つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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ニック・ビルトン『ツイッター創業物語』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本   文中敬称略 Ver.2.0

 振動する携帯電話を見て、筋肉を"twitch"(痙攣)させる脳のインパルスのことが、頭に浮かんだ。「トゥイッチ!」だめだ、それじゃうまくいかない、と思った。そこで、辞書の”tw"のところを見ていった。"twister"(撚り手)、"twist-tie"(結束用針金)、"twit(あざけり)"、"twitch"、"twitcher"(バードウォッチャー)、"twite"(キバシヒワ)。そしてそれがそこにあった。
「特定の種類の鳥の小さなさえずり」読み続けるうちに、ノアの動悸が速くなった。「ふるえるような小さな声やくすくすと笑う声などの、似たような音も指す」これだ、と思った。「動揺や興奮によるおののき」
 動詞もおなじ、"twitter"(ツイッター)。
 ツイッター。ツイッタード。ツイッティング。ツイッターズ。

(『ツイッター創業物語』p86)



ツイッターがこの世に生まれて、まだ十年と経たないのだが、いつの間にか多くの人にとっては不可欠な生活の一部になっている。ニック・ビルトン『ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り(日本経済新聞出版社)は、そんなツイッターが生まれるまで、そして生まれてから今日に至るまでの経緯を、社内の権力抗争を中心に描いたノンフィクションである。

「事実は小説より奇なり」と言うが、これは本当に凄い物語である。諸行無常、まるで平家物語のような、21世紀の歴史の一端がここにある。本書には、エブ・ウィリアムズノア・グラスジャック・ドーシービズ・ストーンという四人の創業者が出てくるが、彼らの誰一人として、安定して、ツイッターの中枢に続けたものはいないのだ。まず、ツイッターの名付け親のノアがエブとジャックによって、ツイッター社から追われる。そしてCEOになったジャックもエブに追われる。そして、エブも返り咲きをはかったジャックにより、CEOの地位を追われる。その余波で、ビズもツイッター社を去ることになる。

その間も、ツイッターは、芸能人や大統領の参加、「アラブの春」などの洗礼をかい潜り、アル・ゴアやマーク・ザッカ―バーグらによる買収話を拒絶しながら、世界的な影響力を強め、長い間収益ゼロのまま評価額を1000億ドルにまで高めてゆく。企業のCEOが取締役会の意向で、創業者と言えどもその地位に長くいられないことはアメリカではありふれた光景である。しかし、この移り変わりの速さは常軌を逸している。長く続いたツイッターの動作の不安定性、政治的中立性に関する意見の相違など、理由はいろいろ挙げられるが、あたかも、ツイッターという新しい神が自らの意志を持って、その時その時にふさわしい王を選んでは王位を剥奪し、次々に王をすげかえてゆくように、壮絶なパワーゲームが展開され、栄枯盛衰が繰り返されるのである。

「でも、ぼくがツイッターを発明した」と、ジャックがいった。
「ちがう、発明していない」エブが応じた。「ぼくもツイッターを発明していない。ビズもおなじだ。インターネット上のものは、だれかが発明したということにはならない。すでに存在していたアイデアを拡大しただけだ」ビズがエブの意見に賛成してうなづき、おなじようなことをいった。
p268

気の合う若者同士が意気投合して始めた、新時代のベンチャービジネス。なのに、なぜ?

読者は思わずその移ろいの速さに、胸をかきたてられるような時代の熱気を感じ、読み進めずにはいられない。そして、それこそがこの本の中のどこかの時点で私たちが加わったであろう、あのツイッターの向こう側で起こっていたことなのである。おそらく創業者たちや社員の誰一人として、これまで完全には知りえなかったであろう複眼的な視点による、臨場感あふれる歴史のまとめがここにある。

本書は甘いアメリカンドリームのサクセスストーリーでは決してない。ツイッターに情熱を注ぎ、つくり上げた人たちが、その異常なまでの速度と影響力の拡大に翻弄されながら、栄光と失意、友情と孤独の中で、自らの人生との折り合いをいかにつけるにいたったかを生々しく描き出した、人間ドラマ、群像劇の傑作である。
 
PS 本書の中でも登場する創業者の一人、ビズ・ストーンは、権力抗争には距離を置こうとした、友情に篤い穏健派の人物として描かれている。そのビズが出した新刊がこれだ。一番の癖のない当事者の証言と言えるだろう。


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