二ノ宮知子『87CLOCKERS 7』
二ノ宮知子『87CLOCKERS 7』は、掲載紙を月刊ジャンプ改から週刊ヤングジャンプに変えての初めての巻、6巻の後半でオーバークロッカーとなるまでのMIKEの前史にあてられたため(その中で猫屋敷という姓も明かされる)、もたついていたオーバークロック世界大会がこの7巻では一気にヒートアップする。
ふとしたことからコンピューターのオーバークロックというディープな世界へと舞い込むこととなった音大生一ノ瀬奏、そのきっかけとなったのは中村ハナとの出会いであった。世界的なオーバークロッカーとして知られるMIKEのサポート役に徹していた彼女に恋をしたあげく、どんどんと腕をあげてゆく奏。そしてついに世界記録で予選を勝ち抜き、上海で開かれるオーバークロックの世界大会までやってきた。だが、予選のパートナーであった丸田は都合で出場できず、代わりの庄野は腕こそ確かだが2D専門で3Dには興味なし、その結果孤軍奮闘を強いられる奏。
イギリス、デンマーク、ブラジル、韓国、ロシア、インドネシア、オーストラリア、香港、アメリカと9の強豪チームを相手に、果たして一ノ瀬、庄野のチームは勝つことができるのか?
奏がもたついている間にも、他のチームは次々に好記録を打ち立ててゆく。ついに世界記録さえ出る中で、奏は液体窒素の入ったボトルを落とし、ポットの温度計を外してしまうアクシデント。残り時間がわずかでもはや温度計をセットし直す時間はない。耳だけを頼りに奏はイチかバチかのオーバークロックに挑む。一同がかたずをのんで見守る中、その成否は?このシーンを描く沈黙の数ページは、まさに神である。
他方、実家で勝手に決めた許嫁のボッサンこと火切俊充を振り切るために、奏の実家に身を寄せるハナ。奏との距離も縮まるかに見えたが、MIKEの世界記録が破られたために、彼女の心は穏やかではなくなった。
さらに、資産家のボッサンはMIKEのサポート役に回ろうとして、ハナとオーバークロックをめぐる四つどもえの戦いは、ますますカオスの様相を極めてゆく。
オーバークロックの頂点をきわめることで、恋の勝利者たらんとする奏の明日はどっちだ?
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