つぶやきコミューン

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三部けい『僕だけがいない街 2』
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           Kindle版

三部けい『僕だけがいない街』は、第2巻に入るとがらりと風景が変わります。2006年の東京から1988年2月の北海道へと、藤沼悟はタイムスリップするのです。それは、あの連続誘拐殺人事件が起こった直前の時期でした。そして28歳の悟は、小学校五年生としてその時期を生き直すことになります。
 
【第一巻のあらすじ】
漫画家志望の青年藤沼悟は、【再上映】(リバイバル)という特殊な能力を持っていました。日常生活の中で、ある「違和感」を覚えると、そこで時間の巻き戻しが生じます。そして、誰かの身に降りかかりそうな災難を回避することができるのです。その度に、割の合わない目に彼自身は遭うのですが、それでも関わらないではいられません。そのようにして、彼は子供のたちの危機を二度、三度と救ってきたのでした。しかし、三度目のリバイバルの時に、誘拐事件を阻止したがために、悟が小学校五年生のころ北海道で起こった誘拐事件と同一犯ではないかと思った彼の母藤沼佐知子は容疑者の一人であった男に接触をはかり、その結果殺されてしまうのです。その第一発見者となった悟は、まんまと犯人の罠にはまり、追いかけるところを警官に目撃され、自らが犯人にされそうになります。1988年へのタイムスリップが起きたのは、そのような状況でした。

悟の友人を含め何人もの子供が犠牲になったその誘拐事件の真相を暴き、事件を未然に阻止するために、そしてはるか未来での母親が殺されないようにするために、小学校五年生となった悟は、奔走するのです。

僕だけがいない街』の第2巻は、一種『名探偵コナン』的な世界です。主人公は、大人の意識とこれから起こることに関する記憶を持っています。コナンの正体である工藤新一の推理力はないとしても、それ以上のアドバンテージが彼には与えられているのです。そして誘拐事件の最初の犠牲者である雛月加代は、ショートカットで三白眼の美少女というビジュアル面でも、常にクールで、周囲に対して距離を持ち、冷めた言葉を口にするという性格面でも、灰原哀に似ています。彼女のこの歪んだ性格には深い事情があるのですが、それをしだいに知る中、似たもの同士として次第に距離を詰めながら事件を阻止しようとする悟の言動は、クラスメートの男子たちには彼女に気があるとみなされ、それが本人に伝わることで、彼女の顔を真赤にさせたりします。要するに、雛月も灰原同様、ツンデレなのです。

最初は二人を冷やかしていても、次に応援して、何かと気をつかう小学生の友人たちも、力強い味方、いわば少年探偵団のような存在です。

かつてと同じことを繰り返しては、事件は阻止できない。違った行動をとり続け、雛月を犯人から守り、事件を未然に阻止しなくてはいけない。この気持が悟を駆り立て、その中で二人の美しい思い出がいくつもできるのですが、その度にかつても同じ台詞を口にしたと歴史を繰り返していることに気づき、悟は愕然とするのでした。
 
変えてやる…!

それこそが未来を変えることになる!

事件そのものを無くしてやる!

はたして、彼は雛月を救うことができるのでしょうか。一連の誘拐事件を阻止し、未来の世界での母の死を回避できるのでしょうか。

死の危険と隣合わせになっているがゆえに、雪景色に包まれた少年時代の出来事は、一層美しく、幸せに見えてきます。物語は、殺人事件の真相を暴くというサスペンス・ミステリーでありながら、『僕だけがいない街 2』は、少年時代の懐かしく、幸福感に満ちた思いを描き出すことに成功した傑作でもあるのです。

関連ページ:
三部けい『僕だけがいない街 1』


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