つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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佐野菜見『坂本ですが? 』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略



とにかく面白いと人気のギャグコミック、佐野菜見『坂本ですが?』第二巻。第一巻を読んだ限りでは、作者の独自の個性に光る部分はあるものの、万人向けの笑いのツボにハマかどうかは微妙な部分がありました。はたしてこんな一発芸的なネタがどこまで続くのか、ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』を読んだ時感じた同じような心配を思わず覚えずにはいられませんでした。しかし、その後『テルマエ・ロマエ』は映画化され、大ヒット。世界的にも話題を集めるなど大化けしました。だから、得体の知れない作品には注目しているのです。

坂本くんは、メガネと学ランの似合うイケメン、長身の高校生です。学校生活や登下校中でふりかかる様々な大小の災難や他愛のないシチュエーションを、持ち前の忍者のような身体能力や先々まで見通した機知、洗練されたマナーとセンスでクールでスタイリッシュに乗り切るというのが、この作品の基本路線です。

第二巻で坂本くんの前に振りかかる災難とは、韓流スターのような坂本くんのビジュアルに萌え彼を追い回す家庭教師先の母親だったり、投稿時間のチャイムすれすれに滑りこむ彼に業を煮やし焼きを入れようとする保健体育の教師であったり、彼を落とし穴に落とそうとする不良グループだったり、彼のことを快く思わずしめてやろうと考えるカリスマヤンキーだったりします。

坂本くんの行動は、冷静に見ればエキセントリックそのものですが、その天然のボケにツッコミをいれようとする周囲の行動がことごとく跳ね返され、逆に自らがボケを演じるハメになるというツッコミ返しによって成り立っています。彼の数々の言動に宿る美意識は、それを追認してしまう周囲の共犯関係の上に成り立っているのです。

はたしてこの『坂本ですが?』が単なるネタ消費のギャグ漫画で終わるのか、それともエピソードの集積による作品世界の広がりとともに、『パーマン』『ラッキーマン』のようなローカルなヒーロー物となるのか。第二巻では、女子生徒の人気を集め、不良たちにも一目置かれるなど周囲の認知のプロセスが進む一方、さえないクラスメートの家庭教師をしたり、傷ついた小鳥をいたわったりと優しさを発揮したりします。まだまだ作者は、いろいろな授業での坂本くんの態度を描いたりしながらキャラクターの構築の最中ですが、坂本くんの家族は謎に包まれたままで、一切登場していません。今のところ、自己の美意識への陶酔と貫徹にベストを尽くしているように見える坂本くんですが、何か別のゴールが見えてくるかどうかで、作品の厚みも大きく変化してくるはずです。そういう意味で、今後の展開に注目したい漫画の一つです。

 

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