つぶやきコミューン

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板垣恵介『刃牙道 2』
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板垣恵介『刃牙道』第2巻発売!いよいよあの宮本武蔵が現代に蘇る!

板垣恵介のバキシリーズが、他の格闘技漫画と異なるところは、固定された強さという枠組みの中で、登場人物を競わせようとするのではなく、新たな強さを想像し、創造しようとすることである。世界中のあらゆる格闘技の頂点や、最凶悪な犯罪者までも引っ張り出しても、巨象やホッキョクグマまで素手で倒す「地上最強の生物」範馬勇次郎の域に達する者はなく、そこで主人公範馬刃牙の最後のスパーリングパートナーに抜擢されたのが、氷の下に閉じ込められた古代人ピクルであった。あくまでリアルな現在が舞台となる刃牙シリーズでは、宇宙人のようなまったく新しい強さなど、想像しても楽しくないのだ。バキシリーズは、ファンタジーかもしれないが、あくまで現実の枠組みの中で現実を超えた強さを想像し、創造するファンタジーである。リアルな強さの説得力を与えるには、かつて地上にあった強さを持ち込むのが一番である。百巻を超えるバキシリーズの中で、板垣恵介がたどりついたのは、温故知新(ふるきをたずね、新しきを知る)という教訓であったようだ。

「温故(ふるきをたずね)」という行為の中で、ティラノサウルスと覇を争ったピクルの次に、板垣恵介が見出したキャラクターは、なんと宮本武蔵であった。どのような手段を用いても、武蔵を現代によみがえらせ、範馬親子を初めとして現代の猛者たちと競わせてみること。その中で、神格化された武蔵の強さはなんぼのものなのかという問い、果たして刃牙たちの強さは時代を超えたものなのか、井の中の蛙ではないのかという問いも検証される。まさに「知新(あたらしきをしる)」である。

現代という時代を舞台に、過去の人物を蘇えらせ、二つの世界の長短を比較してみるという意味では、『刃牙道』ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』にも似た試みである。だが、板垣恵介のもう一つの挑戦とは、現在も連載中の井上雄彦『バガボンド』が与える武蔵像への挑戦にある。井上雄彦もバキシリーズの完結の際に、自ら描いた刃牙像を添えて、メッセージを寄せた一人である。それぞれの仕事に対しリスペクトを持った作家同士の世界観の衝突を、あえて自ら試みる。井上が創造した武蔵のイメージを意識しつつ、新たな強さを、武蔵を題材に、創造することこそ、板垣恵介の新たな挑戦なのである。

【『刃牙道 2』に至るあらすじ】
史上最強の親子喧嘩から約一年。現代の猛者たちは退屈していた。彼らに共通した症状は欠伸。範馬刃牙は、地下闘技場での試合の中でも、欠伸をかみ殺すのに苦労し、愚地独歩は身も凍るような滝業の中で、欠伸してしまう。そして鎬紅葉、花山薫もまた…その退屈に耐えかねた花山は、範馬勇次郎との対決を徳川光成に直訴するのであった。

ちょうどそのころ、東京スカイツリーの地下366mのひそかに作られた研究所では、光成のもとで、とんでもないプロジェクトが進められていた。高名な古代生物学者ホーナー博士を中心に、墓から盗み出した宮本武蔵の脊髄細胞より、彼のクローンを作り出すことであった。何とか32歳6ヶ月相当の武蔵の身体を再生することに成功したものの、その身体はピクリともしない。「仏作って魂入れず」の状態を克服するために、光成が提案した驚愕の方法とは?


この設定には、二つの問題点がある。第一の問題は『ジュラシック・パーク』同様の、遺伝子工学により、武蔵の身体を作り出したところで、彼の強さは、単なる肉体的な強さではなく、その六十戦無敗という戦績の中で、練り上げられた強さである。戦いの記憶、戦術・戦法の記憶を引き継がないなら、身体だけ再生したところで何の意味もないのだ。そして、もう一つの問題は、武蔵の強さは、剣豪としての強さであり、丸腰で戦う刃牙たちと、果たして手が合うのかという問題である。もちろん、この二つの問題が出てくるのを板垣恵介は熟知している。最初の問いに対してはこの第2巻の中で、そして二番目の問いに対しては、第3巻の中で、その解答が与えられることになるだろう。

果たして武蔵の身体は動き出し、天下無双の宮本武蔵が復活するのか?同時に、範馬雄二郎と花山薫のストリートファイトの行方は?格闘技漫画史上に、新たな歴史を刻む、板垣恵介の決定的な一歩が今まさに踏み出させる。必見!
 
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