つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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羽海野チカ『3月のライオン 11』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本   文中敬称略



羽海野チカ『3月のライオン 11』では、19歳の棋士桐山零の二つの戦いを中心に描かれる。

一つの戦いは、川本姉妹の別居していた父親誠二郎とのたたかいである。10巻では、彼女たちを守るために、零は、次女のひなにプロポーズするという奇手に出たのだった。真面目も真面目、大真面目の零だが、周囲はまだ早すぎると諫めようとする。それでも、他の女性との間にできた「妹」をだしにしながら、何とか川本家にもたれかかろうと考える誠二郎に対し、敢然と立ち向かう零であった。相手の手の内を、先の先まで読み、叩き潰そうとする零の棋士としての才能が今初めて実生活でも発揮される…

もう一つの戦いは、将棋盤上の戦いである。大阪での玉将戦の対戦相手雷道は、気に入った若い対戦相手をいびりながら将棋をさす悪い癖があった。それを大人の態度でやり過ごそうとする零だが、終電を気にする仕草から、女性の存在をかぎつけ、妄想を膨らませネチネチとからみ続ける雷道。結果、対局も長引いてしまう。川本姉妹が待つ東京へ、彼は帰ることができるだろうか?

そのまま倒れ込むような熾烈な二つの戦いの後で、桐山零が見た光景は一体何だろうか?

何とか「婚約者」であるひなを守ろうとする零であったが、川本姉妹の祖父相米二(そめじ)の言葉にその道をまっすぐに進むと、三女のモモともども後に取り残される長女のあかりのことに気づかされるのだった。

どうやら、またしても零の取り越し苦労から一途な青春の暴走が始まりそうな予感が…

巻末のBUMP OF CHICKENとのコラボ企画「ファイター」では、いかにして隣がいつも空席だった桐山零が、将棋の対局に自分の居場所を見つけたかを幼少期からの回想記風に描く。

家族への喪失感から、過剰なまでに他の家族に思い入れをしてしまい、ぼろぼろに傷つくまで戦わないではいられない桐山零の成長と川本家との絆をかつてなく熱いタッチで描くのが『3月のライオン 11』なのである。

PS 『3月のライオン』を読んでいると、舞台となる佃島周辺を原風景とした吉本隆明のことを、そしてその関係性の概念を思い出してしまう。『3月のライオン』の世界を特徴づけるのは、それぞれの登場人物が張り切れそうなまでに膨らませた自己幻想の世界であり、それが他人を巻き込んでゆこうとする姿である。コマいっぱいに書き込まれた洪水のような台詞や独白によって、さらには背景に描かれた象徴的イメージによってそれは表現される。多くの場合、その幻想の世界は、相手の運命をのみこみ翻弄する暴力として現れる。将棋とはまさにそのような幻想のセルフイメージのぶつかり合いだが、同時に他者との関係性の習得の場でもある。自分同様に、相手もそれぞれの自己幻想を抱いてみな生きている。そのバランス、調和をはかること。自己幻想から対幻想への正常な通路を見出すことこそが、桐山零がたどるべき成熟ということなのだろう。



関連ページ:
羽海野チカ『3月のライオン 9』
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