つぶやきコミューン

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一色まこと『ピアノの森 24』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略



1998年より掲載誌を代えながら、途中何度かの中断を挟み、連載されてきた一色まこと『ピアノの森』もいよいよこの24巻でクライマックス。ショパンコンクールの本選で、一ノ瀬海(いちのせかい、以下作中の表現に従いカイと略す)のピアノ協奏曲第一番を演奏が続きます。残る奏者レフ・シマノフスキの演奏後に、コンクールの結果が発表され、その結果にかかわらず、カイの希望に輝く未来を垣間見せることで、フィナーレとなるというのが大方の予想だと思うのですが、その後にさらに続くことはちょっと想像することができません。「森の端」という悪場所で、生まれ育ち、森に放置されたピアノと出会うことで、類稀なピアニストとしての資質を幼いうちに獲得したカイが、ピアノのかつての持ち主であった阿字野壮介(あじのそうすけ)と出会うことで、その才能を大きく開花させ、ピアニストとしての道を歩みだす。その約束されたゴールがまさにショパンコンクールだったのですから。

本選の協奏曲のカイの演奏のさなか、突然会場が真っ暗になります。このアクシデントでも、カイの演奏はいささかも崩れるどころか、一層の冴えを見せ、オーケストラを、そして会場全体をその音色で魅了し、人々をファンタジーの中へと引き込むのでした。彼らがそこで目にしたものは、まさにピアノの森の風景。そして、満天の夜空・・・

演奏のさなかにカイの心に、そして阿字野の胸に去来したものは、この日に至るまでの長く険しい道のりでした。そして、会場の外でこの演奏を耳にした人々にも、その音楽は深い感動を与えるのでした。

たった一曲、三つの楽章の中に、『ピアノの森』のエッセンスが凝縮され、洗練された作画表現の極致を尽くした24巻は、まさに神巻。このシーンを描くために、作者はこの漫画を描き続けてきたと言っても過言ではないのですから。クラシック音楽に通じ、ショパンのこの協奏曲の細部まで知り尽くした人なら、様々な名演のはざまに、永遠に耳にすることのないカイの演奏を想像し、涙を流さずにはいられないでしょう。そして、そうでない『ピアノの森』の愛読者もまた、作者の画力の進化がなせる表現力に、痺れずにはいられないでしょう。思えば遠くへ来たものだ。そんな感慨を覚えずにはいられないのが、この『ピアノの森 24』なのです。

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