つぶやきコミューン

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板垣恵介『刃牙道 8』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略


  Kindle版

板垣恵介『刃牙道 8』では、いよいよ地下闘技場における宮本武蔵烈海王の戦いが終局を迎える。

第7巻までの両者の戦いを見てみよう。
まず、烈海王は手裏剣を繰り出す。武蔵はこれをことごとくかわし、あるいは一刀両断にする。
次に、上衣によって骨や歯まじりの闘技場の砂を武蔵の顔面へと飛ばすが、瞬き一つせず武蔵はこれを受けきる。
次に烈は、衣服を投げ捨てるに見せかけて、九節鞭で奇襲する。
これはクリーンヒットし、武蔵ダウンする。
しかし、次の攻撃で九節鞭をつかんだ武蔵は、両手の一振りでそれを振り切ってしまう。

剣を持たせて生じた隙に乗じようとする武蔵の策略は、烈に見抜かれ、逆襲される。

起き上がりざま、武蔵は烈海王破れたり!の勝ち名乗りを挙げ、大受けする。

再度素手の接近戦では髪による目つぶし、至近距離から顎を蹴上げるものの、武蔵に義足をつかまれる。刃牙同様、地面にたたきつけられる。

一瞬列の意識は飛ぶ。次の武蔵の攻撃で目覚めたものの、烈の拳を受けきった武蔵の投げで、烈の肘は砕かれる。

しかし、青竜刀を取った武蔵を前に、左手が上がらぬ不利な構えから、消力で顔面への太刀を無効化しながら、烈は刃牙譲りの必殺技、胴回し回転蹴りを武蔵にヒットさせる。
またしても武蔵ダウン。
しかし、これは擬態だった。

罠にはまった烈海王はたちまち縄術で縛り上げられてしまう。万事窮す。

ここまでが7巻の流れである。さて第八巻の冒頭では、武蔵は自ら烈海王を縛った縄を断ち切ってしまう。そして、いよいよ日本刀に持ち替えた武蔵の太刀と烈海王の消力(シャオリー)が正面衝突することになる。

かつて、太刀を身に受けても、首をハネられぬ限り反撃できると師の前で豪語した烈だが、その言葉の真偽を身をもって確かめることとなるのだった。

羽根のような軽やかさをもって、烈海王は武蔵の太刀筋に合わせて今再び舞う…

烈海王との戦いは、武蔵が関ヶ原の戦いにたとえるほど熾烈なものだった。

武蔵の巨大な壁を改めて目の当たりにした範馬刃牙は、本部以蔵の古流武術への入門を申し出るが、本部の君らを「俺が守護る」という言葉を前に、マジ切れしてしまう。実力の上では刃牙120点に対して80点にも及ばぬと自らの弱さを認める本部だが、あらゆる日本武術を合わせれば300点を越えるという言葉の責任を彼は取ることができるのか。

ここまで読んできて浮かんでくるのが、二つのツッコミどころだ。

一つは、これまでB級の雑魚キャラ扱いであった本部を、武芸百般を修めているという理由で、急に持ち上げるのはかなり無理があるという点。というのも、忍術のようなカムフラージュの術に対する対処法は、『グラップラー刃牙』幼年編のガイア戦でさんざん経験済みであるし、武器を隠し持った相手への対処法も、『バキ』の最凶死刑囚編でやりつくしている。さらに範馬勇次郎は、傭兵上がりで、銃や爆弾などあらゆる武器の対処法にも精通している。そこに日本武術がいくら加わろうと、それまでの常識を覆すほどの説得力は持ちにくいのではないだろうか。

もう一つは、もともと宮本武蔵自身が一度は死んだ人である点である。クローンとシャーマニズムを駆使して過去の格闘家を意識ともども蘇らせることが可能なら、武蔵の対戦相手がいくら死のうと、同じやり方で蘇らせることができるはずである。しかも、五体満足なかたちで。そのようなセーフティネットがすでに存在する『刃牙道』の世界は、論理的にはこれまでの刃牙シリーズとはまるで異なる世界であり、テレビゲームや『新世紀エヴァンゲリオン』並に死の価値が下がってしまっている。しかし、そのカードを容易に切ることは、作者が自制心でかろうじてつなぎとめているリアリティを作品から失わせることにつながるだろう。

禁断の技術、クローンによる格闘家の再生は、一歩間違えば、不死の格闘家たちの終わりなき戦いへと行き着いてしまうのである。

烈海王が再び『刃牙道』に登場する日が来るかどうかは、作者板垣恵介だけが知っている。

関連ページ:
板垣恵介『刃牙道 6』
板垣恵介『刃牙道 3』 
板垣恵介『刃牙道 2』
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