つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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ヤマザキマリ×とり・みき『プリニウス 掘
 JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略



ヤマザキマリ×とり・みき『プリニウス掘は、鬼、挟よりもさらに深く古代ローマの世界へと沈み込む。その世界は、人間が猫や象や羊、タコやイカ、深海魚など他のさまざまな生物の間に位置づけられるような自然界の秩序である。そして、また現実界と神話の世界が混然一体となった世界である。夜の帳が落ちる時、そこでは一角獣や双頭の竜、サソリの尾を持つ人面獣マンティコーラスといった異形の怪物たちが跋扈し、他の動物と同じような実在として信じられている世界である。『博物誌』に描かれた、科学と神話が分化する前段階の世界をプリニウスは生き、そして私たち読者も生きることになる。

冒頭の15.[ガイア】では、飼い猫ガイアの視点を中心に、プリニウスの身辺を描き出す。ガイア起きる、ガイアご飯をもらう、ガイア木に登る、ガイア仕事の邪魔をする、ガイア瓶を落とす、ガイア身を潜める、ガイアプリニウスにすり寄る、ガイア畑に入る、ガイア浴場で寝る、ガイア窓の外をのぞき見る、ガイア眠りにつく…こんな風にプリニウス家の生活が驚くほどのリアルさと綿密さで描き出されるのである。

次に描き出されるのは、皇帝ネロの身辺だ。愛人のポッパエアのわがままを放置し、放恣を極めるローマの台所は火の車になる直前である。ネロが頼れる人間のリストの筆頭に上がっているプリニウスは、そんな権力の汚濁から身を引くかのようにローマを後にする。妹夫婦に生まれたばかりの甥の家庭教師を探しながら出会った女、アンナはラテン語ヘブライ語もできる教養ある女だった。そして、いったんはプリニウスの書記を務めていた若者エウクレスは、ウニコルヌス(一角獣)の幻に誘われ、恋に落ちた娼婦プラウティナの面影を追い求めるうちに、異教の世界へと導かれてしまう。彼はガイアともども、ローマを離れることができなかったのだ…やがて、旅先のカンパニアでプリニウスの一行が見たものは、巨大なタコなど自然界の異常であった。水が干上がる一方で、温泉が湧き出る。そんなはずはない。一行が目の前にしたウェスウィウスは火山などではないはずなのに。。。

幾重にも重なる運命の糸、人類史上かつてないほどに詳細かつ持続的に描かれたローマの生活とローマ人の心の世界は、ここに一つの頂点に達する。『プリニウス』の英訳ほど、単にコミックの世界に限らず、アートの世界に衝撃を与えるグラフィックノベルはないだろう。『テルマエ・ロマエ』同様、『プリニウス』が世界を席巻する日が待ち遠しい。

関連ページ:
ヤマザキマリ×とり・みき『プリニウス 供
ヤマザキマリ×とり・みき『プリニウス 機
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