。

  日本語の90%を理解するために必要な語彙数は、およそ1万語と言われています。ところが、諸外国語を見てみると、ケタが違う。英語は日本語の3分の1にも満たない3000語、スペイン語やフランス語にいたっては2000語足らずで、その言語を90%理解できるのです。p21

語彙力を身につけるのに、何も学校に行く必要はない。普通に日常生活の中で本を読んだり、映画やテレビを見たり、インターネットをしたりする中で、身につけることができる。ただ、ほんのちょっとした工夫を加えながら、言葉に対する態度、取り組み方を変えるだけでよいのだ。

本書の構成は大まかに言って、次のようになっている。
第1章は、語彙力とは何か、語彙力の有無の判断の仕方など基本的な話が語られる。
第2章は、語彙力のトレーニングの本番。まずは王道の読書によるインプット法から、古典・名著からミステリー、エッセイまで読書案内を兼ねた内容となっている。
第3章は、テレビ、映画、音楽、インターネットなど本以外のあらゆるインプット法について。
第4章は、インプットした語彙をアウトプットにより定着させ、実際に使える言葉に変える方法。
第5章は、さらにワンランク絵の「深い語彙力」を身につけるトレーニング法を伝授する。

具体的にはどのような工夫があるだろうか。

誰かのアウトプットをインプットする中で、タモリのように「なりきること」がその一つだ。
一流の人物の言葉は、「考え方と語彙がセットになっている」からだ。

 そうそう、昔、タモリさんが寺山修司のモノマネをしていたのをご存知の方はいらっしゃるでしょうか。声や風貌はまるきりタモリさんなのに、不思議と寺山修司本人に見えてくるんですね。いかにも「寺山修司が言ってそうなこと」を東北訛りのそれらしい口調で言うから、そっくりに見える。他の人の語彙や思考を丸呑みにして再表現することにかけては、タモリさんの右に出るものはいないかもしれません。
 それではなぜ、寺山修司は「乗り移り」の対象になるのか?
 それは彼にほかの人が持っていない「ものの見方の角度」があるからです。
p72

そんなすごい人のアウトプットから語彙をもらい、インプットすることによって、ものの見方の角度をトレースし続けるうちに、その人になりきることができるというのである。

あるいは、お勧めの本としてのドストエフスキー。『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』の5大長編は人生の課題図書とまで言う。斎藤孝は、茂木健一郎同様、一人だけ作家を選ぶとしたら日本文学では夏目漱石、外国文学ではドストエフスキーを選ぶ一人だが、その理由がユニークでわかりやすい。

 それは、登場人物が異常なほどに饒舌なところです。
 ひとつだけ挙げる魅力がそこか、とお思いかもしれませんが、これはドストエフスキー作品を読む醍醐味でもあります。とにかく、出てくる人出てくる人みな発話量が半端なく多い。地の文でさえも、言葉が多い。読みながらつい、「ロシア人はみんなこんなにおしゃべりなんだろうか?」と首をひねってしまうほどです。もはや通常の会話ですら、ディスカッション然とした過剰な言葉の応酬には、ぐいぐい引き込まれてしまいます。
pp78-79

同じようにミステリーというジャンルが一押しの理由も説得力がある。

 ミステリーは、ちょっとした破綻ひとつで三流以下の作品になってしまうシビアなジャンルです。そのなかでも、世界で通用するミステリーは細部まで言葉に対する細やかさが段違い。文字だけで読者に刺激を与え、想像させ、推理させ、ゾクゾクさせないといけないし、少しでも穴があれば、読者からクレームが寄せられる。執筆する側としても相当難しいジャンルではないでしょうか。
 書き手の知性を結集して緻密に書かれ、舞台となっている場所やテーマについてのリサーチも徹底しているミステリー。だからこそ、新しい分野の言葉を吸収することだってできるのです。
pp84-85

本書で紹介された著者のインプット法の中には、テレビでサッカーは一日一試合以上や高校野球や錦織の試合を全部早送りにしてもいいから見るーのように、かなり難易度の高いものもあり、思わず人生の時間が無限にあればねと言いたくなるものもあるが、その中のいくつかを自分の好みやライフスタイルに合ったものを取り入れるのは、苦痛をともなわないだろう。また、あちこちに誤りやすい語句などもまとめてあり、読むだけで自然に教養につながる語彙力がアップする工夫がなされている。個人的には、この本は読書ガイドとしても重宝で、他人の言葉をより深く消化し、自己薬籠中のものに変えるエッセンスが凝縮されているようで、とても楽しく読むことができた。

というのもこの『語彙力こそが教養である』で著者が一番伝えたかったメッセージも、単に「語彙が豊富だと周りから一目置かれる」ということではなく、「語彙が豊かになれば、見える世界が変わ」り、それによって人生そのものが楽しくなることだからである。

関連ページ:
斎藤孝『コメント力』
斎藤孝『偉人たちのブレイクスルー勉強術』
斎藤孝『15分あれば喫茶店に入りなさい。』

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