松井優征『暗殺教室 9』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略
■究極の「謎の先生」
紹介したばかりの内田樹『先生はえらい』の中に、「謎の先生」という項目があります。私たちが敬意を抱くのは、有益な情報を与えてくれる先生でも、生徒の人権を尊重してくれる先生でもなく、「謎の先生」です。「謎の先生」は、自分が到底到達できないような世界を持っている先生、何を知っているか想像もつかないような先生のことです。
そのような「謎の先生」を作品の中で登場させた先駆は、『三四郎』や『こころ』を書いた夏目漱石であると内田樹は言います。その「先生」の条件として、漱石は次の二つを挙げています。
内田は、この二つは後者が原因で、前者が結果であるので、同じ経験の前後二つの相であると考えています。
『暗殺教室』のころせんせー以上に謎の先生は、地球上探してもいないことでしょう。不思議な触手を持ち、マッハ20の速度で空を飛び、月を真っ二つにし、地球を滅ぼしかねない超生物です。そのような人間離れした姿と能力を得てしまったことが、「ある種の満たされなさ」の根源にあるのでしょう。なぜ、3年E組で教えているかも謎です。ころせんせーは、自らの身体を生徒に暗殺のターゲットとして差し出す代わりに、E組の生徒たちに、A組を脅かすような学力、プロの殺し屋と対等に渡り合うような身体能力、自立した人格や友人とのコミュニケーション能力を身につけさせます。一律均等に与えるのではなく、その時にその生徒が一番必要とされている能力を結果として身につけさせてしまうのです。これは、学力の向上を求める者に学力を与えるという等価交換の世界ではありません。
このような意味で、ころせんせーは教育の奥深さそのものを体現した究極の「謎の先生」と言うことができるのです。
■『暗殺教室 9』
『暗殺教室 9』は夏休み編の続きです。
●孤島でのサバイバルゲーム、そこで代表となった潮田渚が対決することになったラスボスは、学校を去ることになった体育教師の鷹岡先生であった。果たして、渚は鷹岡先生を倒し、解毒剤を手に入れ、クラスメートを救うことができるのか?
●島を去る前に、生徒に肝だめしをやろうと提案するころせんせー。その裏には、下衆なたくらみがあった。果たして、それは成功するのか?
●さらに生徒全員を巻き込んで、その下衆なプランは、烏間先生とビッチ先生をターゲットとするのだったが…。
●夏祭り最後の日、ころせんせーは生徒たちを夏祭りに誘う。そこで、生徒たちは思わぬ能力を発揮する。それを見越したころせんせーの行動は?
●夏休みが明けて、新学期、E組からA組へと移る生徒が現れた。その背後には、学内のヒエラルキーを脅かすものを叩き潰そうとする浅野理事長の影があった。その企みに対し、ころせんせーは?そして、E組の仲間たちは?
非日常的な夏休みから日常的な新学期へ。その裏で、次なる刺客の影がうごめきます。渚に「必殺技」を授けたあの殺し屋がいともあっさりやられてしまう最強の刺客が、ころせんせーの前に登場するのはいつのことでしょうか?
『暗殺教室』は、『名探偵コナン』のようには、エンドレスに小学生生活を繰り返すことのできない漫画です。生徒が中学を卒業する来年3月にはころせんせーによって地球が爆破されることになっているのですから。地球爆破の日まであと六ヶ月・・・でも、ころせんせーの賞金が上がった以外、エンディングに向けた展開は、まだ見えてきませんね。
関連ページ:
松井優征『暗殺教室 8』
松井優征『暗殺教室 6』
松井優征『暗殺教室 5』
■究極の「謎の先生」
紹介したばかりの内田樹『先生はえらい』の中に、「謎の先生」という項目があります。私たちが敬意を抱くのは、有益な情報を与えてくれる先生でも、生徒の人権を尊重してくれる先生でもなく、「謎の先生」です。「謎の先生」は、自分が到底到達できないような世界を持っている先生、何を知っているか想像もつかないような先生のことです。
そのような「謎の先生」を作品の中で登場させた先駆は、『三四郎』や『こころ』を書いた夏目漱石であると内田樹は言います。その「先生」の条件として、漱石は次の二つを挙げています。
一つは「なんだかよくわからない人」であること。一つは「ある種の満たされなさに取り憑かれた人」であること。この二つです。(『先生はえらい』p146)
内田は、この二つは後者が原因で、前者が結果であるので、同じ経験の前後二つの相であると考えています。
『暗殺教室』のころせんせー以上に謎の先生は、地球上探してもいないことでしょう。不思議な触手を持ち、マッハ20の速度で空を飛び、月を真っ二つにし、地球を滅ぼしかねない超生物です。そのような人間離れした姿と能力を得てしまったことが、「ある種の満たされなさ」の根源にあるのでしょう。なぜ、3年E組で教えているかも謎です。ころせんせーは、自らの身体を生徒に暗殺のターゲットとして差し出す代わりに、E組の生徒たちに、A組を脅かすような学力、プロの殺し屋と対等に渡り合うような身体能力、自立した人格や友人とのコミュニケーション能力を身につけさせます。一律均等に与えるのではなく、その時にその生徒が一番必要とされている能力を結果として身につけさせてしまうのです。これは、学力の向上を求める者に学力を与えるという等価交換の世界ではありません。
ものを学ぶというのは定額の対価を投じれば相当額の商品が出てくる自動販売機を利用することとは違います。
なぜなら、真の師弟関係において、学ぶものは自分がその師から何を学ぶかを、師事する以前には言うことができないからです。
(同上、p168)
このような意味で、ころせんせーは教育の奥深さそのものを体現した究極の「謎の先生」と言うことができるのです。
■『暗殺教室 9』
『暗殺教室 9』は夏休み編の続きです。
●孤島でのサバイバルゲーム、そこで代表となった潮田渚が対決することになったラスボスは、学校を去ることになった体育教師の鷹岡先生であった。果たして、渚は鷹岡先生を倒し、解毒剤を手に入れ、クラスメートを救うことができるのか?
●島を去る前に、生徒に肝だめしをやろうと提案するころせんせー。その裏には、下衆なたくらみがあった。果たして、それは成功するのか?
●さらに生徒全員を巻き込んで、その下衆なプランは、烏間先生とビッチ先生をターゲットとするのだったが…。
●夏祭り最後の日、ころせんせーは生徒たちを夏祭りに誘う。そこで、生徒たちは思わぬ能力を発揮する。それを見越したころせんせーの行動は?
●夏休みが明けて、新学期、E組からA組へと移る生徒が現れた。その背後には、学内のヒエラルキーを脅かすものを叩き潰そうとする浅野理事長の影があった。その企みに対し、ころせんせーは?そして、E組の仲間たちは?
非日常的な夏休みから日常的な新学期へ。その裏で、次なる刺客の影がうごめきます。渚に「必殺技」を授けたあの殺し屋がいともあっさりやられてしまう最強の刺客が、ころせんせーの前に登場するのはいつのことでしょうか?
『暗殺教室』は、『名探偵コナン』のようには、エンドレスに小学生生活を繰り返すことのできない漫画です。生徒が中学を卒業する来年3月にはころせんせーによって地球が爆破されることになっているのですから。地球爆破の日まであと六ヶ月・・・でも、ころせんせーの賞金が上がった以外、エンディングに向けた展開は、まだ見えてきませんね。
関連ページ:
松井優征『暗殺教室 8』
松井優征『暗殺教室 6』
松井優征『暗殺教室 5』