つぶやきコミューン

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江川紹子『もか吉、ボランティア犬になる。』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 


ボランティア犬とは、主として高齢者施設や養護施設を訪問し癒しを与えたり、学校を訪問し手情操教育の一環を担ったりする活動に従事する犬たちのことをさす。江川紹子家族の愛犬から地域へ――もか吉、ボランティア犬になる。』(集英社)は、側溝に置き去りにされ傷だらけの状態で拾われた一匹の小犬もか吉の再生と活躍の感動的な記録である。

もか吉は、側溝で生活していた三匹の小犬のうちの一匹であった。人に捨てられたのではなく、母親に置き去りにされたのだ。大雨が迫り、見かねて助けに出かけた吉増憲司さん、江梨子さん夫婦。三匹のうち二匹は逃げてしまったが、逃げられない一匹がいた。それがもか吉だった。

ノミとダニだらけだったもか吉は、貧血気味の上、バベシア病にかかっていることがわかった。さらにアレルギー体質で、牛肉、大豆、小麦、魚、卵、乳製品がすべて駄目らしい。さらにアレルギーは食べ物だけでなく、花粉や草、ほこりに対しても敏感である。

もか吉のトレードマークは一に笑顔、二にそのファッションだが、様々な服を着たり、ゴーグルをかけていたりするのも単なるファッションではなく、アレルゲンから身を守るためなのである。

やがてもか吉は「社会化」の訓練を受けることになる。一歳年上のまっちゃんという犬の出会いがひきこもり気味だったもか吉を変えた。

「もかちゃんの固まった心を溶かしていったのは、まっちゃんのような先輩犬たちでした」p26

犬に対して慣れるようになっても、人に対してはまだ臆病だったもか吉。石を投げられたり、脅されたりした経験がトラウマになっているらしい。犬の幼稚園でのトレーニングでスタッフに慣れても今度は家で同じことができない。男性を怖がる癖を克服するために、わざわざ人からおやつをもらう練習をさせる。散歩もだんだん好きになり、苦手な人も少なくなった。何事も一朝一夕では不可能である。時間と忍耐が必要なのだ。

やがて石田イヌネコ病院インストラクターの石田千晴さんから、PPPプログラムという犬をしからない訓練を受けたもか吉は、ボランティア犬としての道を歩むようになる。

 PPPプログラムは、人間と動物との関係やペットの扱い方について研究し、それを応用して動物を介在させるセラピーや教育などの実践を行います。高齢者施設や刑務所でお年寄りや受刑者が動物と触れあうことで、様々なよい効果を生んでいます。pp40-41

もか吉は芸ができる活動的な犬ではない。むしろただなでられたりそこに寝ているだけのネコ型癒し系の犬なのだ。そんなもか吉と接するだけで、気難しい認知症の老人が笑顔になる。

お年寄りの次は子どもたちだ。「わうくらす」(和歌山動物愛護教室)では、小学生に犬猫との接し方、飼い方や命について学ぶ機会を与える。そこでもか吉もボランティア犬として参加するようになる。それまで犬がこわいと思っていた子どもももか吉に触れたり一緒にリードを持って歩けるようになる。

もか吉は今や一人前のボランティア犬に成長した。他の犬の間のケンカの仲裁をしたり、お手本となる行動もできるようになった。今や役員にも任命され、人間社会の立派な一員なのである。

少子高齢化が進み、地方の共同体が存続の危機に瀕する一方で、減少したとはいえ、毎年殺処分される犬猫の数は数十万匹に上る。犬や猫にも、人間にも幸せな社会を目指すには、より多くのもか吉たちのような動物の活躍が必要不可欠であるにちがいない。

『もか吉、ボランティア犬になる。』
は、人間と動物との共生によって、新しい社会のあり方を考えさせてくれる心温まる良書である。
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