つぶやきコミューン

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谷本真由美×ポール・ロブソン『添削!日本人英語』PART2
JUGEMテーマ:自分が読んだ本


             Kindle版

PART1より続く)
日本人英語の添削は大変だ

日本人の書いた英文を添削しようとすると、ある壁に突き当たる。文法的、語法的な誤りを訂正するのは比較的簡単な作業である。しかし、そうやって誤りをどんどんと削って行って、出来上がる英文ははっきり言って変である。ネイティブならそうは言わないだろう表現のオンパレード。だがこれをネイティブが使いそうな表現に置き換えようとすると、全文書き換えるしかない気がするのである。元の文をまるごと置き換えるのは、苦労して書いた人に対しあまりに気の毒であるので、なるべく救済の道はないかと考える。

そんな時は、英語のネイティブに丸投げするのが一番である。しかし、英語のネイティブも色々である。A氏という能天気でズボラなネイティブに丸投げすると、トリビアな表現上のミスだけ数個チェックして、おかしな英文はそのままである。見るに耐えない文だけを訂正して、最低限ネイティブが理解できる英文にしているだけなのである。

そこで、A氏による添削を反映した原稿をB氏という、神経質で真面目なネイティブに丸投げする。すると半日がかりで、原文がほとんど跡形もなく添削されて返ってくる。

そんな風にして、何とかネイティブの鑑賞にも耐える英文が出来上がるわけである。

ここでの問題は大きく分けて二つある。

一つは、ネイティブらしい英語とは何か?どうすればそれに近づけるか、ということである。

もう一つは、あるべき英文の添削とはどのようなものか。ネイティブをネイティブであるという理由で、みな信じてよいのかどうかということである。

谷本真由美氏とポール・ロブソン氏による『添削!日本人英語 世界で通用する英文スタイルへ』(朝日出版社)は、このような正しい英語の文書作成の最大の疑問点に対して、豊富な実例とともに正面から答えた類稀な書物である。

しかし、ネイティブらしい英語というと、これもまた大きな二つの誤解が存在する。

一つは、日本人は文法や構文等細かいことに囚われるがゆえに英語が話せないのであるというものである。だから、そういう細かいことは気にせず、どんどん英語で会話を交わしましょう、そうすれば日本人はグローバルにとなれるにちがいないということになる。これには半面の真実があるが、半分は間違っている。いくら会話を交わしたところで、文法の知識抜きに正しい英文が書けるわけではない。たとえば本書の84〜86pにある冠詞の解説は、高校入学時に買わされてほとんど開かれることのないぶ厚い英文法の参考書とほぼ同じ内容である。観光客から脱して、英語で仕事をしようとするときには、そうした知識は最低限の基本なのだ。むろん、最低限であるから、それ以上の何かが必要である。それは何であろうか?

もう一つの誤解は、ネイティブのようにペラペラ話せる人間のイメージであり、それを突き詰めるとディスクジョッキーの英語ということになる。これは大いなる勘違いであり、日本人の憧れそのものがむしろ笑いのネタを提供することになる。

日本人の中には英語のしゃべり方をかなり勘違いしている人がいます。ラジオのDJのような「異様な巻き舌の早口のしゃべり」が上手な英語と勘違いしている人が大勢いるのです。驚くことに、日本の公共交通機関や空港、ホテル、大手店舗、国際会議、コンサートホールの英語のアナウンスまでが、このような「エセDJ英語」風になっているので、耳にしたネイティブスピーカーや英語の分かる外国人が大爆笑することがあるのです。p195

こうした公の場の英語は、誤解のないように、「はっきり、ゆっくり、シンプルに、変なアクセントのないニュートラルな英語」にすべきなのである。

 日本の「エセDJ英語」風というのは、単なるアナウンスなのに、まるでラジオの洋楽番組のように変な抑揚がついていて、やたらと楽しそうな感じで、しかも強い日本語なまりで早口でしゃべるので、聞いている方は何を言っているかわかりません。p195

憧れのペラペラ英語そのもののイメージがまず間違っているし、大いにずれているのである。そして、同じような誤解が、日本人英語の文章を、さらにネイティブが自然に理解できる英語から引き離す原因の一つになっているとも言えよう。

では、日本人が書く英語の不自然さ、おかしさはどこから来るのであろうか。「はっきり、ゆっくり、シンプルに、変なアクセントのないニュートラルな英語」をひっくり返すと、「あいまいで、早口で、複雑で、変なアクセントのあるニュートラルでない英語」ということになる。早口の部分は省いて文章用に言い換えるなら、「あいまいで、複雑で、変な表現のあるガラパゴスな英語」ということになるだろう。本書の目的はまさにこのような英語の克服にある。

日本人英語の特徴と克服
 
本書の中で挙げられる日本人英語の特徴は次のようなものである。
1)読んで不自然である。「自然な英文が何であるか」がわかっていない。学校の外で英文に触れる機会が少ないために生じる。
2)和製英語をそのまま用いてしまう。当然、ネイティブには通用しない。
3)複雑な英文が高級であると思い込んでいるので、難解な英文を作りたがる。
4)日本語を英語に一字一句正確に翻訳することが可能で、それがよいことだと思っている。
5)文化の背景の違いを理解せず、日本のことわざをそのまま用いたりする。
6)感情表現が多く、客観的事実が不足している。

こうした日本人英語を克服するには
1)できるだけ英文をシンプルにする
2)事実と感情を分ける
3)日本語で省略されがちな目的語を補う
4)自然な、大人の英語、ビジネスの場にふさわしい英語にする
5)曖昧さを避けるために、細かく知らない人に逐次説明する
6)不要な繰り返しは極力避ける
7)文章の長さをそろえる
8)冠詞の正しい使い方に習熟する
9)受動態よりも能動態で書く
10)知らない人に配慮し、業界用語は避ける

この中で特に注意すべきなのは、4)の自然な英語、大人の英語、ビジネスの場にふさわしい英語ということである。

 (…)このような不自然な英語を書くのは、受験英語にどっぷりと漬かってきた人に珍しくありません。なぜなら日本の入試英語に出てくる英語のほとんどが、教科書やパンフレットなど、英語圏では小学校高学年から中学生が読むレベルのものの抜粋だからです。(…)本人は受験英語を頑張ってきたので、文法的な知識などはあり、ある程度は話したり、書いたりできるのですが、英語圏や多国籍な場所で大人が使う表現や、ビジネスの場にふさわしい表現がわからないのです。pp58-59 

実は、本書を熟読したとしても、日本人英語の克服した上で、ビジネスの場にふさわしい英語を身につけることは容易でないと著者は述べている。

なぜなら、どんなに頭がよく、完璧な英文法の知識を身に着けていようと、それぞれの文書にふさわしいフォーマットを知らないことには、自然発生的に理想の英文が頭の中から生まれてくるわけではないのだ。これは、日本人に限らず英語のネイティブスピーカーにもあてはまる。

  日本で英語を教えている外国人の先生の中には、ビジネス経験が全くない人、高等教育を受けていない人も大勢います。
  そういう人たちは、実務の世界で使われている文書のフォーマットなども知りませんので、妥当なフィードバックをすることもできません。

p132

これが英語が話せてもバカはバカ、英語を教えても素人は素人と、PART1で述べた理由である。

英語圏で、英語を使った仕事に就き、キャリアを積むことによってそれは自然に身に付くものであろう。しかし、英語圏で仕事に就くためには、まず自然で場にふさわしい英文が書けなくてはいけない。

英語が先かキャリアが先か、ここに最大の問題がある。

もちろん最低ラインの英語力が先なのである。

では、どうすればよいのか、二つの道がある
1)自力による道はひたすら表現のサンプルになるような多種多様な英文を集め、それをコピーライトすることである。形式の部分は維持し、伝達する情報の部分のみを差し替えるのである。
2)他力による道は、信頼できるネイティブの添削を受けることである。ただ単に添削を依頼しても、語学レベルの添削だけでは話にならない。実務レベルで、正しいフォーマットを踏まえた英文に変えてもらわなければいけない。当然、それなりの報酬が必要になる。その人の仕事の時給に所要時間をかけた程度の謝礼は当然支払うべきであろう。同時に、せっかく場にふさわしい英語らしい英語に置き換えてくれたのに、一字一句訳されていないと憤るのは論外である。

  ここで重要なのは、添削をお願いするネイティブの選び方です。
  ビジネスの世界であれば、自分の専門分野で実務経験があり、最低でも大卒の学位を持っている人にフィードバックを頼むべきです。
  実務の世界に身を置いている人は多忙ですから、無償で外国人の書いた英語の直しを引き受けてくれるとは限りません。妥当な報酬を払うか、時間をかけて有効な関係を築いてからお願いするといった努力が必要です。
p131

本書の中には、多様な英文のサンプルが収められているが、すべてが真面目な英文ばかりではない。後半には、ミリオタ仲間をイベントに誘うだの、市の当局にゴミのクレームを寄せるだの、しれっと抱腹絶倒の英文も収められている。

 It would be great if you could bring your tank to the convention.The Panzerkampfwagen is a cool tank.I will remember to bring my ear plugs with me as last time I was in your tank it was really noisy,and I had ringing in my ears for 3 days. p192

 By the time I got home from work on Tuesday evening all of the pavement along my street and on the other side of the road was covered with paper and newspapers which had been blown out of the boxes.Also most of the dustbins were knocked over and lying on the pavements and driveways.
 Foxes and wild cats have been scavenging for food and have dragged the contents of the dustbins onto pavements and driveways. The weather has been mild, and the warmth from the sun has caused the food waste to rot quickly.the dustbins and their emptied contents are now givinng off an awful bad smell. 
pp223-224

本書の内容を身につけるには、上の英文が辞書なしで読めた上で、笑い転げる程度の英語力があることが望ましいが、なくても日本語訳がついているので途方に暮れることはないだろう。『添削!日本人英語』は、大学生以上で、将来仕事に英語が必須であるという人から、ビジネスや語学・教育の現場で、英語のプロとして現役で活躍している人に至るまで、幅広く役立つ良書である。

関連ページ:
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