つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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浦沢直樹・長崎尚志『MASTER キートン Reマスター』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略



『MASRER キートン Reマスター』は、浦沢直樹・長崎尚志(ストーリー)による『MASTER キートン』の20年ぶり、待望の続編です。

相変わらず設定は込み入って難しいです。イギリスや東欧周辺のヨーロッパの地理と現代史的な知識が動員され、おどろおどろしい歴史の影の部分にスポットを当てながら、その中に平賀=キートン・太一は飛び込み、事件を解決してゆくという流れになっています。

ドナウ川流域で欧州最古の遺跡という、画期的な発見を行ったにもかかわらず、学界からは不遇の太一はマスターのままで、まだ博士号を与えられていません。まあ、論文さえ提出すれば何とか与えられそうな感触も得ているようですが、もし与えられたら、島耕作シリーズのように、DOCTORキートンに改題しなければなりませんから、タイトル維持のためにこの巻ではそこまでゆかないようです。

今回の続編では、事務所もたたみ、足を洗ったつもりの探偵業のはずが、残務整理のため、太一はいくつかの事件に顔を突っ込むことになります。

「眠り男」では、イタリアのレッチェに飛んだ太一が、旧ソ連圏の人身売買組織の闇を暴きます。逃走時に、人買いの船から海に投げ込まれたモルドヴァ人の女性ソフィアを救うため、太一は奔走します。
「親愛なるアントニヤへ」では太一はクロアチアのドゥブロニクへ。ある女性から託された手紙を送り届けるために、マフィアの幹部をザグレブまで連れてゆく依頼を受けます。その背後には、クロアチア戦争の思わぬ秘密が隠されているのでした。
「マリオンの壁」では、パリへ飛んだ太一が、ベコー教授が出したトロイア戦争に関する四つの謎を解き明かす中で、彼の悩みの相談に乗るというエピソード。
「ババククの聖夜」では、アイルランドのドニゴール州が舞台。日本のテレビ局のスタッフが
父親の敵と狙う男の居場所を息子たちに教えてしまい、太一はその尻拭いをする羽目になってしまいます。
「女神とサンダル」では、日本に帰国した太一は父親の平賀太平と再会。彼の依頼で、トレメイン直美という認知症の女性の警護の依頼を受けます。事件の謎を解く中で、明らかにされる思いがけない真実とは?
「オオカミ少年」では、ロンドンのシティへ飛び、25年前に失踪した父親探しの依頼を受け、「マルタ島の女神」では、考古学者となった娘の百合子と再会。「栄光の8人」では、フォークランド紛争でともに戦った仲間がらみのトラブルへと太一は足を突っ込み、今なお癒えていない歴史の傷痕に直面するのでした。

相変わらずヨーロッパと日本を又にかけてかけて活躍する太一ですが、『MASTERキートン Reマスター』の最大の見どころは、やはり美しく成人した平賀百合子の姿と、父と娘の間の確執でしょう。個人的に、この巻に出てくるヨーロッパ系の女性はあまりタイプではないのですが、平賀百合子は思わずどきりとする美しさ、喜怒哀楽の表情の変化も素敵です。この『MASTERキートン Reマスター』によって、平賀百合子は浦沢作品中、最高のヒロインの一人となったと言っても過言ではないでしょう。

MASTERキートンシリーズは緻密な設定に定評があり、本巻も密度の高く、先の読めないスリリングなストーリーが目白押しです。何よりも『MONSTER』『二十世紀少年』のような超大作シリーズに見られる引き伸ばしテク が一切ないのが素晴らしい。通常のコミックの数倍の読みごたえのある、クオリティも高いエンターテイメントの傑作と呼べる一冊です。

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