つぶやきコミューン

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荒川弘・田中芳樹『アルスラーン戦記 2』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略


           Kindle版

田中芳樹原作、荒川弘漫画の『アルスラーン戦記』もあっという間に第2巻。第1巻からわずか1ヶ月後の発売ですが、このハイペースがずっと続くわけではありません。第3巻は半年後の11月まで待たなければならないのです。

『アルスラーン戦記』は、一言で言えば、「王子らしくない王子」の王となる話です。物語の冒頭のアルスラーンは、気弱で頼りない、ほとんどの女の子のようなビジュアルの若者として描かれています。これに対して、父親であるアンドラゴラス三世は、堂々たる威圧感を持った、勇猛果敢な王様として描かれています。心優しいアルスラーンが、アンドラゴラスのような風格を持った王になれるようには思えません。しかし、敵の計略にまんまとひっかかり、アンドラゴラスはアトロパテネの戦いで、ルシタニアに敗れてしまいます。アルスラーンに対し、アンドラゴラスの治世の弱点を、ナルサスはこのように指摘します。

アンドラゴラス王は戦には強いが政治を軽んじすぎる

アトロパテネもそうだ

己の強さを過信し戦法を軽んじた結果がこれだ

アルスラーンが、アンドラゴラスの跡を継ぎ、覇者たるためには、アンドラゴラスのような武勇に秀でた王であるだけでは十分ではないのです。武ではなく、知略に長けた王でなければルシタニアに雪辱を果たし、再びパルスの王となることはできないでしょう。

もう一度まとめると、『アルスラーン戦記』は「王子らしくない王子」が「王らしくない王」になる物語ということになるでしょう。王らしい王が、父のアンドラゴラスであるとするならば、アルスラーンは同じ失敗を繰り返さないために、父親とは違ったタイプの王となる必要があるのです。

かつて大きな武勲を立てたものの、アンドラゴラスの不興を買い、隠者となり、絵を描いて余生を過ごそうというナルサス。アルスラーンに仕えよというダリューンの説得にも応じなかったのに、やがてアルスラーンの言葉で前言を覆すことになります。そして、ナルサスの従者である若者エラムも同様に。武芸こそまだ見習い中ですが、アルスラーンの長所の一つ、人情の機微を解することがはじめて発揮された瞬間でありました。桃太郎が猿や犬や雉を味方につけて軍団を編成しながら鬼退治に出かけるように、アルスラーンの仲間はこれから一人また一人と増えてゆくことでしょう。王道のバトルものの第一の鉄則は、お金でも地位でもなく、心で結びついた仲間を集めることなのですから。

ナルサスが指摘する、パルスのもう一つの弱点は奴隷制をしいていることです。これに対し、ルシタニアには奴隷はいません。なぜ奴隷制が弱点となりうるかと言えば、まず自由民でなく虐げられた立場であるがゆえに、本気で国のために戦うとは思えないこと。そして、周囲を取り囲まれた場合には、反乱を起こしアキレス腱となる可能性があるからです。

まさに、戦局はルシタニアによる首都エクバターナの攻囲戦へと変ります。難攻不落の城壁都市エクバターナを落とすために、ルシタニア軍はとらえたパルスの勇者に拷問を加えたり、討ち取った大将軍たちの首をさらしたりして、心理的な動揺を与えようとするのでした。

そこで現れた新たな登場人物が、流浪の楽士ギーブ。アンドラゴラスの治世には厭き厭きした彼は、理想の君主を求める一人でもありました。彼とアルスラーンの邂逅は果たしてあるのでしょうか。

アトロパテネでパルスが敗れた最大の理由は、カーラーンが敵のルシタニアへと寝返ったことでしたが、その理由とは一体?そして、彼を影で操る銀仮面の男の正体とは?

まさにエクバターナが敵の手中に陥落しようとするその時に、小さな軍団を形成し始めるアルスラーンですが、たちまちのうちに追っ手が迫ります。アルスラーンとパルスの運命やいかに?波乱万丈の歴史絵巻は、いよいよ佳境へと突入します。

関連ページ:
荒川弘・田中芳樹『アルスラーン戦記 1』


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