つぶやきコミューン

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辨野義巳『大便通』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本

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人は誰しも、アイドルでさえも、大便とは切り離せない存在であるが、大便について語ることはどういうわけか憚られる。しかし、大便は、健康状態を示す最重要な情報が含まれる一種のデータの宝庫である。それについて深い知識を持つことは、私たちの健康状態を知り、そして改善することに直結する。

『大便通』(幻冬舎新書)は、「うんち博士」としてメディアにも大きく取り上げられたことのある、この道40年のベテラン、理化学研究所研究員辨野義巳(べんのよしみ)氏が、ウンコに愛をこめて贈る、大便リテラシーを高めるための、最もわかりやすく手ごろな入門書である。

日本人が人生80年の間に排泄する大便の量は約8.8トンと言われる。健康な人の大便は、その80パーセントが水分であるが、では残りがすべて食べカスなのかというと、実はそうではない。固形成分の三分の一は食べカスで、残りの三分の一が腸粘膜、残る三分の一は腸内細菌である。大便1gの中には、何と6000億〜1兆個もの腸内細菌が含まれる。この腸内細菌が、人の健康状態の鍵となる存在である。

単に、食べカスを排泄できれば用が足りるわけではありません。食べカスから大便を作るまでの大腸の働きぶりによって、私たちの健康度は大きく変わるのです。
 というのも、大腸を通る内容物には、「発酵」か「腐敗」のどちらかが起きます。どちらも微生物による分解作用ですが、味噌やチーズや納豆などの発酵食品は人間が食べられるのに対して、腐敗した物は食べられません。
 それと同様に大腸内部で起きる現象も、人体に有益なものが発酵、有害なものが腐敗だと思ってもらえばいいでしょう。同じ内容物であっても、大腸の働きぶりが良いと発酵し、働きぶりが悪いと腐敗が起きてしまう。後者の場合、腐敗物質が腸壁を通して体に再び吸収され、さまざまな病気を引き起こす原因になるのです。
 しかも大腸は人間の臓器の中でもっとも多くの病気と関連しており、「病気の発信源」とも呼ばれています。
p30

腸内細菌には、乳酸菌やビフィズス菌のような発酵をもたらす「善玉菌」と、ウェルシュ菌のように腐敗をもたらす「悪玉菌」が存在するが、すべての細菌が善悪に分けられるわけではなく、むしろ日和見主義的などちらにも流れる可能性のある細菌も多い。大腸菌はその代表である。便の臭いがきついのは、悪玉菌の特徴である。

ふだん大便に注意を払わない人は「ウンコはすべて臭い」と思っているでしょうが、よく嗅ぎ分けてみれば、その臭いにはかなり差があることがわかります。自分の大便も、肉料理をたくさん食べた翌日などはかなり臭いはず。あの強烈な臭いは、悪玉菌が作り出す有害物質によるものです。p35

臭いを臭いで済ませてはいけないのは、大便だけでなくオナラも同じである。オナラは口から吸いこんだ空気が1日に1リットルは発生すると言われる腸内のガスとまじったものであるが、大便が「論文」に相当するなら、オナラはその「まえがき」に相当し、その臭いにも同様に重要な情報が含まれる。臭い大便もオナラも、腸内の環境悪化を知らせるシグナルであるのだ。だからと言って、オナラを我慢してはいけない。腸内のガスは消えてなくなるわけではないのだ。大便と同時に排泄されれば幸いだが、便秘気味だとそうならない場合もある。

その場合、排泄されなかった腸内ガスは大腸の毛細血管から吸収されて、血液の中に混入します。そのまま体内をかけめぐり、最終的には肺から呼気といっしょに出てくるのです。
 つまり、口からオナラが出る。

p37

オナラと同じく大便も我慢してはいけない。便秘の最大の原因は、定期的にトイレに行かないこと、我慢する習慣にある。一日に便意が生じるのは直腸の蠕動運動が生じる1〜2回にすぎない。そのシグナルを無視し、体内にため続けると、排便しにくい体質になってしまうのである。

  また、会社や学校などで過ごしている時間帯も、羞恥心が邪魔をして、長くトイレに入るのをためらう女性は少なくないでしょう。そうやって排便のタイミングを逃しているうちに、身体が「ノー排便モード」に固定されるのです。
  さらに女性の場合、ダイエットを気にするあまり、そもそも大便の材料になる食べ物をあまり口にしていない人が多いのが実情です。(…)取り入れる材料が少なければ大便も少なくなり、出にくくなるのも当然です。
pp67-68

便秘の原因は一に我慢すること、二にダイエット、三に運動不足がもたらす筋力不足である。こうした原因が重なって女性の腸年齢の「高齢化」が進んでいることを著者は警告するのである。

便秘により有害物質が再吸収されると、肌の老化が進む。さらには大腸ガンの原因の一つにもなっているのである。

同様に、子どもの便秘も注意が必要である。運動不足、野菜不足、肉のとりすぎなどの理由で、腸環境の高齢化が進む上、さらにストレスにより、便秘になりやすい環境になっている。

 子供は、自分の身を守るために、何か怖い体験をしたとき、大人よりも強い不安感を抱きます。そのため、たとえば排便のときに痛い思いをしたり、トイレに入っただけで友達にからかわれたりすると、「排便恐怖」にとりつかれてしまい、大便を我慢するようになるのです。p73

便秘になったからといって下剤を多用すると今度は下痢体質になって、日常生活に支障をきたすようになる。最良の策は、ヨーグルトの摂取による腸内環境の改善である。

このように、『大便通』では、さまざまな角度から食生活と大便と健康との関係について論じてゆく。そのおおざっぱな結論をまとめると次のようになる。

理想の大便とは一日300g程度、バナナのように続き、水に入れると広がるような黄土色の大便であり、臭いも弱い。これに対して、黒くて、固く、水の底に沈むのはよくない大便で、臭いも強い。白っぽいものも、水っぽいものも、同様によくない。

そうした理想的な大便の状態を保つには、もちろんバランスの取れた食生活がなによりであるが、ヨーグルトのような善玉菌を含むものによって腸内環境を整えるだけでなく、食物繊維を含んだ食べ物を多く摂取することが重要になる。一日25gの食物繊維を取ることが理想とされるが、日本人はその半分しか摂取していないのが現状である。
 
 ここで、「いくら食べても大便になって出ていくだけでは、意味がないのでは?」と疑問に感じる人もいるでしょう。
 しかし、大便がたくさん出れば、有害物質もそれだけたくさん体外に排泄されます。とくに食物繊維は、ほかの食べカスよりも有害物質を効率よく吸着してくれるので、腸内環境への貢献度は大。おなかの中を「掃除」してくれる、頼もしい存在です。便秘を防ぎ、腸を若々しく保とうとするなら、これまでの食生活を見直し、食物繊維をたくさん摂ることを心がけるべきでしょう。
p85

さらに腹筋運動のような激しい運動が無理であるとしても、毎日の散歩などのかたちで、運動不足を解消することが理想の腸環境には望ましい。

その他、花粉症や、子供のアトピーを予防するための食事のあり方なども詳しく、食生活と病気とのつながりのメカニズムがクリアに見えてくる本書は、健康問題に悩むすべての人、特に女性や小さい子供を持った親にとって必読書と言えるだろう。ここにあるのは、トンデモによくあるような一人の人間の成功例ではなく、著者が子細に分析した何千という大便のデータと最新の科学的知見に基づいた健康法である。『大便通』は、その内容を日々の生活習慣に反映するだけで、ほとんど間違いなく、読者が健康状態も、その寿命も、見た目の若々しさも改善されることを期待できる類まれな一冊である。

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