つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
<< May 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
 
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
@kamiyamasahiko
MOBILE
qrcode
PROFILE
無料ブログ作成サービス JUGEM
 
倉方俊輔・柴崎友香『大阪建築 みる・あるく・かたる』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略



今、大阪の建築が面白い。初めに世紀の傑作、空中庭園こと梅田スカイビルができた。そしてなんばパークス、新しい大阪駅、グランフロント大阪、そしてあべのハルカス。スケールの大きな建築が大阪の顔を次々に塗り替え、さらに大阪駅北側の開発計画は続く。

矢継ぎ早にできた巨大な建築物の間で、今なお現役で使われ続ける大正・昭和にできたような歴史的建築物の存在も浮かび上がってくる。かつて大阪ではありふれていた古色蒼然としたレンガ造りや古い様式の鉄筋コンクリートの建物は淘汰され、価値あるもののみが都市の随所に、歴史の足跡をとどめながら、今なお往時の輝きを放ち続けている。

そんな新旧の大阪建築の魅力を、ひとまとめに紹介したのが、建築史家倉方俊輔と作家柴崎友香による『大阪建築 みる・あるく・かたる』(京阪神エルマガジン社)である。

本書では、大きく6つのエリアに分けて、大阪建築を紹介している。

機テ本銀行大阪支店、大阪市中央公会堂や大阪府立中之島図書館などの歴史的な建築物が並ぶ中之島―西天満―北浜エリア。
供ィ牽闇前に建てられたとは思えないモダンな建築大阪ガスビルや、ヨーロッパのような吹き抜けのパティオを持つ船場ビルなど、新旧の個性派ビルが残る船場エリア。
掘ヂ膾絮悗筌哀薀鵐侫蹈鵐搬膾紊砲箸匹泙蕕此∈なお建築ラッシュに沸く梅田エリア。
検ジ鼎ぅ◆璽院璽匹篩湯、下町の町家やモダン建築が宝庫のように残る大正エリアは柴崎友香が生まれ育った町だ。
. 大丸心斎橋店や高島屋大阪店など誰もの記憶に残る老舗百貨店と、屋上が何層もの空中庭園化したなんばパークスのある心斎橋―難波エリア。
此ツ姪軍佞里△訖契こΔら天王寺公園を経て、あべのハルカスに至る天王寺エリアである。

本書は、倉方と柴崎がこれらのエリアを散策しながら、順に訪れてゆくという対談形式で構成されていて、新しい建物、古い建物の外部、内部だけでなく、周辺の橋や工場、寺社仏閣も、近代以降の建築という視点で紹介されている。さらに、東京駅を設計した辰野金吾や、村野藤吾といった日本建築史上の大物の足跡も丹念に紹介されている。本書の特徴は、対話とその話題となった建築物の写真が極力離れないよう、きめ細かに構成されていることである。INDEXと奥付を除き、すべてカラー印刷でモノクロの文字だけのページがないので、途中で飽きることなく、一気の読み進めることができるのも大きな長所だ。

本書の中には、いくつもの印象的な写真がある。まず船場ビルディングの中庭部分の上と下からの写真、1925年に造られたとは思えない素晴らしい構造とカラーリングで、思わずそこで生活したくなる瀟洒な建物だ(36.37)。

あるいは大阪駅から出ると必ず目に入る梅田吸気塔の俯瞰写真は、それがモダンな彫刻のような構造物であることを再認識させられる(42.43)。梅田阪急ビルに上がればこんな写真が撮れるのかと、思わず得した気分になる。

青空を映す梅田スカイビルグランフロント大阪の間の広大な空き地は、未来都市大阪のさっらなる進化へと想像を駆り立てずにはおかない(50,51)。

大正区のモダン建築の遺跡群やアーケード街は、私にとってまだ知らぬ大阪の世界であり、レトロな幻想の旅へと誘う(64,65,66)。おそらく数ヶ月以内に私はこの場所を訪れることになるだろう。

中央が公道となった中山製鋼所のくねくねと曲がった無数の鉄パイプの集合体には、工場萌えの心をくすぐるし(74,75)、大丸心斎橋店の孔雀のレリーフには、見落としていた芸の細かさを再発見させられる(82)。

通天閣に近い新世界国際劇場も見落としたスポットであるし(99)、驚くべきかたちの現代建築の宝庫のような一心寺の存在もこの本を読むまで知らなかった(101,102)。

さらに、盲点となりがちな万博記念公園周辺のスポットも、特別付録として紹介している( 櫚亜法

二人の語り手が、建築の構造や歴史に通じた男性の学者と、長年そこで生活しながら知識に還元できない感覚の世界を探求してきた女性の作家という複眼的視点も秀逸である。

『大阪建築 みる・あるく・かたる』は、これから大阪を観光としようとする人、大阪の建築に興味のある人、そして大阪やその近辺で生活しながら地元の魅力をもっと掘り下げたいという人、すべてにお勧めできる良書である。読んで楽しくためになり、見てその場所を訪れ、写真に撮ったり絵に描いたりしたくなる。誰が読んでも新たな発見、出会いのある書物なのだ。

関連ページ:
柴崎友香『春の庭』

コメント
コメントする









 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://mkamiya.jugem.jp/trackback/401
 

(C) 2017 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.