つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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諌山創『進撃の巨人 15』
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諌山創『進撃の巨人 15』(講談社)では、ようやく全体の見取り図が見えてきて、物語も大きくフィナーレに向けて動き出します。攫われたエレンクリスタ(ヒストリア)を追うリヴァイたち調査兵団とその前に立ちはだかる中央憲兵団との対立、憲兵団を操る偽の王家と真の王家、さらにはどちらが新聞社という情報機関を味方につけるかという、錯綜した勢力争いが浮上してくるのです。

ここへ来て感じたのは二つのこと。

一つは、立ち上がりより感じていたことですが、この作品は現在の日本の置かれた社会状況をかなりの度合いにおいて、反映しているということです。独自の世界の構築のため、一時希薄になっていた現代の日本社会との関係性が、再び密になっている気がします。それは特にメディアの力をいかに味方につけるかが争点の一つになっている点に顕著に表れているようです。

もう一つは、作者諌山創が絵が下手であるという指摘は果たして本当なのかということ。彼の絵が下手という場合、議論になるのは、背景の建物や風景ではなく、人物の描写であると思われます。作者はかなり正確に線の乱れなしに人物を描こうとしている。一部の人物が似たり寄ったりになってどれが誰だかわからないという指摘はもっともなのですが、キャラクタリゼーションの不徹底は、絵の上手下手とは別の問題で、おそらく作者の人物描写に対する違和感が原因ではないかと思われます。諌山創の絵では、前景も背景も同じ密度で描かれ、トーンが活用された場面もないわけではないのですが、多くのシーンで通常省略されて粗な空白によって奥行きを出すべき部分を出さないで、フラットな絵になっている。人物も頭の先から足先まで名前のある人物はきっちり描き尽くされていて、同じような姿勢をとる人物も主客のランク付けによって描写を段階化せず、律義に一様に描いているため子供の絵のような印象を与える、そういう描写が特徴的です。そしてタッチの粗さが克服された現在においては、そのフラットな描写密度がアートとして、独自の世界を築き始めている気がするのです。もっとも、水面下での諌山創の進化には、より人物を動かすことに巧みで、カラーリングまで含めた細部の仕上げに関しても高度な職人芸の域に達した、アニメーションスタッフからの、逆輸入的な学習があるのかもしれませんが、諌山創の絵はもはや下手とは感じさせない完成の域に達したと言ってよいでしょう。

真実の力を武器に、調査兵団は味方を増やしてゆき、この展開は日本の閉塞的な状況に対してある種の爽快感を与えてくれます。騙されていた民衆の覚醒、背後で操る大きな勢力の陰謀の謎へと、さらにはエレンがいかにして巨人に変身するに至ったかという最大の謎に迫るのがこの15巻なのです。

関連ページ:
諌山創『進撃の巨人 13』
諌山創『進撃の巨人 12』

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