つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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ニコ・ニコルソン『ニコ・ニコルソンのマンガ道場破り』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本   文中敬称略



ニコ・ニコルソンのマンガ道場破り 白帯マンガ家が第一線のプロ作家に突撃取材!』
(白泉社)は、キャリアの浅い白帯漫画家ニコ・ニコルソンが、ベテランや大家のべ十一人の漫画家に突撃取材、その内容を漫画の形でまとめたエッセイマンガです。

ここで登場するのは
●「ベルセルク」の三浦健太郎
●「ナナとカオル」「年上ノ彼女」の甘詰留太
●「3月のライオン」「ハチミツとクローバー」の羽海野チカ
●「信長の忍び」「よんこまのこ」の重野なおき
●「自殺島」「ホーリーランド」の森恒二(もりこうじ)
●「海の御先」「藍より青し」の文月晃(ふみづきこう)
●「描かないマンガ家」「みたむらくん」のえりちん
●「KAPPEI」「デトロイト・メタル・シティ」の若杉公徳(わかすぎきみのり)
●「うそつきパラダイス」のきづきあきら+サトウナンキ
●「ハチワンダイバー」「エアマスター」の柴田ヨクサル

まあ、出版社や「ヤングアニマル」という掲載誌の縛りはあるものの、錚々たる顔ぶれ、それぞれにジャンルや作風の異なるこの世界の大家に、絵の上達の方法や、漫画家として成功の秘密など、虫のよいショートカットを聞き出そうとします。時に、圧倒的な画力の差を前に絶望しそうになる作者に対して、大家たちが一様に口にするのは、数を描くことの大切さ、現在の力で最後でまで描き切ることの大切さです。

まぁ、新人はとにかく最後まで描きあげること
途中で投げだすクセがついてしまうからね
(柴田ヨクサル)

さらに、独自の工夫やノウハウも大切。コマ割りプロットづくりの秘訣、そこに至るまでのながーい道のりまで、惜しげもなく大公開しています。

たとえば羽海野チカの場合、
中学のころからノートに書き溜めたネタ帳が123冊、資料写真が10万枚、そして「3月のライオン」では、一つの事件が起きた場合、その後に続くエピソードを20ばかり書き並べ、その中から選ぶのに一番時間がかかるとか…

きづきあきら+サトウナンキの場合、
何も思いつかなくても漫画を描く方法=マインドマップ創作術を大公開!要するに、マインドマップに要素を並べて行って枝が長く伸びるのが正解とか…

そして、毎回会心の出来のクリティカルヒットを出すのはしんどくて続かないので、完成形を目指さず、一ヶ月や1週間でできるものが今の自分の実力と見切りをつけ、出し続けることが大事とか…

えりちんの場合、
たとえ描きたいテーマがなくても…描きたいビジュアルがあればそこに物語をのせればいい
とか

通常の漫画家へのインタビューは編集者であったり、同業の漫画家との対談であったりするのですが、そうした節度ある対話の中では聞かれない初歩的な質問や、非常識で虫のよいリクエストを、作者はしまくって、それに対しても真面目で本質的な解答が与えられています。

今は漫画を描く人誰もが突き当たるアナログからデジタルに至る道も
ー今まで紙とペンだった人も100枚原稿を描いたあたりで慣れます!
(文月晃)

と言われれば、あきらめずにやってみようという人も出てくることでしょう。

また、デビューに至るまでの、あるいはデビューしてからの苦労話も読ませますね。

順風満帆なデビューを果たしたものの、そこからがネームが全く通らないボツスパイラル地獄の始まり、これもこの世界に入った人は必ずくぐる修羅場ですね。

何度も何度も描いては直した。でも自分でも面白いと思えないし言われたとおりにしてもまたボツ…(えりちん)

所狭しと、文字が詰め込まれた『マンガ道場破り』は、漫画家を志望の人だけでなく、物書きやクリエイターを目指す人など常に新しいネタや作品を作り出してゆかなくてはいけない人ににとって間違いなく役に立つ秘伝や秘訣が満載の一冊です。ひょっとしたら、この本を手に取ったことがきっかけで漫画道に開眼し、鮮やかなデビューを飾る大型新人がでるかもしれないし、スランプを抜け出し、ヒット作を出し一世風靡する漫画家もいるかもしれません。そういう意味で、『マンガ道場破り』は敵に惜しげもなく塩を送る本なのです。

『ニコ・ニコルソンのマンガ道場破り』はこちらで試し読みできます。
http://actibook.sakura.ne.jp/doujyou/

PS でも、吹き出しの中だけでなく外にまでぎゅうぎゅう詰になった手書き文字が読みにくかったりするので、拡大が可能なKindle版がお勧め。


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