二ノ宮知子『七つ屋志のぶの宝石匣 1』
『のだめカンタービレ』でクラシック音楽、『87CLOCKERS』ではPCのクロックアップと、未知の世界にいきなり飛び込んで、短期間でその世界のコアな情報を吸収しながら、業界のプロをもうならせるマニアックで濃厚な描写を行うことで定評のある二ノ宮知子がこの『七つ屋志のぶの宝石匣』で手がけるのは、何と質屋の世界!質屋というと、なんとなくうらぶれた、古めかしいイメージがあるけれど、そこで発掘される宝石やブランド商品は、リーズナブルな価格で、お宝を手に入れようとする女性たちの垂涎の的でもあるのです。
一方では、下町の質屋を舞台にしながら、同じ人物が出入りするのが、銀座にある宝石店。どちらの店でも不可欠な技術である、宝石の鑑定こそが、この『七つ屋志のぶの宝石匣』の要なのです。
【あらすじ】
主人公である倉田志のぶはまだ女子高生ですが、宝石の持つ気からその石の善し悪しを見抜く、特異な能力を持っていました。祖父の遺した質屋である倉田屋を、出戻りの母親とともども支えようと、下校後、店に出て買い取りをこなす毎日。すぐ裏に住む北上彰定(きたがみあきさだ)は、かつて質草として、この店に預けられ引き取り手が来ないために、そのまま志のぶのいいなづけにされてしまいましたが、今は銀座の宝石商デュガリーで働く身の上。彼や志のぶの叔父は志のぶのあやしい鑑定を斥けようとするものの、志のぶの反対を押し切って、買い取った宝石は盗品であるとわかり、志のぶの才能を認めざるを得なくなるのでした。
やがてマダムキラーのイケメン顕定は、裕福な名家である秋元家に出入りを許されるようになります。その次女秋元摂子は、志のぶの学校の友人で、宝石をめぐる複雑な糸が、秋元家を中心にからみ合うようになります。多くの宝石が寄り集まる場所に身を置く顕定には、ある秘密がありました。それは…
さらに志のぶの前に現れる、不思議な能力を持ったもう一人の宝石商のイケメン青年。この邂逅に動揺を隠せない顕定。宝石の鑑識眼への競争心と恋未満の淡い感情がからみあった三つ巴のバトルが幕を開けます。いわば宝石をめぐる冒険物語の『七つ屋志のぶの宝石匣』第一巻は、波乱万丈の展開を予感させるスタートです。
関連ページ:
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