つぶやきコミューン

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海堂尊『カレイドスコープの箱庭』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略
 


海堂尊『カレイドスコープの箱庭』(宝島社)は、バチスタシリーズの最終章という触れ込みになっている。バチスタシリーズ=桜宮サーガ(海堂尊の医療小説)ではないところがミソである。というのも、桜宮サーガは、バチスタシリーズの宝島社を筆頭に、新潮社、講談社、角川書店、朝日新聞出版社、文藝春秋、東京創元社、理論社と実に多くの出版社から出ているからである。

だから、「最後の」とキャッチコピーのついた本を買った直後に、また別の出版社から「最後の」との触れ込みの海堂作品を書店で目にすることになる。

おそらく各出版社の編集者によるものであろうが、海堂尊の「最後の」商法にご用心である。

『カレイドスコープの箱庭』の冒頭で、田口公平は人生の頂点にいる。アメリカ屈指の大学、マサチューセッツ大学での講演を終え、満場の喝采を浴びたばかりであった。背後には、巨大な彼自身のポスターが貼られ、世界的知性との対決をも何とか乗り切ったばかりである。そして、こう漏らすのだ。「思えば遠くへ来たもんだ。」

不定愁訴外来という日陰部署の責任者で昼行灯に甘んじていた田口公平は、バチスタ・スキャンダルでリスクマネジメント委員会委員長の重責を果たして以来、病院長の高階より、次々に大役を押し付けられる。Aiセンターセンター長に、電子カルテ導入検討委員会委員長。ついには院長代行まで任されそうになる。そして、講師のままではまずかろうと慮った周囲によって、准教授に昇進したばかりである。アメリカでの講演もAiセンターのセンター長としての仕事であった。さらに、次にはAi標準化国際会議の責任者まで果たすことになっていた。そんなころ、降ってわいたようなトラブルが、東城大学付属病院に発生する。肺癌手術で死亡した患者に対し、病理の誤診ではないかとの内部告発があったのである。事務長の三船によれば、検体取り違えの可能性もあると言う。高階は、田口に電子カルテ導入検討委員会委員長として、内部調査の実施を依頼する。調査の結果、病理医の牛崎の誤診の可能性が高まった。それは東城大の瓦解させかねないものであった。というのも、速くて正確な診断で定評のあった牛崎は、東城大学の病理を一身で支えていた存在であったからだ。そんなころ、厚生労働省の火喰い鳥の異名をとるあの男、白鳥圭輔が現れた。彼は、どうやらこの事件の背後に不審な影をかぎつけたらしい。

かくして、田口&白鳥の名コンビの復活によって、東城大の危機は救えるかというのが、『カレイドスコープの箱庭』のテーマである。最終章らしく、オールスターの顔見世興行的なシーンも用意されている。カレイドスコープ(万華鏡)は白鳥の小道具として登場するが、同時に病理検査室の精緻だがシンプルな検査の仕組みを、カレイドスコープに見立てたのが、このタイトルの由縁である。

関連ページ:
海堂尊『ガンコロリン』
 


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