貞本義行『新世紀エヴァンゲリオン 14』
原作カラー(khara)漫画貞本義行の手による『新世紀エヴァンゲリオン』がついに完結です。単行本第1巻の出版が1995年8月、月刊少年エースの連載開始が1995年の2月号ですから、ほぼ20年の歳月をかけて、一つのすでに一応完結されたアニメを、コミックのかたちで描き続けたわけですね。
さて、貞本エヴァのエンディングは、13巻、碇シンジを依代とした人類補完計画の実行までは、テレビシリーズや旧劇場版とほぼ同じでしたが、この14巻で大きく変わります。
14巻ではより細やかに、冬月や碇ゲンドウ、そして碇ユイの心理が描かれ、謎に包まれた事故の真相も明らかになります。若かりしころ、あご鬚がまだ無精ひげでしかなかった頃のゲンドウの姿や若く美しい碇ユイの姿が、シンジへの思いが、リリカルに語られるのです。
そして、補完計画の後に来る風景は、テレビシリーズとも、旧劇場版とも異なる、希望に満ちたストーリーです。今までエヴァを見て泣いたこともなかった私ですが、この14巻を読んで初めて涙が出ました。貞本義行渾身の美しいタッチで描かれたいくつものシーンは、長く心に残るにちがいありません。
ぽっかりと穴が埋まらないままになっていた失われた20年が、この作品の完結によって、戻って来たかのような感慨を覚えます。
そう、いよいよ来年は2015年。シンジたちが生きている世界は、私たちが今生きているこの時代に、いつの間にかなってしまったのです。コミック版の貞本エヴァの凄さは、まさに読者を浦島太郎にしてしまい、作品を読むうちに、その時代に連れて行ってしまったということに尽きるのではないでしょうか。
巻末にはEXTRA STAGEとして、「夏色のエデン」という作品が掲載されています。これは、碇ゲンドウが六分儀を名乗っていたころのエピソードで、ユイとゲンドウのなれそめまで紹介されています。このころの、ゲンドウは無精ひげさえ生やしていない、加持リョウジを一層ナイーブで偏屈にしたような、あるいは鈴原トウジの兄のようなビジュアルを持った、なかなかのイケメンとして描かれています。碇ユイの性格がどうであったか、いかに魅力的であったかも、彼女に憧れる一人の女性の視点から克明に描かれています。同時に、この作品は、テレビシリーズや旧劇場版、そしてこのコミックと新劇場版をつなぐ扇の要のようなはたらきをしていることが、最後まで読めばわかるでしょう。
11月21日にプレミアム限定版がリリースされましたが、この内容は
(1)コミックス第14巻 (限定版オリジナルカバー)
(2)「新世紀エヴァンゲリオン」全巻(1〜14巻)収納ブックエンド
(3)描き下ろしイラストを収録したブックレット(約16P)
(4)貞本義行 Working Music CD
となっています。通常版の発売は11月26日ですが、懐を考えてそれまで待つか、旬のネタのために、プレミアム版をゲットするか、悩ましいところですね。
これがプレミアム限定版です。
開封したところ
コミック(右上)は、通常版とは表紙が異なるので、時間を置いて両方ゲットするという手もありますね。