つぶやきコミューン

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國分功一郎監修『ジル・ドゥルーズの「アベセデール」』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本   文中敬称略



【PART1 ファーストインプレッション編】
『ジル・ドゥルーズの「アベセデール」』(KADOKAWA)は、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズクレール・パルネによるインタビューを通じ、ABC順に哲学的なトピックを語ったDVDL'abécédaire de Gilles Deleuze (1995ー97年テレビ放映、2004DVD発売)の日本語版である。日本語字幕の翻訳は、監修者國分功一郎ほか、千葉雅也三浦哲哉角井誠須藤健太郎岡嶋隆祐の各氏が担当している。

パッケージの構成

日本語版は大きなボックスに入っている。
アベセデール1

箱を開くとDVDの入ったケース(下左)と小冊子(下右)が出てくる。
アベセデール2

さらにDVDのケースにはこのようなかたちで3枚のDVDが収納されている。
アベセデール3

日本語の小冊子は80ページあり、その目次は次のようになっている。

アベセデール4

死の後の生

このインタビューを撮影する条件として、自分の死んだ後公開することがあることをドゥルーズは冒頭で明言する。かなり異様な、いかにもドゥルーズらしいインタビューである。あたかも『デスノート』のLのように、この映像をみなさんが見ているということは、私はすでに死んでいるということになります、というわけだ(実際には映像は死の直前にテレビ放映され、ドゥルーズも見たようである)。

これほど平易にドゥルーズが自分の哲学や、その概念について語ったこともなかった。たとえば冒頭の「A 動物」の項目では、新しい概念をつくることの価値や脱領土化について、ドゥルーズ自らが解説する。さらに、次の「C 教養」の項では直前に書き上げたばかりのライプニッツ論『襞』と襞の概念が語られ、「D 欲望」の項ではガタリとの共著『アンチ・オイディプス』について語られる。ドゥルーズの明晰で軽妙な語り口にかかると、長年の疑問が氷解したかのような浮遊感を覚えるから不思議である。しかし、語られていない部分に関しては、依然として多くの疑問符が、チェシャ猫の微笑みのように漂い続けるのである。

また、「E こども時代」では、これまで語られなかった父親のことや子供時代の師と仰いだ人物など私生活に関する細かい事実が、語られる。ドゥルーズの現住所の詳細も、もう私が死んでしまっているのだから後悔しても問題ないでしょうというわけである。さらに、「F 忠実さ」の項ではガタリやフーコーなど様々なタイプの友人関係が語られる。ブランショのいう「友愛」との違いも、ドゥルーズの口から解説される。ブランショの友愛は、「カテゴリーとしての友愛」であるとドゥルーズは言うのである。

さらに浮かび上がるのは、ドゥルーズ自ら定義する哲学者の肖像である。ドゥルーズは、「C 教養」の項で、自分は哲学者であるが、知識人でもなく、教養人でもないと語る。一瞬逆説のように聞こえるこの言葉も、自分は知識をストックすることに重きを置く記憶の人ではなく、哲学的な概念の作業を行う物書きと考えているなど納得のゆく説明がなされる。作業が終われば内容は忘れてもいいのだから知識人であり続ける必要もないのだ。さらに、話すことを不潔とし、書くことを清潔と考えていること、そしてその中で限界を見つけ、挑戦することが哲学者=物書きの仕事であると考えていることなど、コアとなる仕事論の部分は特に興味深く、哲学だけでなく文学の愛好者にも多くの発見があることだろう。

このDVDブックは単にドゥルーズの哲学を愛する人のみならず、大学で哲学を学ぼうとする人、中学生、高校生であろうと哲学に興味を持った人すべてに勧めたい「本」である。さらに、日常の言葉と知的な言葉の双方を橋渡しするという意味で、フランス語の会話を学ぶ上でもこの上もない教材である。通常、日常会話を繰り返して聞くと、そのオートマティズムに飽き飽きし、いつしか苦痛な拷問に感じてしまうが、ドゥルーズの言葉は奥が深く、聞くたびに新しい発見があり、心地よい音楽のように流れ続けるからだ(この点についても、「S 文体」の項で詳しく語られるだろう)。思考に対するさまざまな呪縛を取り除き、自らの頭で自由に考えるための一式道具がそろったのが、この『ジル・ドゥルーズの「アベセデール」』なのである。

『ジル・ドゥルーズの「アベセデール」』2(A〜F)へ続く

関連ページ:
千葉雅也監修『哲子の部屋掘
國分功一郎監修『哲子の部屋 機
國分功一郎『ドゥルーズの哲学原理』(2)
國分功一郎『ドゥルーズの哲学原理』(1)


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