つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
<< May 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
 
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
@kamiyamasahiko
MOBILE
qrcode
PROFILE
無料ブログ作成サービス JUGEM
 
水野敬也『夢をかなえるゾウ 3』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略



水野敬也『夢をかなえるゾウ 3 ブラックガネーシャの教え』(飛鳥新社)は、シリーズ270万部を突破した『夢をかなえるゾウ』シリーズの第三作です。『夢をかなえるゾウ』は、過去の偉人の名言をちりばめた自己啓発書的内容を小説の中に盛り込むことで、『もしドラ』同様、先行するコンテンツのアーカイブを引用するというヒットの法則を踏まえ成功したものですが、ここへ来て、さらにゆるキャラブームが手伝って、象の姿をしたインドの神様、ガネーシャというキャラ立ちした主人公の力でこの本もベストセラーになりそうな勢いです。

第一作『夢をかなえるゾウ』から第二作『夢をかなえるゾウ 2 ガネーシャと貧乏神』へと、自己啓発書的な部分より物語的な面白さに重点が置かれるようになり、第三作ではさらに磨きがかかっています。というのも、自己啓発書的な要素は、書いたことを実行してみたけど、成功しなかったじゃないかという負のフィードバックもあるわけで、その分を小説として面白ければそれでいいじゃないかというメインの売りでカバーできていれば特に心配するには及ばないわけです。

二番煎じ、三番煎じをヒットさせるには、何らかの工夫が必要ですが、今回の最大の売りは、ライバルキャラの黒いガネーシャです。本物の白いガネーシャと、偽物の黒いガネーシャが、ビジネスの売り上げをめぐり対決するというのが、中心のストーリーとなっています。

ただ、ちょっと混乱を招くのが、サブタイトルにあるブラックガネーシャという存在で、これはライバルキャラの黒いガネーシャではなく、白い本物のガネーシャの変身形態で、ブラック企業的なスパルタ路線で鍛える時のモードです。

第一作、第二作と異なり、今回の主人公は女性、仕事に生きがいを見いだせず、恋人も出来ないOLと、女性ファンを意識したつくりになっています。彼女は、藁をもつかみたい気持ちで日本橋の女性占い師の赤城さんの占いを受ける中で、白いガネーシャ像を譲り受けるわけですが、より立派そうに見える黒いガネーシャ像を24万円で買わされるところから始まります。いわゆる霊感商法にひっかかったわけですね。その夜、自宅に帰るとガネーシャが現れます。彼女にボロクソに言われて帰ろうとしたガネーシャですが、彼女の一言がガネーシャの逆鱗に触れ、ガネーシャは筋肉隆々の黒い姿に変身し、自分との契約を強引に行わせます。その契約とは、夢をかなえる代わりに、一度でも言うことを聞かないと、将来の希望を根こそぎに奪うというものでした。

やがて、ガネーシャの与えた課題を一つずつ消化する中で、彼女の意中の男性である園山さんをめぐり赤城さんと争う羽目になり、その背後から現れた黒いガネーシャと白いガネーシャとの対決へと発展してゆきます。果たして、黒いガネーシャの正体は?彼女は、恋人をつくりたい、世界一周旅行をしたいという夢をかなえることができるのでしょうか?

そんなわけで、白いガネーシャの側のいわゆるWin-Winという善良なビジネスモデルと、相手を騙してでも売ったもん勝ちという悪徳ビジネスモデルの対決へと至るわけです。その途中で、ガネーシャは最大のピンチに陥ってしまいます。それは…

自己啓発書的な内容は控えめですが、最後に押さえるべきツボはしっかり押さえてあり、それはこれまで夢をかなえられなかった読者の盲点をしっかり突いたものになっています。そして、物語はいったん終わるかに見えて(そこでまず泣かされます)、さらにどんでん返しで続き、最後の最後、ラスト一行でもう一度泣かせるという仕掛けになっています。

そこまで泣かされると読者の夢がかなうかどうかはもうほとんどどうでもよくて、『夢をかなえるゾウ 3』は、本当によくできたキャラクター小説の傑作です。この物語の原型はゲーテの『ファウスト』ですが、笑いをとりに行くギャグの連続で読者の警戒心が緩んでいるので、シリアスな小説よりも効果てきめん。最後の数十ページは、電車の中とか人前で読まない方がいいですよ。



関連ページ:
水野敬也・長沼秀樹『人生はニャンとかなる!』

コメント
コメントする









 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://mkamiya.jugem.jp/trackback/410
 

(C) 2017 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.